日本生協連は数年前に、経団連さえ言わなかった、米の関税を下げてどんどん輸入しようと“提言”しました。都市の消費者の利益のためだというのです。

 この組織の一部の人たちはこう考えています:

 安いものは輸入しよう、輸入だって生産の場を“管理”していれば別に安全ではないとは言えない・・・

 

 でも輸入品が安い理由は、輸出国の労賃が安さ。買うことが果たして輸出国の国民の幸福につながるのか。

 また日本国内で、安い輸入品を売ると、競合する産品の日本の生産者を圧迫することになる。

 農業生産物の輸入については、輸出国の水を奪うことにもなる。

 グローバルという語自体は彼らの辞書にあるらしいが・・・ 


 『現代たべもの事情』山本博史 岩波新書 の転載です:

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 日本生協連は、100%出資会社である日本協同組合貿易株式会社(日協貿)をつうじて、1991年、タイに養殖エビ冷凍のためのごうべん会社(コープフーズ・タイランド)を設立した。合弁相手んは、日本マクドナルドむけの魚ブロックや魚フィレの冷凍事業にとりくんでいるFCという華人資本と日東デルマールが選ばれた(その両者で資本金の60%をもち、日協貿は15%)。

 この合弁冷凍工場が本格稼動した1991年6月ごろから、工場のあるサムットブラカン周辺のエビ養殖場は、4章でふれた水質汚染によるヘドロが深刻になり、その多くが閉鎖せざるをえない状況になった。[中略]

 タイの海岸のヘドロ発生による水質汚染や取引先の倒産は、日本の生協による)直接の責任ではない。しかし、その後もタイ湾内の広い地域に汚染は拡大しており、湾内全域で水産資源が枯渇しそうであるといわれるなかでの、こうした養殖エビ冷凍・輸入事業を、なぜ日本の協同組合がやらなければならないのかを、タイの人びとに納得させることはむずかしい。

 日本の生協組合員はどうか。

 生協では、県域をこえた事業連合を強化して、量的結集をはかり、「価格が従来の半値に近い商品」を作り出す、あるいは、「偏狭な食糧ナショナリズムの立場はとらない。輸入物は危険、国産は安全といった短絡的な立場にもたたない」とか、「供給はローカルに、仕入れはグローバルに」とも強調するリーダーがいる。この発想は、日本国内の農林水産業の「存亡の危機」といわれる今日において、その再建を軽視して、「半値にしても倍もうかる」という、アジア各国からの輸入を優先することにつながるものといえる。