朝鮮学校への補助金停止問題(論文) | かっちんブログ 「朝鮮学校情報・在日同胞情報・在日サッカー速報情報など発信」

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朝鮮学校への補助金停止問題論文

http://d-navi.org/node/3128 より










1.はじめに







 昨年2月からはじまった朝鮮学校「無償化」除外問題は、朝鮮学校じたいに世間の注目を集めさせることとなった。一方では、在日朝鮮人だけでなく、日本や韓国の市民も運動を展開し、8月末には昨年11月から凍結されていた「無償化」審査が、不十分な点を抱えながらも再開されることとなった。しかし他方で、「無償化」除外を背景とした根拠のない「朝鮮学校バッシング」が、政治レベルでも繰り広げられた。とくに、本稿のテーマである地方自治体の補助金停止問題は、「無償化」除外問題の残滓というだけでなく、外国人学校の積極的な制度的保障へと向かう流れに逆行するものである。本稿では、まず、朝鮮学校「無償化」除外問題に起因する、今回の各地方自治体の補助金停止の事例を確認していく。次に、地方自治体による補助金支給の歴史的経緯を振り返る。最後に、以上を踏まえたうえで、問題の性格と今後の課題について述べていく。







2.補助金停止問題の経緯







 今回の補助金停止問題に関して重要な点は、「無償化」問題が起こる以前の2009年度には、朝鮮学校のあるすべての都道府県で、地方自治体による補助金の支給がなされていたことである。これから詳述していくように、各都府県でさまざまな停止理由が挙げられいるが、いずれも「無償化」除外以後になされた措置であることに留意されたい。







東京都







 今回の一連の問題において、全国でもっとも早く補助金停止を決めたのが東京都である。東京都は、都内の10校の朝鮮学校に対して、毎年計約2400万円を支給してきた。2010年度も予算に計上されていたが、昨年12月に「私立外国人学校教育運営費補助金交付要綱」が改定され、朝鮮学校だけが「別途知事が定めるまで、平成22年度の指定対象から除く」とされた。また8月22日には、「別途知事が定めるまでの間、指定対象から除」かれることとなった。再改定された要綱は「平成23年度の補助金から適用する」とされており、単年度の支給停止を定めた前回の改定よりも、内容が悪化している。

 停止の理由として都は、①北朝鮮による韓国・延坪島砲撃で政府が朝鮮学校の高校授業料無償化の運用手続きを停止するなど今後が不透明、②補助金支出に関する議論が都議会でも続いている、という2点をあげている。しかし、①については、朝鮮半島の軍事的衝突と朝鮮学校への補助金支給は関係がないこと、国政レベルの高校授業料無償化制度と自治体レベルの補助金制度は歴史的経緯からみても別であること(後述)、いまや「無償化」適用が決定的であることなどから見ても不合理である。また②については、昨年12月にひとりの議員が質問を行っただけで、実際には議論がされていないという問題がある。むしろ都議会で、2010年度、11年度ともに朝鮮学校に対する補助金が予算計上されている。







大阪府







 大阪府は2009年度、朝鮮学校11校や児童生徒に対し、計約2億円の補助金を支給した。しかし「無償化」除外問題が起こると、橋下知事は(1)学習指導要領に準じた教育の実施(2)朝鮮総連と一線を画す(3)財務情報の公開(4)金正日総書記らの肖像画を教室から外す、の4項目を補助金支給の要件とした。今年3月、朝鮮学校側の回答書を受けて大阪府は、もともと肖像画を掲げていない初・中級学校への補助金継続を決める一方、大阪朝鮮高級学校については、肖像画と「朝鮮現代史」の教科書を問題視し、同校と同校の生徒に対する補助金約1億円の不支給を決めた。11年度の不支給も決まっている。

 橋下知事の定めた「ルール」は、実際の教育現場や補助金が支給されてきた歴史的経緯をまったく無視しているばかりでなく、非常に恣意的で一方的、非民主的なものであるといわざるをえない。さらに、補助金が支給されている初・中級学校の職員室の肖像画もあらたに問題視されはじめ、今年度補正予算では継続審議とされた。そして、12月9日には橋下知事の後継である松井知事が該当する初・中級学校8校(全9校中)への補助を見送る方針を明らかにした。







千葉県







 千葉県は、県内1校の朝鮮学校に対して、2010年度は562万円を予算計上していた。「無償化」除外問題を受け、いったん支給を保留したが、10年度分については、予算どおりに支給された。しかし、朝鮮学校財政の不健全を理由に、11年度分の予算計上を見送った。学校の財政の不健全を指摘しながら補助金を打ち切るのは、明らかに矛盾である。そもそも、朝鮮学校の「財政の不健全」の原因として、日本の私立学校(いわゆる「一条校」)とのあいだに、補助金や税制上の大きな格差があることを見逃してはならない。







