「戦勝国」史観との対決 1 | 産経新聞を応援する会

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歴史と文化の複合攻撃    http://ironna.jp/article/882  より転載


 西尾
 今日はまず、お二人に問いかけをさせていただきます。歴史問題で日本が苦しめられている。靖国神社や慰安婦問題でアメリカ、中国、韓国から謂われなき罪で批判され続けていて、日本はそれに毅然と反論できないでいる。その構図は国際政治の文脈で語られることが多いのですが、少し角度を変えて考えてみたい。
 韓国はあまりにも荒唐無稽な自国自慢をします。日本語の仮名は韓国産だ、剣道も柔道も韓国起源だと呆れ返るようなことを言い出す。相撲も歌舞伎も韓国が日本に教えたとさえ言っています。対日本だけではなく、孔子も孫文も韓国人だと言い出して中国人を怒らせたこともある。ついにピッツァもイタリア産ではなく韓国由来だそうです。
 その中国も中国で、キリスト教は中国起源であるとか、『旧約聖書』も『新約聖書』も墨子から発しているという説もあります。十九世紀には世界の文化文明はほとんどが中国起源であるというお国自慢が広がったことがありました。中国人はまだ大人ですから、表では大声で言わなかったり、それをきちんと否定する人が出てきたりします。韓国の場合は否定する人は袋叩きに遭うらしいですから、救いがない。ただ、腹の中は両国はよく似ている。
 アメリカはどうか。今や自らこそがキリスト教文明の中心であり、ヨーロッパ文明の継承者だと信じていて、ヨーロッパもそれを認めている。だから堂々と「人道に対する罪」などという概念を持ち出し、人類の名において世界を裁くということに躊躇しない。
 一方のわが国は、もともと謙虚で、そういう原理主義をとらない。戦前から文明を他国に学ぶことを隠していない。第二次世界大戦で敗北した後、戦争裁判の結果をすんなり受け入れたのはそのせいでもある。賠償もすませそれなりの償いを完了させて講和条約も結んだ。にもかかわらず、というか今述べた国柄のせいか、どこかで罪悪意識を抱き続けてきました。これは日本人に罪の意識を植え付け、二度と立ち上がれない国にしようとしたGHQ(連合国軍総司令部)の「ウオー・ギルト・インフォメーション・プログラム」によって洗脳されたせいでしょうね。占領終了後も日本を「弱い国」のままにしておきたかった左翼勢力に騙されてきただけなのに、なかなか吹っ切れない日本人が多い。
 アメリカが日本との戦争に勝ったこと、中国や韓国が戦勝国の側に自分勝手な理屈で立っていること、あるいは戦争の犠牲国として日本より国際政治的に優位に立っていることと、文明の起源は自分たちにあるといって偉そうに日本に押しかぶさってくることとは本来は別の話です。後者に関しては、われわれはきちんと文化論的対応や反論ができます。先述したような馬鹿馬鹿しい自国自慢は放っておけば消えていくことも理解しています。
 日本対西洋というドラマは、長い付き合いの中で文明論的に成熟していて、西洋人は日本が古い独自の文明を持つことを理解していました。また日本人はある時代には自らを東洋の代表としてみて、東洋対西洋という対立図式さえ堂々と語っていた。
 ところが中国人と韓国人には、西洋との精神的な対話を通して、自らを分析することなど考えもしません。ことに韓国人は西洋との対話の伝統さえあるように思えません。一方的に自らが優越していると思っています。日本は優越しているなどと考えず、西洋とは異質であるが、そこから学んで自分のものにもしなければならない西洋文明の底深さを自覚してきました。
 日本はそうしてバランスをとりながらやってきたのに、突如として中韓の異様な日本攻撃が始まった。なんの根拠もなく自分たちを高みにおいて日本に上から目線でものを言う。そこに戦勝国、戦争の問題を重ねている。文明の問題と戦争の問題とは別なのに、それが折り重なって日本に二つのウソが覆い被さってきていて、日本人はたいへん分かりにくい局面に立たされている。区別すべきはきちんと区別すべきです。日本が古代中国から影響を受けたのは韓国経由ではありません。韓国経由はごく初期だけです。宋以後の中国からはさして決定的な影響を受けていません。戦争に関しては、日本は韓国とは戦争していません。日本も敗れて韓国も敗戦国なのです。日本が中国と戦ったのは国民党軍であり、中共軍ではありません。中華人民共和国は日本がアメリカに太平洋で敗れて、大陸を撤退してから、その後で大陸の覇権国家になったのです。日本人はここで一度、日本人としての自覚、歴史の自覚を突き詰めて考え、対決すべき時が来ていると思います。

 宮崎 中国と韓国が似ているところは、まったくのジコチューで独善的であることです。韓国は朝鮮半島の食いっぱぐれが日本だと考えている。また見栄っ張りで、映らないのにサイズだけは大きいテレビを置いたり、外箱だけで中身のない文学全集を本棚に飾ったりしている。一方の中国は、史上最大のベストセラーが清朝末期に公刊された『厚黒学』だというお国柄。腹黒くなければ出世しないという人生観に染まっているのが中国人です。
 この中国人と韓国人の共通点は、山賊の論理です。「人のものは自分のもの。自分のものは自分のもの」。西洋との違いといっても、西洋もアメリカも中東も一神教ですから、自分だけが正しいと考えるのも論理的には分からないでもない。ただ中韓は一神教でも何でもないんだけれど。

 西尾 朱子学は一神教に似ています。

 宮崎 一神教は他を認めませんが、朱子学の中では、さまざまな学派が百家争鳴、という時代もあります。彼らの規範はやはり中華思想でしょう。国際秩序を守れと批判されても、彼らは彼らで中華秩序という独自の国際秩序を守っているという意識だと思います。

 西尾 困ったものですが、最近は「鄭和の艦隊」を持ち出して、現在進めている海洋覇権戦略を正当化しようとしていますね。

 宮崎 六〇〇年前の明代に、東南アジアからインド、アラビア半島さらにはアフリカにまで至る航路を開いたのが「鄭和の艦隊」。習近平は二〇一四年九月にモルディブとスリランカを訪れた際、「鄭和がモルディブを訪れ、その答礼の使者がモルディブから中国に来た記録がある」などと発言しました。スリランカでも同じことを言っています。

 西尾 「鄭和の艦隊」は平和主義だった。だから自分たちも軍事覇権や軍国主義とは無関係だというようなことを言って回っている。

 宮崎 中国はモルディブとスリランカを「真珠の首飾り戦略」に組み入れようとしています。「真珠の首飾り」とは、南シナ海からインド洋を中東へと至る中国のシーレーン戦略で、沿岸各国の港湾インフラ整備を支援し、自国の艦船が寄港する足場として確保しようとしています。これまでは商業目的と語られてきましたが、習近平がスリランカを訪れた前日には中国の潜水艦が初めて寄港し、軍事目的があることも分かってきた。
 つまり中国は、自分の仲間になりそうなところでは鄭和を持ち出す。日本やインドでは語らない。語っても無駄だからでしょう(笑い)。

真珠湾・アリゾナ記念館 真珠湾攻撃を受けたヒッカム基地司令部のビルには当時の弾痕が生々しく残っている =米国ハワイ州オアフ島の米軍ヒッカム基地(鈴木健児撮影)