たんぽぽ舎さんからのメールの転載です:
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●「もんじゅ」再開は3月23日の時点では、3月末はムリで、
4月にズレこんだと新聞・テレビでは報道されています。
●15年ぶりで「もんじゅ」の動きが新聞・テレビに多く出ています。
たんぽぽ舎は「もんじゅ運転再開に反対する声明」を出し、「核開
発に反対する会」も「もんじゅを廃炉に・声明」を出しました。
たんぽぽ舎に新聞社の取材もあり、多くの動きが出てきています。
先日、小林圭二さん(元京大原子炉実験所)たち25名の「もんじゅ」の
運転再開に反対する「緊急声明」をお送りしましたが、その説明
篇(4頁)を読みたいの声もいくつか寄せられたので、今回、お送り
します。
この説明文は、原子力機構のいう「点検や運転再開準備の実態は万
全」にはほど遠い実状を7つの理由を挙げて述べるなど、よみごた
えある文章です。「もんじゅ」の第一人者・小林圭二さんらの文です。
やや長いですが、ぜひご一読下さい。
●3月6日(土)のたんぽぽ舎の第22回総会の方針は、『事故の危険の
高い原発について優先的に取り組もう』です。
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緊 急 声 明(説明篇)
「もんじゅ」の運転再開に反対する
14年以上にわたり停止していた福井県敦賀市にある高速増殖炉「もんじゅ」が
、
3月中にも運転再開されようとしている。これほど長期間停止した後に運転再開
された例は、数多い軽水炉でも世界に1例しかなく、高速増殖炉では皆無である
。
この停止中にもトラブル等の発生が相次ぎ、予定された運転再開時期は四度も延
期されてきた。このような「もんじゅ」の運転再開は危険であり、再び事故を起
こす恐れが大きい。さらに、「もんじゅ」運転の意味、そして高速増殖炉開発自
体には根本的疑問がある。したがって、私たち学者有志は「もんじゅ」の運転再
開に強く反対する。
以下、反対理由をより詳細に説明する。
理由
1、点検や運転再開準備の実態は万全にはほど遠い
「もんじゅ」の事業者である動力炉・核燃料開発事業団(事故当時、現日本原
子力研究開発機構、以下原子力機構)は、1995年に事故を起こした後、事後原因
の調査、安全性総点検、再発防止等の改造工事、組織や安全体制の見直し、所管
官庁や規制当局によるチェックを経て、点検や機器・系統の試験等の準備を終え
、
運転再開可能になったとしている。しかし、その実態を知るにつれ万全にほど遠
いことが明らかとなった。
(1)点検不可能な個所が数多く残されままであり、大幅に点検を省略したもの
がある
① 長年の停止中に発生あるいは進行しているかも知れない配管、特にナトリウ
ムを抜き取ったり工事で切断等開口された冷却系等の配管内面は、開口部近辺を
除き調査が不可能で実施されていない。
② 蒸気発生器(蒸発器及び過熱器)では、伝熱管に穴が開くと、加圧水型軽水
炉の場合とちがい高圧の水もしくは水蒸気がナトリウム中に噴出し、激しいナト
リウム・水反応が起こる。しかし、伝熱管の探傷装置の精度は極めて不十分であ
り、特に亀裂や小さい孔は検知できず、傷が貫通し同反応が起こるまで検知でき
ない。
③ 燃料集合体は、炉心燃料体、ブランケット集合体それぞれを代表し1体ずつ
しか検査されない。これでは少なすぎ燃料の健全性を確認したことにならない。
(2)安全性総点検にもかかわらず、多くの点検漏れが見つかった
① 施設内の到るところに取り付けてある接触型ナトリウム漏えい検知器が何百
個も、最初の設置以来点検されていなかった。これも、たまたま「誤警報」の発
生という偶然 により発見されたにすぎない。
② 原子炉室からの排気ダクト(放射性物質を含む可能性のある空気の排気通路)
の腐食による穴あきや減肉が放置されていた。
③ これら以外にも必要な点検や改善の漏れがないとする保証はない。
(3)事故時に問題となった組織の旧体質が改善されたとは思われない。
上記「誤警報」発生時に定められた連絡を遅らせたり約束していた連絡を行わ
ないなど、連絡不備や過去のトラブル未報告などの問題が相次いだ。
2、「もんじゅ」は実用炉に結びつかない
(1)日本が描く高速増殖炉の実用化像は、「もんじゅ」とまったく異なる
「もんじゅ」の建設費が軽水炉の約5倍と高いことから、高速増殖炉を実用化
するためには設計を根底から変えなければならない。
現在描かれている実用化像は、出力が「もんじゅ」の5倍以上と大きくなるた
め冷却の失敗による暴走の危険性がさらに高まるにもかかわらず、冷却系ル-プ
数を3ル-プから2ル-プに減らし、代わりに配管口径を「もんじゅ」の1.5
