2月下旬特選映画【5】★映画のMIKATA「グレイテスト・ショーマン」★映画をMITAKA | 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

都市生活者の心と言葉を掌にのせた小説、電脳化社会の記号とイルージョンを巡る映画、都市の孕むシンボルと深層を探るエッセイ、街の風景と季節の色を彩る短歌…。小説と映像とエッセイと短歌をブログに・・・掲載します。




韓国の冬季オリンピック「平昌オリンピック」が閉幕しました。フィギュアスケート男子で羽生結弦が金、宇野昌磨が銀メダル…、 スピードスケートの高木美帆が女子団体パシュートで日本(高木美帆、佐藤綾乃、高木菜那)では金メダルを獲得!高木美帆は1500メートルで銀、1000メートル銅、金・銀・銅全てのメダルを獲得しました。スピードスケート女子500mでは小平奈緒選手が金メダル、カーリング女子チーム(吉田夕梨花、鈴木夕湖、吉田知那美、藤澤五月、 リザーブ:本橋麻里)が銅メダル、女子マススタートで髙木 菜那が金メダル…を手にしました。日本中が2月9日開催から25日の閉会式まで、冬季オリンピックのテレビ中継に釘づけになり、「がんばれ!いいぞ!}…と興奮していました。日本国民の4割以上は沸いていましたかーネ。熱しやすく冷めやすい日本人の国民性をよく表していました。ヒトラーとヒムラーが目論んだ1936年のベルリンオリンピックに民族が一致団結して一体感を感じながら興奮したドイツ人と似てますーネ。その間に、「共謀罪」「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が15日朝の参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数により可決されました。安倍晋三総理の国会答弁でのデータ改ざん問題を発端に、「働き方改革」関連法案の柱の一つ、現在、一部の専門職のみに適用されている裁量労働制を営業職などにも拡大しようする労働法案が、野党からサラリーマンの労働環境が悪くなる懸念と、企業の働き蜂の働き過ぎを却って自重する…と非難され、野党からから法案撤廃を求められています。スポーツ観戦も楽しいが、生活に密接した国会観戦も興味津々、目が離せませんですーネ。  


さて、2月下旬の特選映画をアップロードします。今回4本を映画館で観賞、今月2月は通算で、『ダークタワー』『羊の木』『THE PROMISE/君への誓い』『スリー・ビルボード』等々の8本を観賞しました。選んだ特選映画1本は、『グレイテスト・ショーマン』でした。P・T・バーナム役のヒュー・ジャックマンの朗々とした歌とダンスは素晴らしかったです。ミュージカル映画を過去に、『サウンド・オブ・ミュージック『マイ・フェア・レディ』『オペラ座の怪人』などを私は見ましたが、新しいミュージカル映画の代表作となりそうな秀作でした。綾瀬はるかの『今夜、ロマンス劇場で 』も楽しい映画でした。この映画の初日舞台挨拶で、「実現させたい夢」の質問に綾瀬は「オリンピックも開催中ですし…世界平和です…みなさんがいつも笑顔で健やかに過ごせる、そんな世の中がいいです」と挨拶したそうです。それに対して、彼女の「世界平和」発言を、彼女の天然キャラ発言であるかのようにオリコンと毎日新聞が恰もそれをバカにしたそうです。昨年10月に、私は終活的社会見学の一つとして、広島の原爆記念館に初めて行ったのですが、ガイド役のボランティアの叔母さんが、綾瀬はるかさんの家は私の住んでいた隣町にいたのですーよ…と、誇らしげに語っていました。被爆何世かが女優として活躍しているのは、広島の被曝者にとっては自慢の存在です。以前より戦争反対の平和番組に積極的に顔を出していた彼女ですが、決して「世界平和」発言は世間知らずのバカな発言ではありませんーネ…!!!私は以前、是枝裕和監督と綾瀬はるかがナレーターとして参加したドキュメンタリー映画『いしぶみ』を見ました。1969年に広島テレビが制作した原爆ドキュメンタリー「碑」を映画にした作品でした。是非彼女の真面目な一面を見てください。


