流れに乗り遅れた感、なきにしもあらずですが(^_^;)、先週末飛び込んで来たニュースは衝撃的でした。

「ムーミン」の愛称で愛好家や沿線住民に親しまれた、流線型の国鉄形電気機関車・EF55の退役が正式に発表されました。


さよなら「ムーミン」 最古の電気機関車EF55、来年引退

“ムーミン”の愛称で知られる戦前の電気機関車「EF55」が来年1月で完全に引退する。所有するJR東日本高崎支社が発表した。JRでは12月から、「さよなら列車」として、上越、信越両線で上下合わせ10本の臨時列車を運行。地方鉄道を除けば、現在稼働している国内最古の電気機関車の引退に花を添える。

「EF55」は、昭和11年に3両だけ製造された急行用電気機関車。同社によると、3両のうち現在まで保存されているのは1両だけで、JR各社の現役電気機関車の中で最古。全長約20メートル、幅2・8メートルで重量は約100トンあり、戦時中には機銃掃射で被弾し、運転席の天井には穴をふさいで塗装し直した跡もある。

戦後、高崎線などで活躍したが、片側だけが先頭車のため、転車台による方向転換が必要など難点が多く、39年12月で営業運転を終了、一度は廃車扱いとなった。

53年には準鉄道記念物に指定され、旧国鉄・中央鉄道学園(東京都国立市)や高崎第2機関区で保存されてきたが、リバイバルブームに乗って61年、動く状態に復元。イベント列車として高崎-水上間を走行、「奇跡の復活」と話題を呼ぶなど、鉄道愛好者らの間で、流線形の車体にちなんだ“ムーミン”の愛称で、人気を集めてきた。だが、新たな部品調達が難しいことなどから、引退が決まった。

「さよなら列車」は、12月6日に上越線上野-水上間を往復する「EL奥利根」(上りの高崎-上野間を除きEF64との重連)を皮切りに、同月12、13両日に高崎-水上間を往復する快速「さよならEF55みなかみ」▽1月10~12日、信越線高崎-横川間の「EF55碓氷」(下りのみ)と運転され、同月17日の上野-横川間の下り快速「さよならEF55碓氷」(同)で有終の美を飾る。

車両検修を担当してきた同社社員の長坂康弘さん(54)は「残念だが、今後は博物館に展示するなど、解体されないで残ってほしい」と話している。


MSN産経ニュース より)


少々長いですが、原文を丸ごと引用しました。

上記のニュースから明らかなとおり、退役の理由としては、予備部品の調達が困難になったことなどが挙げられています。しかし、一度動態保存が決まった車両がそのような理由で廃車になるのは、蒸気機関車(SL)では例がありません(少なくとも管理人自身は聞いたことがない)。


そういえば数年前、名鉄が産業遺産として動態保存を決め、冷房化改造までした「いもむし」こと3400形も、EF55と同じ理由で動態保存を止めています。

それほどまでに、電車や電気機関車の予備部品調達が困難になってしまうのでしょうか。今回の記事は、そのあたりのことを考えてみたいと思います。


SLの場合は、蒸気機関ですから電気的な部品はなく、仮に部品がなくなったとしても新たに作ることでカバーすることができます。九州で復元された8620形(58654号機)も、台枠を新製するなど徹底的に手を入れたことは有名な話です。その後このカマは「SLあそBOY」で活躍しますが、台枠に亀裂が見つかって運転を休止します。現在は台枠を再度新製するなどのレストアを施し、肥薩線の観光列車としてデビューさせるようです。

これに対して、電車や電気機関車は電気的な部品がたくさんあり、部品がなくなってしまえば修理が不可能になり、もはや動かし続けることはできなくなります。皆様のお宅や仕事場にある家電製品もそうですよね。修理したくとも、「部品がない!」と言われて、泣く泣くお払い箱にすることはよくある話ですので。

まして、電気的なメカニズムは日進月歩の勢いで進歩していますから、戦前製の電気品などは「骨董品」と称するのが生易しいレベルになってしまうのかもしれません。

それでも、産業遺産としての価値があるのであれば、動ける状態で保存しておきたいというのは当然です。しかし、それがコストを圧迫して企業の経営に悪影響を及ぼすようでは、保存を断念するのもやむを得ないのでしょう。名鉄の3400形も、結局のところ岐阜県内の600V区間の大赤字によるコストカットの必要性から、保存のようなものにお金をかけられなくなったからでしょうし。

ただ動態保存の場合、動かせばそれ目当ての愛好家が集まりますから、商売の観点でみれば「おいしい」アイテムではあるのです。それで収入が増え、ペイできるのであればいいのです(大井川鉄道の「トラストトレイン」もそのような発想に基づくものでしょう)。しかし、動かせばメンテナンスが必要で、いずれ部品調達ができなくなる時が来る…電車や電気機関車の動態保存は、集客とコストとのジレンマに陥ってしまうのではないか、といえます。


だからこそ、西武の保存電気機関車は静態保存(又はほとんど動かさない?)なのでしょう。動かす必要がなければ、部品の調達を気にする必要はなくなります。西武の場合、横瀬の車両基地に大切に保存されていて、毎年1回のイベントで展示されます(管理人は昨年行きました)。


結局、電車や電気機関車を動態保存しようとすれば、コストの問題もそうですが、遅かれ早かれ予備部品の調達の問題に直面することになります。だからといってメカをVVVFなどに取り換えるわけにもいきませんし…。これらの車両を動態保存するに当たっては、このようなジレンマが常に付きまとうことになるのでしょう。

私たち愛好家としては、車両の保存を求めるのはいいとしても、このような問題があることを意識しておきたいものです。