騒ぎを聞き、母屋から加藤の娘が慌てて出て、屋敷奥にある蔵を開け、閉じ込められた兄の三男に助けを求めた。
三男は、妹から愛用の刀を渡されると、門へ駆けて行った。
門では、刀を抜いた加藤と清吉がにらみ合いをしていた。
清吉が加藤に斬りかかる寸前、長男が門に現れた。
重い労咳により立つのもやっとの体で、剣を構えた。
長男は清吉の登場で、襲撃が失敗した事を悟った。
ここで、自分が盾とならならなければ、加藤家が取り潰しに合うと思ったのだ。
長男は、藤丸襲撃の件は自分が主導したものであり、父親は関係無いので、相手をすると言った。
清吉は、7年前と今度の2回にも渡り藤丸様を暗殺をしようとした父親を、何故そこまで庇うのかと問うた。
全ては、弱い藩主をないがしろにし、藩政を一人で牛耳る大杉を討つ為で、藤丸様を暗殺すれば後ろ楯を失った大杉は失脚するはずだったと答えた。
清吉は、それならば正々堂々と大杉を討てと言った。
長男は、それが簡単なら大杉を既に暗殺してると反論し、大杉の血を引く藤丸様がいる限り、権力を欲しがる大杉の息子に藩が牛耳られてしまうと語ったのだ。
清吉は、腹の底から怒りが湧いた。
加藤と大杉の争いで、幼き和子様達が危うい目に遭っている事、何よりもその争いによって、八重様が深く悲しんでいる事にである。
清吉は、お主こそ己の欲の為に藤丸様を暗殺して、松千代様を次期藩主にし、藩を我が物にしようとしてると言い、長男に刀を向けた。
病弱ながらも、長男は剣術の腕はかなりあり、清吉と互角の勝負となった。
そこに、三男がようやく到着した。