埼玉県







 埼玉県は「私立学校運営費補助金」として、埼玉初中級学校に対して、2009年度には897万円を支給していた。しかし、今年3月に10年度分の「保留」を朝鮮学校側に通達、11年度も予算計上はされているものの、停止状態が続いている。埼玉県総務部長は昨年12月の県議会で、当該補助金が「こうした子供たちが通う学校の経営安定に資する補助金として教育条件の維持向上、さらには保護者の経済的負担の軽減など、少なからず役立ってきたものと考えて」いると答弁している。それにもかかわらず、今回の停止理由として、「学校の財政が健全でない」ことがあげられている。千葉県の例と同様、矛盾している。







宮城県







 宮城県は、県内1校の朝鮮学校に対して、2009年度は154万円を支給、10年度は152万円、11年度も162万円が予算計上されていた。しかし、昨年11月の「無償化」審査凍結を受け、10年度の支給を停止した。今年3月、11年度以降の支給打ち切りが伝えられたが、東日本大震災を受け、10年度分については「人道的見地」から予算どおり支給されることとなった。宮城の朝鮮学校は、地震の被害によって校舎は大破し、寄宿舎での授業が余儀なくされている。また地震直後には学校を開放、避難所としても機能した。震災後の混乱のなかで予算に反する不支給を決め、不支給を前提に10年度分のみを「人道的」に支給するという態度は、まさに「非人道的」で、非難されるべきである。

 宮城県は不支給について、「国際情勢などを総合的に判断した。県民の理解が得られる補助金に見直す」としているが、学校への補助金支給と国際情勢は別問題である。また、「県民の理解」というのも実体があいまいで、かつ「県民の理解」じたいが補助金支給の要件として適当なのか、疑問の余地が大いにあるだろう。







三重県







 三重県では、四日市朝鮮初中級学校に対して「私立外国人学校教育振興補助金」として毎年300万円を支給してきた。2011年度も予算計上がされているが、学校の土地と建物が担保となっている債権の焦げつきを理由に、今年6月末以降、補助金の支給を保留している。県の担当者によると、保留の判断は首長や議会ではなく、行政によるもので、「交付要領」の条文に則った措置であるという。担当者は否定しているが、明らかに各地の補助金凍結の流れのなかに位置づけられるものである。







神奈川県







 神奈川県は、県内5校の朝鮮学校に対して、2009年度は約7200万円の補助金を支給した。しかし、「無償化」除外問題と関連して、昨年12月に支給されるはずの補助金をいったん留保した。県は朝鮮学校を訪問、教育内容に関する質問を行い、学校側が歴史教科書から「日本当局は『拉致問題』を極大化」という記述を削除することで、補助金約6300万円の支給が決まった。補助金の支給について、外国人学校の教育内容への介入を条件とすることは、極めて不当である。







3.外国人学校への教育援助







 以上、今回の補助金停止問題について述べてきたが、ここで公費による外国人学校への教育援助の来歴をたどっておきたい。「高校無償化制度」は、外国人学校に通う生徒に対して国費からの教育援助が行われるという点で画期的であるが、原則として外国人学校、とりわけ朝鮮学校に対しては国費を出さないという日本政府の姿勢は、1965年12月の文部次官通達にさかのぼる。そこでは、「朝鮮人としての民族性または国民性を涵養することを目的とする朝鮮人学校は、わが国の社会にとって、(正規の学校としては勿論)各種学校の地位を与える積極的意義を有するものと認められないので、これを各種学校として認可すべきではない」とされた。こうした文部省の方針にもかかわらず、各種学校の認可を求める運動と朝鮮学校への社会的関心の高まりを背景に、各地の都道府県知事は朝鮮学校の各種学校認可を進めた。そして1975年までに、朝鮮大学校を含むすべての朝鮮学校が各種学校として認可を受けるにいたった。また1970年以降、都道府県による補助金支給が続々と始まり、1997年に愛媛県が補助金支給を開始したことで、朝鮮学校の所在するすべての都道府県での補助金支給が実現した。(注1)

 しかしながら、外国人学校への公的助成は極めて不十分であるといわざるをえない。例えば、東京都では、「一条校」である私立高校に支給される一人当たりの助成額が36万6千円であるに対して、外国人学校への支給額は、一人当たり1万5千円にすぎない(2009年度)。また、公的助成とは少し異なるが、一部の各種学校には適用される税制上の優遇措置から、朝鮮学校や中華学校が除外されているという問題もある。 (注2)