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1本目は、売れっ子作家・西村寿行の小説を高倉健主演で映画化された『君よ憤怒の河を渉れ』(1976年公開、佐藤純彌監督)をジョン・ウー監督が、リメイクしたアクション&ハードボイルド映画『マンハント /MANHUNT』(2017年、ジョン・ウー監督)でした。この作品の来歴には、やや深い意味と歴史がありました。1979年に文化大革命後に『追捕』という題名で文革後の初外国映画であった。40年前に、無実の罪で連行される青年の姿が、毛沢東死後の文革の巻き起こった政治運動にシンクロナイズしたようです…。中国政府に不当拘束不当逮捕された、理不尽な政策に不満を持った中国人の共感を呼び、中国での公開は観客動員数が8億人に達する一大ブームを火をつけた作品であった。私は中国版映画『追捕』を鑑賞したいと思ったのですが、監督や俳優その他に関しての資料もDVDも見つかりませんでした。

強盗傷害容疑の逃亡者として東京地方検察庁刑事部検事役・杜丘冬人を高倉健が演じたが、リメイク版「マンハント」では、逃亡する容疑者は、製薬会社の顧問弁護士で国際弁護士のドゥ・チウ役にチャン・ハンユーが…、それを執拗に追いかける、かつて原田芳雄が演じた孤独な敏腕刑事役・矢村を福山雅治が演じる。

どうもこの映画を見乍ら私は率直に行って、臭い台詞ばかりーだな、昭和のかび臭い犯罪映画ー、歯の浮くような田舎芝居だな…と感じてしまいました。今時、高倉健主演の『君よ憤怒の河を渉れ』のリメイク版を上映する意義があるのかな…と、私は些か鼻白みました。私は自分自身の直感を確認する為に、レンタルDVDを懐かしくもう一度見ました。が、チャン・ハンユーと福山雅治が主演の『マンハント /MANHUNT』は、『君よ憤怒の河を渉れ』の高倉健の放っていた凄みと華、原田芳雄の持っていたデカらしい渋みと粘着質のこもった演技力と迫力が、2人にはないな…、だから、旧作のオーラと人気を越えてないな…と感じました。
 
確かに製薬会社が、アンダーグラウンドに合成麻薬を開発して、スーパーマンのような殺人的肉体能力を見につける結末は少し違うのだが、そんなストーリが果たして中国の今の時代性をもっているのだろうかな…???中国で文革当時盛大な拍手で『君よ憤怒の河を渉れ』が迎い入れられたのは、政府による不条理な逮捕に対して、毛沢東死後の新しい政治指導者と政治体制に抗議する意味があった筈です。ジョン・ウー監督はハリウッドで映画に夢中になっている内に、依然不寛容で思想の自由さえ許されない中国の若者達の無念と憤怒を忘れてしまったのだろうかーネ…!!!とても『レッドクリフ』赤壁の戦いでヒーロー劉備と孫権の連合軍が、強大な権力を持っていた曹操の軍を破った正義の戦いを現代的にアレンジした監督だからこそ、私たちは日本人もまた、中国と監督に拍手を送ってたはずですーネ。

ジョン・ウー監督がもしも、中国やアメリカの現状を憂慮しているならば…、アメリカの下層階級の人格を破壊する麻薬の蔓延や、製薬会社の市場独占や横暴、金儲け主義の寡占医療システムを訴える映画を制作してほしいですーネ。
 
この作品の唯一の収穫と愉悦は、最近とんと見なくなり、彼女はもう女優を引退して結婚でもしたのだろうか…と心配していたが、清楚な女優・桜田ななみが矢村刑事の相棒・新米女刑事の百田里香役で出演していたことです。『最後の忠臣蔵』(杉田成道監督、2010年)で大石内蔵助の隠し子「可音」 役で、神々しく初々しい演技を見せて以来、鮮烈な印象を私に残していた彼女の顔が見れたことが嬉しかったです。彼女はもう25歳か、10代のあの頃の幼さと初々しさはすっかり消えていましたが、ただ神々しい純白さだけは残っていました。できたらもっと演技に磨きをかけてくれる監督に巡り合って、映画ファンの印象にいつまでも残る名作の主役としスクリーンに出演してほしいですーネ。名監督と出会って名作に出演しないと女優として大成しないーよな。私は平成の吉永小百合だと思っていますので、女優として頑張ってください…!!!