倍に拡大するなど「もんじゅ」が持っている安全余裕を大幅に削る。さらに、機
器間を逆U字形配管で結び、中間熱交換器と主循環ポンプを一体構造にし、蒸気
発生器伝熱管を二重管構造にするなど、全体が多くの未知の新技術で構成される
。
これら新技術が果たして実用になるのか、経済性改善に結びつくか不明である。
(2)「もんじゅ」はもはや原型炉でない
「もんじゅ」は、当初、高速増殖炉開発における実用化2段階前の原型炉とし
て建設された。原型炉は、実用炉像に似せ完結されたプラントとして作られ、そ
れが工学的に成立することの確認を目的とするものである。しかし、実用化像と
して「もんじゅ」とまったく異なる型が描かれることになり、「もんじゅ」の高
速増殖炉開発における位置づけは宙に浮いてしまった。実態はもはや原型炉では
ない。
(3)「もんじゅ」の運転は意味が無く、無駄である
運転再開の目的として、「発電プラントとしての信頼性の実証」と「ナトリウ
ム取扱技術の習得」が挙げられている。しかし、「発電プラントとしての信頼性
の実証」は、実用化像と大きくかけ離れてしまってはあまり意味はない。「ナト
リウム取扱技術の習得」は、「もんじゅ」でなくとも実験炉「常陽」や代替設備
で可能である。
それ以外に、燃料や材料の照射試験が目的に挙げられることがあるが、それも
照射実験装置を備えた実験炉「常陽」で可能である。
「もんじゅ」の運転再開は、たとえ高速増殖炉開発推進の観点に立っても意味
がない。
3、高速増殖炉は危険が大きく、経済的にも成り立たない
(1)「もんじゅ」(高速増殖炉)は軽水炉にもない多くの危険性をもつ
①暴走しやすい
冷却材が沸騰して気体の泡になると、核分裂連鎖反応がより盛んになる性質が
ある。また、燃料棒配列が乱れたり溶融したりして互いに近づいたり合体したり
すると核分裂連鎖反応がより盛んになる。これらの性質が正のフィ-ドバック効
果となって核分裂連鎖反応をより加速し暴走事故に到る危険性がある。一方、軽
水炉では、一般に、いずれの場合も核分裂連鎖反応が減衰する方向に向かう。
②大量に必要な冷却材として危険物のナトリウムが使われる
ナトリウムは水に触れると激しく反応し、その衝撃力が機器を損傷したり、爆
発しやすい水素や腐食性の苛性ソ-ダを発生して爆発や機器の破損の原因となり
うる。
運転中のような高温のナトリウムが漏れて空気に触れると、燃焼し火災事故に
つながる(1995年の「もんじゅ」事故)。これまで世界で138件(アメリカを除く)
のナトリウム漏えい・火災事故が報告されている。ナトリウムがコンクリ-トに
触れると激しく反応し、コンクリ-トの強度を失わせる。燃料を直接冷やす一次
冷却材ナトリウムは、強い放射能を帯びる。ナトリウムは不透明なため、燃料操
作など原子炉内作業を直接目で確認することができない。
③燃料のプルトニウムは、放射能毒性が非常に強い。
④地震に弱い構造
冷却材のナトリウムは水とちがい熱しやすく冷めやすいため、熱衝撃による破
壊を防ぐため、配管や機器の肉厚を薄くしなければならない。結果として地震に
弱い構造にしなければならない。
(2)高速増殖炉は経済的に成り立たない
①巨額の建設費
危険性が大きいため安全対策に多額のコストを要する。実用炉の五分の一以下
の規模に過ぎない試験段階の原型炉「もんじゅ」でさえ、直接の建設費だけで
5886億円(「事業仕分け」時の予算担当部局資料による。以下同じ)を要した。
これを単位出力当たりで比較すると、軽水炉の約5倍に相当する。
②多額の設計関連費、高額の維持管理費を要する
これまで「もんじゅ」の設計関連費用と維持管理費に、国費だけで約3200億円
が費やされた。
③停止中でも高額の維持管理費
「もんじゅ」停止中も、維持管理費に毎年約200億円、1日約5500万円を支出。
運転再開されるとさらに上積みされる。2010年度予算は233億円
④これ以外に燃料関係(製造、輸送、管理、核不拡散保障措置)の費用が必要
⑤実用化への長期にわたる巨額の開発費
実用化をめざせば、今後数十年にわたり、高速増殖炉本体だけでなく高速増殖
炉用核燃料サイクルの開発にも多くの未知技術開発費が継続的に必要。その額は
計り知れず、2010年度予算では203億円
4、核兵器製造を容易にする「もんじゅ」の運転
「もんじゅ」を運転すると、燃料を取り囲むブランケット部に、核分裂性物質
であるプルトニウム239が約98%占める超核兵器級プルトニウムが溜まる。通
常の使用済燃料とちがいブランケット部分は核分裂生成物(死の灰)が少ないため
、
再処理が極めて容易である。ブランケット部分を選択的に取り出し再処理するこ
とによって、核兵器に最も適した超核兵器級プルトニウムを容易に入手すること
