全ての物件に当てはまることではないということを前置きした上で、私は「入居時費用は高く、家賃は低く」募集することを推奨します。
面積対家賃で見たとき、家賃の㎡単価が高い場合は特にです。


昨今のアパートマンション供給過剰具合によって、入居時費用はどんどん圧縮化されています。
仲介業者は仲介手数料を受領しにくくなっているし、(札幌では)敷金2ヶ月の物件なんて滅多に見ないし30㎡以下の物件ではナシってところもかなり増えてきました。もちろん礼金も。(ちなみに礼金はその実態から退去時に訴訟されれば返還しなければいけないこともありますので、気軽に礼金バック※1なんかしてると思わぬ損失を被る可能性があります)

そして、入居時の費用圧縮は貸主による一種の販促に過ぎません。競争の結果です。
借りる人のためではなく、貸す人のためです。
ですから、「敷金ナシでの契約なんだから家賃滞納が一カ月でも起きたら即刻退去してもらう」とかは、筋違いの話です。
現状の過度な借主保護には私も概ね反対ですが、賃貸借の契約条件を緩和したからといって借地借家法や消費者保護法を無視したのでは自らが損をするだけです。自力救済なんてもっての他でしょう。今はITによる可視化の時代ですから、多くの人が知恵を持っています。(もっと持つべきだと思いますが)

すなわち、家賃滞納リスクを抑えるのであれば、敷金を2~3か月分くらい受領しておくか、退去時清掃料※2などを前受けでしっかりと受領しておくことが必要でしょう。
まあ、現実的には敷金3ヶ月って難しいと思いますが、最低でも1ヵ月分くらいは受領するというか、むしろそれくらいの金額を支払える人を入居させた方が良いと思います。


もう一点、入居時費用を圧縮すると簡単に退去されやすくなります。
契約する際のプレミア感が薄れるという心理的作用がひとつ。(高く買ったものほど大切にする心理)
そして、圧縮方法にもよりますが、大抵の場合は家賃を下げたくない代わりに入居時費用を圧縮するわけで、どういう現象が起こるかというと、契約するメリットはあっても契約し続けるメリットが希薄します。

入居時の利回りを計算すると少しでも家賃は高く貸したいところですが、常に満室なんてありえません。入居者の入れ替わりがあれば空室期間の損失はもちろんのこと、広告料や修繕費用も必要になります。複数年の中長期的試算をしなければ、月々数千円(年間数万円)の収益増を狙った結果、年間数十万円の損失を被る可能性が高まると思います。あくまでも確率論の話ですが、確率論で考えるしかありません。



一方で、冒頭に前置きしている通り、20㎡以下だったり2万円前後の家賃だったりする場合など、競合する物件との兼ね合いにより戦略的に入居時費用で勝負することも、もちろん必要です。
また、きちんと家賃支払い能力もあり長期入居してくれる人でも、極力入居時費用は圧縮したいのは当然なことでもあります。
これらを踏まえての、入居促進戦略が必要なんだと思います。




※1→「礼金バック」・・・本来は契約条件にない礼金を仲介業者が借主から自主的に受領することで、その金額をそっくりそのまま貸主から仲介業者へ報酬として支払う(バックする)こと。地方客や法人が狙われやすい。

※2→「退去時清掃料」・・・文字通り借主が契約した部屋を退去する際に清掃するための費用。本来は貸主が負担すべきもので、契約内容によっては返還請求を起こされる可能性あり。また、借主がいくらきれいに清掃するからといってもその程度にはバラつきがあるという理由から、貸主(または管理会社)としては一律金額を受領したがる。









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