DVD特選映画◆「医療の映画】【3】ブックレビュー「だれが修復腎移植をつぶすのか」◆ | 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

都市生活者の心と言葉を掌にのせた小説、電脳化社会の記号とイルージョンを巡る映画、都市の孕むシンボルと深層を探るエッセイ、街の風景と季節の色を彩る短歌…。小説と映像とエッセイと短歌をブログに・・・掲載します。




映画は、今日の現実と悲劇と喜びと笑顔を映す鏡です。と同時に、現実の医療の社会的病根を映像のメスで切り取り、社会問題として映像化し、現実の矛盾と闇に光を当てて、現実を変える力の視点=支点を与えることです。邦画でも洋画でもたくさんの医療映画が制作されました。その中で私が選んだ邦画の特選映画は、医の倫理をテーマとする時代劇の「赤ひげ」と、臓器移植をドラマ化した「孤高のメス」を選びました。


この作品では市長の大川が末期の肝硬変で倒れ、彼を救済する唯一の手段は日本の法律ではまだ認められていない違法手術の「脳死肝移植」施術すことでした。市民病院に勤務する外科医・当麻鉄彦(堤真一)が生体肝移植を決断した…。 この映画を理解するためには、国内の移植医療・臓器移植に関する知識と理解が多少必要でしょうーかね。臓器移植を必要とされる臓器は、肝臓、腎臓、心臓などの内臓疾患です。1968年8月に札幌医大胸部外科の和田寿郎教授が日本で初めての心臓移植を行いました。当時非常にセンセーショナルに報道されました。その頃私は、市民病院に入院中で、年少の私でさえ、病に関してなお更に敏感であったのだろうかー、未だ鮮明に記憶に残っています。エ~心臓が悪くなったら、他人の心臓を機械部品のように交換できるの、エ~、ならば私の悪くなって機能しない臓器も、死んだ人の臓器と取り換えられるのかな…と思いました。とすると、人間は永遠に死ぬことがなくなるのかなー。とすると当然、医師の手が自由に生命と寿命を左右できるのならば、臓器をお金で買える金持ちは、いくらでも命を買うことができる…とも考えました。移植の必要とされる致命的な臓器疾患に対して、和田教授の心臓移植の後に、1997 年10月に国内では「臓器移植法」が成立し、脳死した人の臓器を摘出して移植できる「脳死移植」が可能となりました。これまで国内で移植手術を受けられないため、金持ちは東南アジアやアメリカへ渡って施術しました。「脳死移植法」前後で、臓器提供者の「死の判定」がまず初めに重要な問題となり、安楽死や臓器売買などの「命の問題」が一斉に吹き出しました。


命にかかわる心臓や肝臓、腎臓などの臓器の致命的な機能不全で、移植を必要とする患者に対して、脳死の臓器提供者(ドナー)から善意の臓器提供により延命の道が開かれました。しかし、臓器移植に関しては「人間の死の判定=脳死」や「臓器ドナー不足による臓器売買」等の命にかかわる複雑な問題が、今日でもまだ依然残されています。例えば最近、運転免許証の裏に「臓器提供」に関する意思表示を確認し、ドナーを求めています。が、「臓器移植法」が施行された後でも、善意の脳死ドナーの登録は大変少なく、脳死ドナーは2015年10月現在で僅か46人です。日本臓器移植ネットワークのサイトによれば、臓器提供を待つ待機患者の登録者は、心臓で423人、肺で258人、肝臓で380人、腎臓で12.572人いるそうです(2015年7月現在調べ)。私も含めて近頃、糖尿病は国民病と言われるくらい患者が急増して、糖尿病性腎症まで抉らせて、人工透析から更に、腎移植をしなければ命の危ない患者によって臓器ドナーを待つ待機患者は増えてます…。


腎臓の次に多い肝臓移植オペを待つ患者は、多くは「B型慢性肝炎」なのでしょうかーね。木村良一産経新聞論説委員は「臓器漂流」(2008年ポプラ社刊行)で、プロレスラー・ジャンボ鶴田がB型肝炎ウィルスによる肝硬変で、フィリピンの国立肝移植研究所で2000年5月に肝移植の手術中に亡くなったことを詳細に伝えています。B型肝炎ウィルスのキャリアは、国内に100万人以上いるといわれています。肝細胞が破壊され、肝硬変や肝がんでなくなってい

くようですーね。今新たにE型肝炎ウイルス(略HEV)に警告が発せられています。腎臓器移植をドラマ化した「孤高のメス」では、こんな臓器提供を廻る問題のドラマでした…。