ができる。その超核兵器級プルトニウムを、「もんじゅ」は年間約62キログラム
生み出す。これは核兵器12~30個分にあたる。
「もんじゅ」の運転再開は近隣諸国はもとより世界の核情勢に緊張をもたらし
、
国際道義上許されることではない。
5、世界はすでに高速増殖炉開発から撤退
日本に先行して開発を始めた各国はすべて、約20年ほど前までには高速増殖炉
開発から撤退した。軽水炉に比べても格段に危険性が大きく、経済的に成り立つ
見通しがなく、核兵器拡散につながる恐れが大きいことが撤退理由となっている
。
①米国
核拡散の恐れから1977年に原型炉(「もんじゅ」と同格)建設を凍結、炉心大事
故(炉心崩壊事故)に関する安全論争をへて、最終的には経済性への疑問から、
1983年原型炉クリンチリバ-の建設を中止、高速増殖炉開発から撤退。
②英国
蒸気発生器の大事故を経験後、1988年、経済性と将来の実用化に対する疑問か
ら、当時のサッチャ-政権が運転中の原型炉PFRの廃止を決定、1994年、同炉
の停止をもって高速増殖炉開発から完全に撤退。
③フランス
1991年制定の「放射性廃棄物管理の研究に関する法律(バタイユ法)」によっ
て高速増殖炉開発からの撤退を決定。稼働中の原型炉フェニックスと世界唯一の
実証炉ス-パ-フェニックス両炉は、高速増殖炉から余剰プルトニウムの焼却お
よび長寿命放射性廃棄物の核変換(核分裂させより短寿命放射性廃棄物に変換)研
究用の試験炉に変更。その後、ス-パ-フェニックス炉は経済的理由から1998年
に停止、廃炉作業にはいった。フェニックス炉も、2009年に廃止された。
近年、2015年の稼働を目指すとして原型炉建設の話しが浮上しているが、これ
も、放射性廃棄物対策が目的の高速炉であって、電力源を目的とする高速増殖炉
ではない。
④ドイツ
1985年、原型炉SNR-300が完成したものの、大事故(炉心崩壊事故)の可
能性と影響をめぐる安全論争が沸騰。1991年、原子炉に燃料を一度も装荷するこ
となく廃炉を決定。高速増殖炉開発からも撤退。
⑤ロシア(旧ソ連)、中国
原型炉BN-600が稼働中だが、米露合意による解体核兵器から回収された
余剰兵器級プルトニウム処分のため一時的にプルトニウムが使われた以外、燃料
には濃縮ウランが使われており、高速増殖炉ではない。ロシアの援助で建設中の
中国の実験炉も同じ。
⑥インド
実験炉が稼働中だが、建設中の原型炉も含め、民生用施設を対象とする国際原
子力機関(IAEA)の査察対象から除外された。したがって、核兵器製造も念頭
に置かれた原子炉と考えられるので論外である。
6、増殖は幻想、増えかたが遅すぎて無意味な「増殖」
高速増殖炉は燃えた量以上の燃料を生み出す「夢の原子炉」と言われてきた。
もんじゅは1.2倍が目標とされている(増殖比)。しかし、燃料の増える速度
は非常に遅い。同じ高速増殖炉をもう一基立ち上げるため必要な燃料の量がたま
るまでの年数(倍増時間)は、50年から90年にのぼる。再処理過程などで回収でき
ないロス率が大きくなれば、倍増時間はどんどん長くなる。これではいつまで経
っても二基目の高速増殖炉さえできないことになり、増殖の意味はなくなる。
軽水炉の使用済燃料から再処理して取り出したプルトニウムは、国際的な約束
によって溜めておくことができない。この点からも、高速増殖炉実現の見込みは
ない。
結語
14年以上の停止中に、「もんじゅ」は機器等の劣化も進行し、いまだ気がつか
ない欠陥も少なくないと思われる。この間、事業主体の「原子力機構」でも経験
者の多くが去っていった。準備中に発生したトラブルの数々やその対応を見ても
、
「もんじゅ」が安全に運転再開できるとは思われない。
「もんじゅ」の存在意義はすでに失われている。国家予算が厳しいなか、救済
すべき社会問題が山積する日本の現状で、実現さえ不明な数十年も先のことに、
今から毎年、運転・維持管理に巨額を要する「常陽」と「もんじゅ」の2基とも
抱えて動かすことは、あまりにも無駄であり許されることではない。
高速増殖炉は、原発としては現在稼働中の軽水炉よりずっと早く開発が始めら
れた。しかし、世界が半世紀以上かけも実用にならなかった。残った国は、事実
上、日本だけである。しかし、数十年先といえども実用化の保証はまったくない
。
日本一国でもやれるとする独善的とも思われる姿勢が大きな禍根につながらない
か懸念される。
「もんじゅ」の運転再開には、重ねて強く反対を表明する。
2010年3月11日
高速増殖炉「もんじゅ」運転再開に反対する学者有志一同
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