その12(№1778.)から続く


今年の正月から続けて参りました、伊豆急の半世紀を振り返る連載も、今回で最終回。
というわけで今回は、伊豆急の今後の展望を、思いつくままに述べていきたいと思いますので、よろしくお付き合いの程をm(__)m


1 乗客増のためには何が必要か?


伊豆急の乗客が平成3(1991)年をピークに減少し続けていることは、前回までに指摘したとおりです。

乗客の増加のためには、地元客と観光客(地元以外の客)がありますが、地元客の増加は、少子高齢化による通学客の減少や、人口の流出による沿線人口の漸減などにより、多くを望むのは困難な状況にあります。

そうなると期待できるのは観光客ですが、具体的にどうするかについては次項で述べます。


2 観光客(地元以外の客)の増加をいかに図るか


観光客が昔のように増えてくれれば、伊豆急の経営も安定するのですが、こちらもバブル崩壊などの要因で漸減傾向が続いています。


ただ、これは管理人の個人的な見立てですが、伊豆についてはかつて見てきた鬼怒川などとは異なり、東京圏からの距離の割には道路の整備が追い付いていないという、鉄道から見れば大きなアドバンテージがありますので、それを生かすことが必要ではないかと思います。具体的には、「スーパービュー踊り子」のコンセプトをもっと深度化して、「乗ることそのものを楽しむ」ような列車にすることも必要ではないかと思います。伊豆の温泉旅館には、首都圏から出かける富裕層が多く、それ故に特急のグリーン車の需要が高くなっているため、東北新幹線「はやぶさ」(現在は運休中ですが…)のような、グリーン車を上回るアッパークラスを作ることも、客単価を上げるためには有効ではないかと思われます。

それと同時に、251系使用列車と185系使用列車との間には明確な格差があり、しかもその格差は料金差(前者はいわゆるA特急料金、後者はB特急料金)で埋められるものではないと思われることから、両者の格差を埋めるためにも、185系の後継車の登場も望まれるところです。しかし、185系は国鉄時代に投入された車両ですが、現在はJR東日本となり、しかも修善寺乗り入れの場合JR東海の路線も一部走行することから同社の乗務員の習熟の問題もあり、なかなか置き換えが一筋縄ではいかないようですが、185系はリニューアルを経たとはいえ今年で登場して満30年になることから、新車投入が望まれるところです。

ただJR東日本は、地震と津波で甚大な被害を受けた東北地方の路線の復旧に全精力を傾けていますから、185系の置き換えなどは、しばらくは望めないでしょう。


観光客を増やすという点から見ると、伊豆急の現行の車両(8000系)にも難はあると思います。理由は、前回の記事で話題にしたとおり、東急8000系を見て落胆する観光客が多いことですが、ではなぜ落胆するのかといえば、東横線などで走っていた車両と同じであることの他に、ステンレスにブルー系のラッピングが似合わず、寒々しい印象を与えてしまっていることもあるのではないかと思われます。かつての100系であれば、鋼製車(塗装車)ですから、あのような配色でも「爽やかさ」として受け取られましたが、8000系はステンレスの地肌が剥き出しですから、どうしても冷たい印象を与えてしまいます。

そもそもの話ですが、ステンレスの車体に寒色系の帯などを合わせると、冷たい印象を与えてしまいがちなのです。東武10000系の落成直前、同社の8000系と同じ帯を貼付してみたところ、あまりにも寒々しい印象だったので止めたのは有名な話ですが、それと同じことが伊豆急の8000系にも言えるのではないでしょうか。
それを払拭するためには、内外装に徹底的に手を入れるしかないように思います。


他方、伊豆急が観光鉄道であることを考えたときに、「リゾート21」の存在はおろそかにしてはならないと思われます。同車は初期の100系の機器を流用した2編成が廃車されていますが、現在でも3編成が健在です。
しかし、伊豆急には「リゾート21」の存在が重荷になりつつあるといわれます。その理由は、7両という1編成の単位が現在では大き過ぎるということです。それ故に200系や8000系の導入がなされ、普通列車に関する適正な輸送量確保が図られたというのもありますが、「リゾート21」は登場後四半世紀を過ぎた現在もなお、伊豆急のフラッグシップトレインとして観光客に認識されているようなので、短編成化も視野に入れてもよいのではないでしょうか? 1編成7連を4連とでもして、多客時に2本つないで8連とするとか。もっとも、この車両ではワンマン化が難しく、それがネックになりそうですが。また、そもそも「リゾート21」使用列車の場合、地元客が乗車してもある種の「居心地の悪さ」を感じることがあるそうで、これは朝方のビジネスマンばかりの東海道新幹線に観光客が乗車した場合とちょうど逆の状況となっています。収益の柱に重点を置くのは企業活動の常識ともいえますが、東海道新幹線の場合それが行き過ぎているといわれますので、「リゾート21」の場合もそれがあるといえます。


3 同前・愛好家を呼び込むことは可能か?


さらに視点を変えて、伊豆急に観光客を呼ぶというなら、単に温泉やグルメ目当てのそれではなく、鉄道愛好家を呼び込むという戦略があってもいいのではないかと思います。

幸い、伊豆高原の車両基地には100系の両運転台車など貴重な車両が多くあるので、それら車両の展示会を行うとか、撮影ツアーを企画するなどですね。ただ、鉄道系のイベントは、成功すれば愛好家が熱心に足を運んでくれるようになる半面、一歩間違えると殺伐とした雰囲気になってしまうこともあるので、そのあたりの匙加減が非常に難しいところですが。


4 やはり観光地としての魅力をアップさせるしかない?


この問題は近鉄特急や東武特急、小田急ロマンスカーなどの話題を取り上げたときもそうなのですが、観光地への列車・路線というと、必ずといっていいほどこの結論に突き当たってしまいます。

つまり、どんなに列車や路線の魅力をアップさせたとしても、その列車・路線の目的地自体に、何度も足を運びたくなるような魅力がないと、一時的に乗客増となることはあってもその効果が永続しないということです。

伊豆の場合は箱根や熱海・鬼怒川などとは異なり、かつてのような大人数の社員旅行等の団体旅行の目的地とはなりにくい面があったため(せいぜいそのような需要は伊東まで)、バブル崩壊期前後にそのような需要が失われたときも、そのことによる影響は少ないと思われますが、やはり「また来たい」と思わせるだけの魅力がないと、永続的な発展は難しいと思います。では何をすればいいのか、というのはなかなか浮かびませんが、少なくとも「(温泉旅館について)宿泊料金に見合ったサービスが受けられていない」という状況は論外ですので、そのような施設が淘汰されるのはやむを得ないのでしょう。

ただ、先月の大震災以降、国内の観光旅行の需要そのものが大幅に落ち込んでいるとのことですので、しばらくは厳しい状況が続くと思われます。


5 最後に


最後は管理人の頭の限界により、何だか締まらない結論になってしまいました。

改めて、伊豆急の50周年を祝福したいと思います。


今回の連載はこれで終了です。次のテーマは、やはり50年前から現在まで続くネタとなります。

お付き合いありがとうございましたm(__)m


-完-