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2本目は、撮影会社の映画監督を志望する青年で、今は雑用ばかりの助監督の健司(坂口健太郎)は、旧い街の旧い映画館「ロマンス劇場」に通い詰めて、もう廃版になった古いフィルムを誰もいない薄汚れた映画館のスクリーンに投影して、そこに映されたスクリーンの中のモノクロのお姫さま・美雪(綾瀬はるか)に恋い焦がれていた。雷の鳴り響く深夜に、テレビの普及によって、最早映画が娯楽の頂点から時代に取り残された映画館で、美雪がモノクロのスクリーンの向こうの世界から抜け出して、健司の目の前の現実の世界に現れた…というお伽話のような『今夜、ロマンス劇場で 』(2018年、武内英樹監督、宇山佳佑脚本)でした。
 

この作品を見乍ら私は、時代に取り残された映画館を舞台にした作品、洋画では往年の名作『ニュー・シネマ・パラダイス/NUOVO CINEMA PARADISO/CINEMA PARADISO 』(1989年公開、ジュゼッペ・トルナトーレ監督&脚本)を、邦画では加瀬亮と宮沢りえが主演する、旧い映画館「オリヲン座」を引き継いで経営するという傑作『オリヲン座からの招待状』(2007年公開、三枝健起監督、浅田次郎原作)をまず初めに思い浮かべました。日本では、映画が娯楽の頂点であった時代がありました。それが、テレビの出現と共に、茶の間で簡単に映像が楽しめるようになり、「3Ⅽ」が出現した高度経済成長のはじまりで、欲望の経済が日本で膨張した時でもありました。1964年の東京オリンピック開催時には、白黒テレビからカラーTVが爆発的に売れ、茶の間で競技を観戦したテレビ時代の始まりでもあり、戦後の経済的繁栄を支えました。『オリヲン座からの招待状』も『今夜、ロマンス劇場で 』も、テレビ時代の始まりと共に映画が娯楽の座から消えてゆく時代を社会背景にしていました。

 

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3本目は、19世紀半ばのアメリカで、オペラや演劇などの芸術とは全く違った、肌の色、ルックス、声帯、身長体躯、特技等々の人と違って、今まで敵意と差別と興味本位の目で見られ、世間から隠れて暮らしていた人間ばかりを集めた見世物ショーで、大評判大成功を収めた実話のようで、実在の興行師、P・T・バーナムを主人公にしたサクセスストーリをミュージカル映画にしたグレイテスト・ショーマン』(2017年、マイケル・グレイシー監督)でした。劇中で使われている音楽は、第89回アカデミー賞歌曲賞を受賞した『ラ・ラ・ランド』のスタッフ、ベンジ・パセックとジャスティン・ポールがこの作品でも作曲作詞を担当してます。


夢想家のバーナムは貧しい家に生まれ育ち、親子で身分の高い屋敷の雑用係りをしていた。幼なじみのその家の令嬢チャリティと結婚し、二人の娘の父となった彼は、船舶会社に勤務していた。が、突然船舶が座礁する海難事故で会社は倒産する。暖かい家族とはいえ、妻・チャリティと子供たちの生活は、古びた狭い粗末なアパートに住む貧しい生活であった。家族を幸せにするため野心に燃える彼は、挑戦と夢だけはいつまでも持ち続け、世界中のあらゆる珍品を展示した「バーナム博物館」をオープンする。が、町の人々の関心は薄く閑古鳥であった。そこで、世間で日陰に生きてきた人々、小人症や全身入れ墨の異人やサーカスの曲芸師などを集めたショービジネスを始める。珍しもの好きの観客でショーは満員の大成功をつかんだのだが、ところが、貴族ぶった一部の人々から低俗で卑しいショーであると非難を浴び、荒くれ者たちから妨害され小屋は燃やされてしまう。P・T・バーナム役にヒュー・ジャックマン、彼が生涯をかけて愛し続けたバーナムの妻チャリティ役にミシェル・ウィリアムズが、情熱的な歌を披露していました。映画の主題歌「THIS IS ME」は、第75回 ゴールデングローブ賞を受賞しています。心が躍るミュージカル映画でした。ハリウッドのアカデミー賞トロフィーに相応しい作品の一本でした。

