この映画のアンジェイ・ワイダ監督が先日10月9日に死去しました、90歳でした。監督のご冥福をお祈りいたします。第2次大戦中には、侵攻したナチス・ドイツに対する抵抗運動に参加、その後も映画を通して抵抗運動を続けたと言って良いです。晩年まで創作意欲は衰えず、ここ紹介した「カティンの森」、13年には「ワレサ 連帯の男」で再びポーランドの民主化への歩みをとりあげました。
その生涯は骨太の「抵抗」の人でした。1981年には民主化を率いた自主管理労組「連帯」を取り上げた「鉄の男」で、連帯支持を表明、この作品でパルムドール賞を獲得。ポーランドの民主化運動当時は、上院議員を務め、連帯議長から大統領に就任したワレサ氏の諮問機関「文化評議会」の議長にも就いた。アンジェイ・ワイダ監督の「レジスタンスの映画」を引き継ぐ者はポーランドにいるのかな…???
これまでDVD特選映画の「ナチズムとホロコースト」関連のテーマで、過去公開映画をDVDで見た時、或は、新作を映画館で観賞し、既に特選映画としてブログにコメントを載せたものを、以下の作品群に掲載しました。簡単な内容紹介を並べても、一作一作の作品の価値と、ホロコーストでの意味を説明したことにはならないので、可能ならば一つのまとまったテーマとストーリの中で、複数作品をコメントしたいです。今回は「ナチズムとホロコースト」を一度整理するため、映画の題名と監督名と公開年月を資料として併記列挙するだけにとどめました。私自身も、これまで次々に見た映画を忘れてしまいそうです。私自身のためのメモでもあります。
(赤文字は既に映画館で鑑賞した作品と映画ブログで紹介した作品です)
①『ミケランジェロの暗号』(2011年公開、ヴォルフガング・ムルンベルガー 監督)
②『黄金のアデーレ 名画の帰還』(サイモン・カーティス監督、2015年公開)
③『ミケランジェロ・プロジェクト』(2013年公開、ジョージ・クルーニー監督。)
④『アドルフの画集』 (2002年公開、 メノ・メイエス監督)
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⑤「顔のないヒットラーたち」 (2014年公開、ジュリオ・リッチャレッリ 監督)
⑥「スベャリスト/自覚なき殺戮者」(1999年公開、エイアル・シヴァン監督)
➆『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』(2015年公開、ポール・アンドリュー・ウィリアムズ監督)
⑧『愛を読むひと』(2008年公開、スティーヴン・ダルドリー監督、ベルンハルト・シュリンク『朗読者』が原作。デヴットヘア脚本)
⑨『ハンナアレント』(2012年公開、マルガレーテ・フォン・トロッタ監督)
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⑩「黄色い星の子供たち」 (2010年公開、ローズ・ボッシュ監督)
⑪「サラの鍵」(2010年公開、ジル・パケ=ブランネール監督)
⑫「ライフ・イズ・ビューティフル」(1998年、ロベルト・ベニーニ監督)
⑬「縞模様のパジャマの少年」(2008年、マーク・ハーマン監督)
⑭「さよなら、アドルフ」 (2012年公開、ケイト・ショートランド監督)
⑮「悪童日記」 (2013年、ヤーノシュ・サース監督)
⑯「バティニョールおじさん」 (2002年公開、ジェラール・ジュニョー 監督)
⑰『ソハの地下道』(2011年公開、アグニェシュカ・ホランド監督)
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⑱「あの日のように抱きしめて」 (2014年、クリスティアン・ペッツォルト監督)
⑲「シンドラーのリスト」 (1993年公開、スティーヴン・スピルバーグ 監督)
⑳「アンナとロッテ」 (2002年公開、ベン・ソムボハールト監督)
㉑「ヒトラーの贋札」 (2007年公開、ステファン・ルツォヴィツキー
監督)
㉒「ホロコースト -アドルフ・ヒトラーの洗礼- (2002年公開、コスタ=ガヴラス監督)
㉓『ワルキューレ』(2008年公開、ブライアン・シンガー
監督)
㉔『杉原千畝 スギハラチウネ』 (2015年公開、チェリン・グラック 監督)
㉕『ヒトラー暗殺、13分の誤算』 (2015年公開、オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督)
㉖『帰ってきたヒトラー』 (2015年公開、ダーヴィト・ヴネント監督)
