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藤丸が藩主と2人きりで、昨夜の襲撃未遂の事、全ての始まりである7年前のお家騒動を語り始めた。

城の奥にも、昨夜の事件が知れ渡り、家老・加藤と結託していたお春の方は、激しい焦燥感にかられていた。
今まで、我が子・松千代と自分を警護していた加藤派の武士達は、藤丸暗殺失敗を知ると、瞬く間に姿を消してしまった。

頼りにしていた松千代の守役・青木は、城代家老・大杉に捕らわれたと聞き、更にお春の方は切迫詰まっていた。

藩主の事を侍女尋ねると、藩主は藤丸と部屋で二人きりで話しているという。

これは、きっと藤丸が襲撃犯の中に青木がいること、そして加藤と自分が襲撃に関わっていることを密告しているに違いないと、お春の方は思い込んでいた。

きっと、藤丸は自分と松千代を粛正を藩主に懇願しているはずだ。

その前に、藤丸をこの手で仕留めなければ、松千代の命は危ういとお春の方はそう思った。
我が子を守る為に、何が何でもしなくてはと、お春の方は心を決めた。

松千代を腹心の老女に託し、お春の方は藩主の部屋へ一人で向かった。

藩主の部屋には、人払いされて、離れの間で近習達が控えていた。
お春の方が、いきなりやって来て、近習達は慌てて止めたが、お春の方はそれを振り払い、彼らにそこにいる様に命じ、藩主の部屋へ入ってしまった。

その時、藤丸は藩主に、昨夜に藤千代の使いと言う者が自分達を救ってくれた話を終えたばかりであった。

藩主は、優しくお春の方に部屋に戻る様に言い渡した。

お春の方は、隠し持っていた脇差しを藤丸に向けた。

突然で、藤丸はどうすることも出来無かった。

何処からか入って来た一人の藩士が、お春の方を止めた。

その者の顔を見た藤丸は、はっとした。
藩士に変装した、清吉であったからだ。

清吉は、近習を呼ぶとお春の方を引き渡した。

優しい藩主は、近習にお春の方は混乱しているので、丁重に部屋へ連れて行くように行った。

そして、お春の方に自室で控えている様に命じた。

失敗して意気消沈したお春の方は、素直に従った。

清吉は、藤丸を守ったので、部屋から下がろうとした。

藤丸は、清吉に残る様に命じた。
藤丸の話に、半信半疑の藩主に信じて貰う為には、清吉が必要であった。