自分の好きな作家の中に仙川環さんがいます。大学時代に医学を学んだ変わり種の作家と言えそうです。

これまでに読んだ作品を整理してみたいと思います。

初めて読んだのは2008年でした。

2008年読了
繁殖
舞台は幼稚園。食中毒の原因はアゾラという植物に含まれているカドニウム。この作品の特徴は、登場人物が全て善人だということです。悪人がいないというのは気持ちの良いものです。悪気なく事件を起こしてしまった犯人に対し対処に迷う人間模様。良し悪しの判断は難しいですね。一生秘密を背おって生きるのもひとつの道かと思わされます。

2009年読了
治験
ハードボイルド的なタッチの部分もあり、仙川環の作家としての広さを感じました。一生懸命頑張ることを否定していた主人公が結局は誰よりも頑張るという展開。一見駄目そうな人物として描写されているが、実はかなりの実力者という点が他の作品と同じ感じです。

2010年読了
無言の旅人
植物状態になったら自分のためのみならず家族のためにも死なせてくれという尊厳死を課題としています。ちゃんと議論しようと問題提起しているだけでなく、推理小説風かつドラマティック的に物語が展開されており、相変わらずの面白さでした。登場人物も誰一人として悪い人間はいないところが、さわやかです。

2010年読了
終の棲家
老人介護の問題を取り上げています。自宅での介護には、お金の問題、家族の負担が大きく、何と、先行き短い老人は治療を止めるべきか論まで踏み込んでしまっています。主題とはズレますが、サラリーマンの有り様についても考えさせられました。出世か、やりたいことをポリシーをもって進めるべきか?

2011年読了
逃亡医
推理物であって人情物です。
ある医者のちょっとした勘違いで逃げ回ることになった主人公。最後は覚悟を決めて出てくる。実は誤解だったことが判明し一件落着。
「生きなおすということは、過去に傷つけてしまった人たちに、まっすぐ向き合うことだ」との名セリフにジーンときました。

2011年読了
誤飲
短編集でした。

2011年読了
潜伏
美容クリニックに通っていたおばの死因はアルツハイマーとの診断。実はプラセッタ(牛の骨盤)によるヤコブ病だったのです。サスペンス物。

2011年読了
人体工場
癌に効くという、たんぱく質を作る為に人の身体を使う。画期的は技術だという。人に害のない物質を注射し尿から採取するのです。主人公は、この計画に巻き込まれ命を落としかけたが、いろいろな人間模様に何が罪何が良いことなのか迷うのであった。

とりあえず8冊です。2008年から2011年にかけて読みました。どれも傑作です。

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