 このような差別的処遇に対しては、国際機関から何度も是正勧告が出されている。2010年3月の国連差別撤廃委員会から出された勧告では、パラグラフ22で「子どもの教育に差別的な影響を及ぼす行為について懸念を表明する」として、「(d) 締約国に居住する外国人及び韓国・朝鮮系(Korean)、中国系の学校に対する公的支援や補助金、税制上の優遇措置に関する異なる扱い」をあげている。また、「教育差別禁止条約」への参加についても言及がされている。このほかにも、「国際人権規約」や「子どもの権利条約」など日本が加盟している国際人権条約のなかで、差別なく教育を受ける権利や自らの民族の文化を学ぶ権利が謳われている。朝鮮学校の「無償化」からの除外、そして従来行われてきた自治体からの補助金停止は、明らかにこうした流れに反するものである。







4.補助金停止問題の性格と残される課題







 最後に、補助金停止問題の性格と、今後の課題について述べていきたい。第一に、「無償化」除外問題を発端とする一連の問題は、端的に「差別」の問題である。そこに、「植民地主義」や「同化政策」の継続という背景があることはいうまでもないが、歴史的経緯や実際の教育現場が無視されたまま議論が進み、挙句の果てに、子どもたちにはまったく関係のない朝鮮半島での軍事的衝突までをも口実に使って、平等に保障されるはずの教育権を揺るがしていることの意味は重い。第二に、補助金停止が、地方自治体の歳出削減の流れのなかにも位置づけることができる。大阪、千葉、埼玉では、「財務情報」や「財政の健全さ」を要件としているが、首長の独断によって、数十年にわたってなされてきた教育助成が停止されているのである。また、それを一定受け入れてしまう世論があることも見逃せない。第三に、ナショナリズムの高まりと結合する危険性がある。震災以降、「がんばろうニッポン」などといったスローガンがよくみられるが、それと反比例して、「朝鮮学校バッシング」が高まってはいないか。朝鮮学校への激甚災害法指定について、自民党から「日本人の子弟が多く通う各種学校よりも朝鮮総連系の学校が優先されることになる。筋が通らない」といった批判が出た(注3)ことは典型例だ。教育権の普遍性を原則として確認しておかなければならない。

 高校無償化制度によって、外国人学校が国家法レベルで「高等学校の課程に類する課程を置く」と認められることは、ほかの教育上の差別的処遇の是正にとっても大きな意味をもつ。しかし、実際問題として、都道府県から「無償化反対」の決議が数多くあがっていることや、補助金が次々と打ち切られている動きは、予断を許さない。そのほかにも、「在日特権を許さない会」などの朝鮮学校への攻撃はけっして許されるものではない。外国人学校への法的保障を求める運動と並行して、無根拠な排外的言説を規制していくことも重要である。


(注1)『人権と生活』2005年11月号
(注2)朴三石『外国人学校』(2008年、中公新書)、『教育を受ける権利と朝鮮学校』(2011年、日本評論社)などを参照。
(注3)2011年9月24日産経ニュース。因みに、「日本人の子弟が多く通う各種学校」とは自動車学校や学習塾等を指し、「高等学校の課程に類する課程を置くもの」はない





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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111214-00000555-san-soci

「授業抜き打ち検査 実施を表明」埼玉・上田知事


朝鮮学校に対する補助金支出をめぐる問題で、埼玉県の上田清司知事は14日の県議会本会議で、補助金を支出する判断材料とするため、「授業で拉致問題が教えられているか、事前通告せず抜き打ちで複数回確認する」と述べた。

 埼玉県では平成22年度、朝鮮総連系の朝銀信用組合の破綻で学校施設が整理回収機構(RCC)に仮差し押さえされていた(9月に和解)ことを理由に補助金を凍結。23年度分の補助金支出は未定となっている。

 同県は2月、教科書に拉致問題の記述がない朝鮮初中級学校でも拉致問題を教えるよう要請。11月には学校側から「中3の社会科の授業の中で日朝平壌宣言を取り上げる際に、拉致問題を『あってはならない非人道的行為』と教える」などと説明があったという。

 上田知事は「通訳を同行し、授業の実態を担当課に確認させる。他の歴史事象の問題も含め、事前通告せず複数回確認する」と答弁した。

 同県によると、今回の判断は、神奈川県が朝鮮学校の授業を事前に通告した上で視察し、交付方針を示したことに「だまされている」と批判があったことを踏まえたためという。神奈川県では11月に拉致問題に関する授業を視察。黒岩祐治知事が「誠意をしっかり受け止めた」として、今年度分の補助金交付を決定していた。

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http://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/c49cc88a4a42f22dd7c0140ab61ebde2

「朝鮮学校補助金は法的根拠がある」

日刊イオ ブログより