青森・函館ツアーの記事のアップが全て終了し、何となく一仕事終えたような感じに浸っている管理人です(笑)


ところで、今回のツアーは往復が航空機、鉄道利用には「青春18きっぷ」を使用しました。4日間いずれもそれなりに使用し、「元は取れた」ことは疑いないのですが、今回は今後の「青春18きっぷ」のあり方について、管理人自身の使用感を交えながら私見を述べたいと思います。


もともと、この切符が世に出たのは、今から28年前の昭和57(1982)年。当時は「青春18のびのびきっぷ」という名前で、2日券1枚と1日券4枚、計6日間利用可能という切符でした。国鉄(当時)全路線に乗車可能、ただし普通列車の普通車自由席のみで、普通列車でも指定席やグリーン車などに乗るときは乗車券としても無効で、それらの車両に乗る際には別途乗車券を買う必要があるとされました(その後、普通列車であれば指定席車や自由席グリーン車に乗れるように改められました)。新幹線や特急はもちろん乗車不可です。

というような切符が、夏休みや春休み、年末年始など特に学生さんの休みの期間に合わせるように発売され、その後1日券×5枚になり、さらに転売防止のため1枚に5日分のスタンプを押す現行の形態にするなどの改変はあり、また発売額も10000円から11500円へと推移してきています。もちろん、国鉄がJR6社に改組された後も、発売は続けられました。


管理人自身、この切符を使用するのは22年ぶりであり、どうなのかと思いましたが、やはり「全線乗り放題」のお手軽さや気楽さは大きな魅力ですね。普通列車に乗っている限り、切符の心配(買うことの心配と、値段の心配の両方)がまったくないんですから。このような切符で「乗り鉄」に開眼した愛好家の方も多数いらっしゃることだろうと思います。

ただ、やはり急ぎたいときなどは、ちょっともどかしく感じたのも事実でした。しかし、それは全体的には許容範囲内でしたので、「全線乗り放題」の魅力は伊達ではないな、と思ったことです。


しかし、現在「青春18きっぷ」が廃止されるのではないかという噂が、愛好家の間で、はたまたネット上などでも広まっています。

このような噂が広まるのは、以下の出来事があってのことではないかと思われます。


1 本年12月4日に、東北新幹線の八戸-新青森間が開業するが、並行在来線区間は第三セクター「青い森鉄道」に経営が移管されること。

2 JR各社から、次のシーズン(今年の年末)に向けての「青春18きっぷ」発売の概要その他に関する告知がないこと。本来なら発売期間や有効期間について、何らかの告知があってもおかしくないが、今回はそれがまったく表に出て来ない。

3 JR旅客会社の中に、この切符を廃止したがっている会社があること(これはネット上で言われている憶測です)。


平成9(1997)年の長野新幹線開業に伴い、並行在来線となる信越線の横川-軽井沢間廃止及び軽井沢-篠ノ井間の「しなの鉄道」移管があり、これが新幹線開業に伴う並行在来線切り離しの端緒となります。その後も、鹿児島本線の八代-川内間、東北線の盛岡-八戸間など、既にJRではなくなり、ネットワークを形成しなくなった路線も複数に及ぶことになりました。

「青春18きっぷ」では、たとえ特急券を買っても新幹線に乗車することは一切できませんから、事実上これらの区間は「青春18きっぷ」では乗車できないことになってしまいました。

かつての赤字ローカル線の転換事例なら傷も浅かったのですが、これらは全て主要幹線のネットワークですから、これら区間において「青春18きっぷ」利用者が事実上締め出されてしまったことは、利用にとって大きなマイナスとなっています。

もちろん、若干の値上げをしてこれら鉄道を利用できるようにすることもひとつの改善策でしょうが、仮にそれを実行すると、これらの会社との精算業務が面倒になり、コスト的に引き合わない事態が出来することが容易に予想されます。そのようなコストの上昇は、「青春18きっぷ」のもともとのコンセプトには合致しません。


そもそも、当時の国鉄が何でこのような切符を売り出したかといえば、学生が休みになるときに普通列車の乗車率が落ちるのでその対策のためでした。当時は現在のような短編成ではなく、長編成の客車列車もたくさん地方幹線で健在でした。客車であれば1両単位の増解結が容易であることから(これは気動車も同じ)、休みの期間中は編成両数を減らせばいいではないかと思いますが、それは現在のJR化後の発想です。当時は労使対立が先鋭を極めていたため、たとえ夏休み中における編成両数の増減といえども、労働組合の反対に遭い実現することが困難だったのです。そのため、多くの地方幹線では長編成の客車列車が空気を運んでいる状態が続いていました。そこで当局は増収と有効活用のため、このような格安な切符を作って、時間はあるが費用のないお客(≒学生)に旅をしてもらおうという趣旨で、このような切符をつくったのです。

現在は、普通列車といえども地方都市圏ではそれなりの頻度で運転されていますし、ローカル線であっても適正な輸送力確保の努力は行われていますから、かつてのように長編成でガラ空きの列車というものはそうあるものではなくなっています。むしろ逆に、学生の休みのシーズンになると、それまで短編成でも地元客や少数の旅行者しか乗らず、まったりしていた地方の普通列車が、この切符を持った旅行者に占拠され、かえって地元客に迷惑をかけている事例もあるという話です。


そうなると、この切符を売り出した当時と現在との間でまったく事情が変わっていることになり、「青春18きっぷ」が世に出た前提そのものが消失してしまっているといってよいと思われます。

ではなぜ、これまでに発売が続けられてきたのか。それは、


① 若年層に鉄道の旅に親しんでもらい、将来的な顧客になってほしいというJRの思惑があったであろうこと。

② 安定した需要があるため大規模な投資をせずともそれなりのまとまった収益が見込めること

③ ヘビーユーザーの「既得権益確保」の問題もあった?


という要因が挙げられます。

しかし、これだけ第三セクターが増えてしまうと、上記②の要因はその前提がなくなることになります。


そうであるならば、管理人は、もはや「青春18きっぷ」は歴史的使命・役割を終えた、あるいは終えつつあるのではないかという、愛好家としてはいささか寂しい結論を出さざるを得ないだろうと考えています。

もちろん、乗り放題切符により「乗り鉄」の楽しさに目覚めてもらい、将来的な顧客を育成する(上記①)は、大切な要因で、あたらおろそかにできるものではないと考えます。現在の「青春18きっぷ」の存在意義はその点にこそあると思えますが、それなら別の形態の乗り放題切符があってもよいのではないでしょうか。


「青春18きっぷ」の存在は、愛好家としては実にありがたく、かつ嬉しいものですが、時代に即した変化というものも必要ではないかと思います。