藤丸は、この刀が養父が亡くなる時、城代家老・大杉の手に渡っていたことを知っていた。
そこで、藤丸は大杉の妻・八重にこの刀がどうして黒装束姿の男が持っているのかと聞いた。
八重は正直に、亡き藤丸兄の藤千代が夢に現れて、家の蔵の奥にあることを教えてくれたことを答えようとした。
その時、清吉がこれは藤千代様が私の夢枕に現れたからと言った。
藩主の子息と名乗った藤千代様が、弟の命を助けて欲しいと自分に頼み、これは夢でなく現実の話だとも語り、その証として刀を大杉の蔵にあることを教えて下されたとも答えた。
どうして、藤千代様が自分の夢に現れたのか解らないが、きっと自分の腕を見込んだからだと付け加えた。
清吉は、八重をかばった。
事の真相が明らかになると、八重の立場が大杉家の中で悪くなると思ったからだ。
清吉の言葉を聞いて、八重は清吉が自分の身代わりになってくれたことに気付き、申し訳ない気持ちで一杯であった。
語り終えると、清吉は藤丸に刀を返上した。
藤丸は、刀を受け取ると兄の心に触れて涙した。
清吉は、田島を見た。
田島ももらい泣きをしていた。
田島に、全て藤丸に話すように言い、これから加藤と対決してくると言い残して別邸を去った。
八重は引き留めようとしたが、清吉の姿は消えてしまった。