㉗『奇跡の教室/受け継ぐ者たちへ』 (2014年公開、マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール 監督)
㉘『栄光のランナー/1936ベルリン』(2016年公開、スティーヴン・ホプキンス 監督
㉙『ソフィーの選択』(1982年公開、アラン・J・パクラ監督)
㉚『手紙は憶えている』 (2015年公開、アトム・エゴヤン監督)
㉛「わが教え子ヒトラー」(2007年公開、ダニー・レヴィ 監督)
㉜「ディファイアン」(2008年公開、エドワード・ズウィック 監督)
㉝「アイアン・スカイ」( 2012年公開、ティモ・ヴオレンソラ監督)
㉝「善き人」(2008年公開、ヴィセンテ・アモリン監督)
㉞「サウルの息子」 (2015年公開、ネメシュ・ラースロー監督)
㉟『戦場のピアニス』2002年公開、ロマン・ポランスキー監督)
㊱『夜と霧』(1955年公開、アラン・レネ 監督)
㊲「灰の記憶」(2002年公開、ティム・ブレイク・ネルソン 監督)
㊳「謀議」 (2001年公開、フランク・ピアソン監督)
㊴「ナチスが最も恐れた男」(2008年公開、エスペン・サンドベリヨアヒム・ローニング 監督)
㊵「囚われのサーカス」(2008年公開、ポール・シュレイダー監督)
㊷「アウシュヴッツ行最終列車~第三帝国ホロコースト」(2006年公開、 ダーナ・ヴァヴロヴァ、 ヨゼフ・フィルスマイアー監督)
㊸「消えたその声が、その名を呼ぶ」(2015年公開、ファティ・アキン 監督)
㊹『白バラの祈り』(2005年公開、マルク・ローテムント監督)
㊺「エリート養成機関 ナボラ」(2004年公開、デニス・ガンゼル監督)
㊻「ヒットラー最後の12日間」(2004年公開、オリヴァー・ヒルシュビーゲル 監督)
㊼「カティンの森」(2007年公開、アンジェイ・ワイダ監督)
㊽「あの日あの時愛の記憶」(2011年、アンナ・ジャスティス監督)
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㊾「誰がために」(2008年公開、オーレ・クリスチャン・マセン 監督)
㊿「ニュールンベルグ裁判」()
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今回のDVD特選映画は「カティンの森」(2007年公開、アンジェイ・ワイダ監督)をとりあげます。
この映画は、直接に「ナチズムとホロコースト」には関係ないのですが、第二次大戦にまつわるナチズムと関係があり、同じ虐殺行為という点では、ホロコーストと勝るとも劣らぬ残虐さであります。この映画の存在は、≪人と映画のタペストリー≫というブログの情報・コメントから知りました。興味のある方は、下記アドレスを開いて一度閲覧してください。なかなか読みごたえがあります。映画についても現代史に関しても知性のキラメキを感じる映画ブログです。
http://www.strawberryplanet.net/blog/blog/2012/10/22/katyn/
尚、「カティンの森事件」に関して詳しい解説は下記サイトの「ウィキペディア」を閲覧してください。
1939年9月、 ドイツがポーランドに侵攻し第二次大戦が勃発した。ナチス・ドイツとソ連の両国によってポーランドは攻撃された。ソ連はポーランドの東部に侵攻し、秘密裏に独ソ不可侵条約が結ばれた。その結果、ポーランドは、ドイツとソ連に分割占領されることになった。ポーランド軍人はソ連軍に降伏、武装解除されたポーランドの将校はソ連の捕虜となって強制収容所へ囚われた。「カティンの森虐殺事件」は、第二次世界大戦中にソ連のグニェズドヴォ近郊の森で約22,000人のポーランド軍将校などが、スターリン共産党書記長とソビエト内務人民委員部ベリヤ(NKVD)が虐殺の命令書に署名、銃殺された事件でした。映画「カティンの森」のアンジェイ・ワイダ監督はポーランド出身で、彼の父親もこの事件で殺された将校でした。この作品はいろいろな意味で問題作です。
1943年に、ソ連領に侵攻したドイツ軍は、カティンの森で、2万人以上のポーランド兵士の死体を発見した。ドイツ軍は、ソ連軍の犯行であることをその時公表した。第二次世界大戦が連合軍によって終結した1945年以後、ポーランドはソ連の支配下に置かれた。ソ連は、ポーランド兵の惨殺死体が埋められたカティンの森の虐殺事件をナチズム軍の行為と潔白をあくまでも主張した。尚且つ、ソ連支配下のポーランド人がカティンの森の虐殺の真相を調査し、事件に触れることさえ政治的圧力で沈黙させた。
