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三男が蔵から駆け付けたのを見て、家老・加藤は、これで奴を倒せると思った。
加藤は、清吉と闘う長男の助太刀をしたが、直ぐ清吉に脇へと追いやられてしまい、何の役にも立たなかったからだ。

しかし、清吉と闘っていた長男の考えは違っていた。
三男が、ここで清吉と闘ってしまうと、自分達の共犯と見なされてしまう。
藤丸襲撃が失敗した今、加藤家は終わりである。
せめて弟には、何としても加藤の血を残して欲しいと思った。

三男が清吉に刀を向けようとすると、声を張り上げそれを制した。
こやつは、自分が仕留めると言った。

その瞬間、加藤は長男の決心を理解した。

清吉も、同じであった。

長男は物凄い殺気をみなぎらせ、清吉に斬りかかって来た。
清吉は、正面から受け、長男の刀を振り落とした。

刀が宙を舞い、地面に落下した。

長男は覚悟を決め、地面に正座した。

だが、清吉は何もせずに、加藤親子を見ながら、屋敷を出た。

三男は、一瞬何が行ったのか分からず、清吉の後を追おうとして、門の外に出たが、暗闇だけが広がっていた。
逃げられたかと思い、門内へ戻ると、正座したままの兄の側で、父親が肩を震わせていた。

加藤と長男は、隠密に情けを掛けられるとは思いもしなかったのだ。

悔しいと言う加藤に、長男はこれで家老の息子として、お殿様と藤丸様にきちんとお詫びが出来ると言った。