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4本目は、7世紀(延暦23年/804年)を舞台に、弘法大師として知られる真言密教の開祖・空海が遣唐使として中国へ渡った若き日の姿を描いた歴史スペクタル&幻想映画『空海―KU-KAI―/妖猫/LEGEND OF THE DEMON CAT』(2018年、チェン・カイコー 監督&脚本、夢枕獏原作)でした。空海が遣唐使の留学僧として中国に渡って密教を学んだ中国は、玄宗帝の時代でした。若き日の空海(染谷将太)を主人公に、首都・長安で黒猫が人間の言葉を話し、人を襲い、眼玉を食いちぎる妖猫が跋扈する事件が起きていた…。詩人・白楽天(ホアン・シュアン・中国語版。日本語吹き替え・高橋一生)とともに空海も、皇帝が寵愛した楊貴妃(チャン・ロンロン・中国語版。吹き替え・吉田羊)が権勢を持っていた時の長安の都に関係がある…、謎の事件に黒猫が関係していることを解こうと推理を始める。

その他に、安倍仲麻呂役に阿部寛、白玲役に松坂慶子、大師役に火野正平が演じているが、中国人俳優と見分けがつかなかったです。私は日本語吹き替を見たのですが、幻想皇帝役の声にイッセー尾形、李白役に六角精児など名のある俳優が声優を務めているので驚きました。

中国と日本の7世紀の歴史が舞台なので、遣唐使として中国に渡った空海や安倍仲麻呂や、玄宗皇帝と楊貴妃、俳人李白(後の白居易)など当時の歴史的人物が登場します…。従って、背景を知らないとやや映画が楽しめないかもしれません。

玄宗皇帝が楊貴妃を寵愛しすぎたために安禄山で「安史の乱」が起き、洛陽が陥落する。楊貴妃の親族の楊国忠と激しく対立した玄宗皇帝の配下の陳玄礼と兵士達は、楊国忠と韓国夫人たちを殺害し、玄宗に対して楊貴妃を殺害することを要求する。が、玄宗は「楊国忠の謀反とは関係がない」と言って擁護したが、楊貴妃に自殺を命ずる。いまだに中国では楊貴妃死後50年が経った今でも、楊貴妃の死の真相が疑われているという。死後806年(元和元年)頃に、玄宗と楊貴妃の物語を題材にして、白居易が長編の漢詩である『長恨歌』を制作した。空海の解き明かした黒い妖猫の謎は、石棺に収められた楊貴妃の遺体は本当は仮死状態で死んだと見せかけて納められ、石棺の中で息を吹き返した…。閉じ込められた楊貴妃はもがき苦しみながら石棺の蓋を指で引っ掻き、息絶えたことを解き明かした。長安の都に出没する猫は楊貴妃の飼っていた猫が、楊貴妃の怨念の魂を宿して妖怪になったという…謎であった。

空海と 言えば、未だ謎の多い生涯で、私は映画の原作、夢枕獏の『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』を読んだことがありませんが、司馬遼太郎の歴史小説『空海の風景』を以前読んだことがありました。この本の読後に、私は空海の遺跡を辿りたくて四国一周のツアーに参加したことさえがありました。土木知識と医術と天文と地勢学を身につけ、途方もない知識と能力の持ち主なのに悟りを開いた魅力的な宗教家です。空海が何度かの舟難破の末に中国に辿り着いたときに、知事との中国人と会話したというエピソードが残されています。彼はどのように中国語を学んだのか…が謎になっていました。司馬遼太郎は当時の知識人の教養として漢籍から知識を身につけていたので、中国語も話せた筈だと書いてます。私が大学時代に習った教養課程の「漢文」の教授は、「一八史略』を流暢な中国語で朗読していました。どのような空海像が描かれているのだろうかと、と楽しみにしていました。まあ、やはり歴史小説とは一味違った夢枕獏流の、妖術と幻想の空海でした。ただ私は楽しめました…。


 

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