主食という概念がある民族は案外少ない―少なくとも欧米には―と以前から聞いていましたが、映画「キングコーン」を観ると、ほんとうに。

 いや、アメリカ人の食は、以前にも増して、その摂取カロリーに占める穀物の比率が下がったのかも。ハンバーガーでお腹がいっぱいになる、そのとき、満腹感はパンで得られているのではなく、肉によって。もっと言うと肉に含まれる脂によって。

 肉に脂がそれほどまでに含まれていなければ、例えば粗い計算をすると、ハンバーガーを2個食べないと満腹にならないところを、1個で済んでしまう、それに近いことがあるのではないかと。もっと言うと、アメリカで育てられている牛の肉を肉と言っていいのかどうか。

 肉とは何か。それは「筋肉」で、たんぱく質からできているはず。

 日本の牛の育て方。霜降りが珍重されてきた。これ肉の組織の中に脂が混じるようにするもの。

 が、どうもアメリカの牛の肉への脂の混ざり方といったら、霜降りどころではないような印象。

 医師が出てきて、筋肉に本来こんなに脂肪は含まれないはずと。

 なぜそんなに脂肪が含まれるかというと、草の比率が異常に低い、コーンの比率が異常に高い、そういう飼料を食わせて、しかも狭いところに詰め込んで育てるので運動できない。

 畜産農家も、そんな育て方はよくないとわかっているのです。

 なぜそういうことになるのか。コーンを作りすぎている。

 意図的に大量に作っているのかどうかは不明。とにかく、作りすぎたので、何かに

使おう、飼料だけでなく甘味料にも使おうじゃないか、そういった発想なのです。

 ここ2~30年、“先進国”での砂糖消費が減っているらしい。その原因は、健康志向と聞いたこともあるけれども、そうでなく、アメリカのコーンが砂糖にとってかわっただけでは?

 そんなにたくさんコーンを作っても、コーン農家は全然豊かではないのです。それどころかやめていく人が多い。小規模農家がつぶれ、だんだん大きな資本が土地を

獲得していくのです。

 コーン農家は経済的に豊かでないだけでなく、精神的にも鬱屈しているのです。

なぜならそのコーンは多くの場合、まずくて食べられないものだからです。なぜまずいのかというと、飼料用の品種だからです。

 ちょうど、原発で発電後燃料にはならないウラン238ができすぎたので弾にしよう、兵器を造りすぎたので戦争をしようというのと同じ。

 ひとごとではない、日本でも、○ク○ナ○ドが、○ゴ○と組んで、小学校で“食育”を提案しているらしい。野菜は缶入り・パック入り野菜ジュースで摂る。健康的!