ただ此処では「肝臓移植」というよりも、腎臓移植に伴う臓器移植の問題提起の本『だれが修復腎移植をつぶすのか 日本移植学会の深い闇』(東洋経済新報社、)で、ノンフィクションライター・高橋幸春氏のルポに目を向けたいと思っています


日本の血液人工透析患者数は、現在31万4.180人(2013年現在)、毎年約3万8024人の透析患

者が増え、その中で、亡くなる透析患者は3万0708人います。ところが、2010年に「臓器移植法」が改正されて、臓器提供が本人意思でなくても、家族の同意があれば移植できるようになった。とは言えそれでも、2010年以降、心停止(67体)、脳死(88体)による死体肝移植総数は、年間1.431体(日本移植学会2013年)で、透析患者約31万人に対して圧倒的に少ないです。

p23…透析患者約31万人を超えたにもかかわらず移植を希望する者は約1万3000人にすぎない。…患者が透析に満足しているからではない。…移植希望者の登録者数が少ないのは、経済的負担のためというよりも、あまりに移植の確率が低く最初から諦めているからです。…腎臓移植を望んでいる人の1パーセントしか移植手術を受けられないのが現実だ…。


修復腎移植」とは何か? がんにかかったドナーの臓器を移植に用いるのはレシピエントにがんが転移するので従来より医学界ではタブー視されていました。がそれを破って、4センチ未満の小径腎がんから、がんの部位を切除した腎臓「修復腎」を、慢性腎不全の患者に移植することです。それを、宇和島徳洲会病院の万波医師と瀬戸内海グループの医師集団がタブーを破り、実績を挙げていた…。それに対して、2005年に9月に臓器売買による腎移植手術として万波医師たちが警察沙汰となった。更に医師会や移植学会から、肝臓の全摘は倫理違反、がんが転移する、臓器売買になるとか様々な中傷や虚偽の発言を浴びた…のです。万波医師の下には、それでも最後の命の綱として、延命の望みを托して、多くの透析患者が修復腎を求めて集まり、万波医師復権のために「修復腎」支持した…。


透析患者は、一級障害者として認定され、一人が使う国庫負担の年間医療費は、約500万円。国内の人工透析医療患者に投入する医療費は、約2兆円と言われています…。この二兆円市場に絡み、敢えて万波医師の「修復腎移植」を違法と非難しそれを妨害し、告発をする医学界には≪深い闇≫横たわる

と高橋幸春氏は言うのである。

p154…透析患者を多く抱えることは安定した病院経営に直結する。…この巨額の医療資金は、「透析医療」の最終消費地である透析病院で吸い上げられ、関係者間で分配されます。分配先は透析病院、医師、医療者、医療関係会社、銀行、そして、間接的に大学医学部の寄附金、研究費、政治家の政治資金、マスコミへの広告費などとしてその資金は社会の隅ずみにまでゆきわたっています。…移植医療の発展は、透析医療の2兆円市場の拡大を確実に阻み、萎ませていく。その思惑が万波バッシングの背景に潜んでいる…

p192…現在の腎移植希望登録者数1万0849人。修復腎移植移植が認められれば、6年ほどの期間内で移植が受けられることになる。…移植を望む透析患者の大部分は移植がうけられずに死亡していると言って過言ではない。修復腎移植が認められれば、その多くの命が救われるのだ。…


臓器移植の周辺に、安楽死とか脳死判定とか臓器売買の問題があります。それらに肉迫する「医療の

映画」に、周防正行監督の『終の信託』や阪本順治監督の『闇の子供たち』などがありましたーね。人間の≪死≫を臓器移植の問題に絡ませて映像化してほしかったのだが、けれど残念ながら『それでもボクはやってない』の監督も、社会の闇を映像化しきれなかった…!欲を言えば、ミドリ十字の≪薬害エイズ≫事件などに光を当てた映画を制作してほしかったですーね。だからまだまだ、この「医療の映画」になっていない社会的事件がたくさんあります。例えば、群馬医大の腹腔鏡手術で30人余りの多数の患者が死亡したことや、再び製薬会社のデータ偽装の「化血研究所」の事件なども、映画化してほしいものでした。






ご案内下記アドレスでファンタジーノベル「ひまわり先生、大事件です。」序章~を掲載しました。宜しかったら、一度お立ち寄りください。感想もブログ内に頂ければ嬉しいです…!

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