1944年、「カティンの森事件」を聞いたアメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトは、カティンの森事件の情報を収集するために、ジョージ・アール大尉をヨーロッパに派遣した。アール大尉は枢軸国のブルガリアとルーマニアから情報収集し、ポランド兵士虐殺はソ連の手でなされたと判断した。が、ルーズベルトはこの結論を、現代史の闇に隠蔽した。
アンジェイ・ワイダ監督、カティンの森事件の真相を伝える映画化を50年以上に渡って構想していたが、ソ連の圧力によって、或は東西ドイツの冷戦時代の社会背景では、ソ連批判の映画の公開はそれが難しかった。
ソ連の歴史の隠蔽が解禁されたのは、1990年、ミハイル・ゴルバチョフが大統領に就任し、ソ連の最高指導者となりた時、ソ連共産党のペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(情報公開)を断行した。ミハイル・ゴルバチョフは、ソ連の内務人民委員部がポーランド人を殺害したことを認め、1992年のソビエト連邦崩壊後にロシア政府は漸くカティンの森事件の公文書を公にした。
問題点は、大国の政治力によって、史実が歪められ隠蔽される暴挙が、依然行われる可能性が多分にあることです。例えば、中国共産党の習近平党総書記以前から、或は、ソ連のプーチン大統領就任以来、周辺諸民族と小国への弾圧と武力介入は、平然と行なわれています。が、世界のパワーバランスから、国連もアメリカもヨーロッパも介入と批判を黙し、尚かつ、政治的にニュース報道から隠蔽・削除されることもあります…。
で、2007年に映画が制作・公開された時、彼は既に80歳でありました。この映像にはアンジェイ・ワイダ監督の戦争を憎む心と、父親の死の真相を暴くための怨念と、スターリン体制下のソ連共産主義の歴史的誤謬を現代史に明々白々に伝えるという彼の長い間の執念が表現
されていました・・・。やはりこの事件も現代史の「負」の原点です。是非一度観賞してください…!!!
映画のストーリは・・・。ポーランド軍将校のアンジェイ大尉(アルトゥー・ジミエウスキー)は、妻アンナ(マヤ・オスタシャースカ)と娘は、夫の行方を捜査する目前で、ソ連軍によって連行されていく。アンナは夫の両親の家に戻るが、大学教授の義父はドイツ軍に逮捕され収容所に送られ病死する。残された家族はアンジェイの帰還を待ち続けるのだが…。西からドイツ軍に追われた人々と、東からソ連軍に追われた人々が、途中ポーランド東部のブク川で相互に出会う。ソ連軍から逃げる人は西に戻れと言い、ドイツ軍から逃げて来た人は、反対に帰れと言う。当時のポーランド人が右往左往する混乱から映画は始まります。
映画に映し出される惨殺の現場は、youtubeで見れます。下記アドレス以外にも多数あります。一度検索してください…。
https://www.youtube.com/watch?v=1o6yWgR2at8
https://www.youtube.com/watch?v=H3vC90d7GWo
https://www.youtube.com/watch?v=sb4NKu_uL6A
https://www.youtube.com/watch?v=1V2QBNoUOik
ホートランドというと、私は先ずは、ジョンバエズが歌う「ポートランドタウン」を口ずさみたくなります。
https://www.youtube.com/watch?v=9BPoAZL8irw
一度、youtubeで生のジョンバエズJoanBaezの歌うポートランドタウン「portland town」を聴いてみてください。詞を書いたのは、アメリカでは有名な作詞家ジョン・スチュワートです。詩の内容はたいへん単調です。私はポートランドの街に生まれた。子供を戦争に送ったが、帰ってこなかったという、大変シンプルな反戦歌ですが、とても悲し気な曲調です。 ひょっとしたら、ジョン・スチュワート の家系を辿ると、国家そのものが歴史の激動にさらされて、国土と国民はいくたびも分断されているポーランドなのかもしれません。私は、ジョンバエズのこの曲を聴くと、やはり映画「カティンの森」を連想します。
I was born in Portland town
I was born in Portland town
Yes I was, yes I was,
I was born in Portland town,
Got married in Portland town,
Yes I did, yes I did,
Yes, I did.
Got married in Portland town,
Had children one, two, three,
Yes I did, yes I did,
Yes, I did.