『崩壊した竹田恒泰氏の真正護憲論批判(1)』

國體維新あづさゆみ顧問 山岸 崇


これは、憲法学者・竹田恒泰氏への公開質問状である。竹田氏よ、憲法学者として、真摯に以下の疑問にお答え頂きたい。


真正護憲論(新無効論)とは、占領憲法である日本國憲法の憲法典としての無効と、占領典範である皇室典範と偽称する法律の無効を確認することにより、我が國の正統の憲法典たる大日本帝國憲法と、(明治)皇室典範の現存を確認する憲法理論である。

占領憲法は、我が國の大東亜戦争敗戦後、GHQによる占領下において、大日本帝國憲法を、その第75條違反などの手続違反を犯し、違法に「改正」されて成立したものであって、改正手続は無効であり、よって占領憲法は憲法典としては無効であり、従って大日本帝國憲法は改正されずに、現存している、ということになるのである。

そして、では占領憲法が憲法典としては無効であれば、一体、占領憲法の法的性質は如何なるものになるのかというと、大日本帝國憲法第76條1項により、大日本帝國憲法に反しない限度で、講和條約として有効となるのである。

占領憲法は、憲法典としては無効だが、大東亜戦争の講和條約として有効である、ということである。

現下の我が國を取り巻く様々な内憂外患の根源は、悉く占領憲法たる日本國憲法と、占領典範である皇室典範と偽称する法律にある。速やかにこれらの無効確認を行い、大日本帝國憲法と正統皇室典範の現存を確認することなしには、この國難を打破することは不可能なのである。

そのような中で、真正護憲論は、従来のいわゆる占領憲法無効論(旧無効論)の諸説の様々な問題点を克服できるものとして評価を受け、近年において一定の普及を見せてきた。

しかし他方では、その普及に合わせて、様々な批判も聞かれるようになってきた。この論文では、それらの批判に真摯に向き合い、それに答え、以て真正護憲論のより一層の世人への普及と理解を進めるべく、筆を進めていくものである。どうぞ、最後までお読み頂き、真正護憲論への理解を深めて頂ければ、これに勝る幸いはない。

今回採り上げるのは、憲法学者・竹田恒泰氏による真正護憲論への批判である。竹田氏は、「憲法無効論」という、半ば誤った表現をしているが、占領憲法が無効である、という考え方に対する批判であるので、即ち真正護憲論への批判ということになる。

この批判は、インターネットのニコ生放送、『竹田恒泰の憲法論 ~「憲法はロマンだ」」:竹田恒泰CH特番』(平成25年6月21日(金)放送)で述べられていたものである。

以下、竹田恒泰氏による占領憲法無効論批判を、放送より文字起こししたものを引用し、それに対して反論を加えていく。

ーーーーーーー 以下引用 ーーーーーーー

でもですね、憲法無効論を簡単に粉砕する理屈があります。もうこれほんと簡単なことなんです。いいですか。これを聞いてまだ無効論を唱えている人は、よほどアホです。
簡単に粉砕する方法を言います。
 世界の憲法学の中で、憲法を作る過程に問題になるからといって憲法無効にする学説はありません。世界の憲法学においてですよ。世界中の憲法学において、憲法改正する、もしくは憲法を立ちあげる手続に違反があるからといって憲法を無効にする考え方は存在しないんです。
 なぜか。なぜかというと、憲法っていうものは所詮戦争の中で作られるものなんです。憲法というのは革命の中で作られるものなんです。だいたい3日とか10日で書き上げるもんなんです。平和な中でじっくり審議して合法的に立ち上がった憲法なんてどこにあるんですか。アメリカの憲法だって戦争の中で書かれたんです。中国の憲法だって内乱の中で書かれたんです。フランスの憲法だって革命で書かれたんじゃないんですか。何処の憲法も天下動乱の中で短時間でしかも素人とかが書いてるんですよ。そういうもんです。平穏の中で合法的に書かれた憲法は一つだけ紹介しましょう。何を隠そう、別に隠す必要ないんですけど、大日本帝国憲法じゃないですか。そう明治22年につくられましたね。大日本国帝国憲法。明治22年とても政治的に安定していましたよ。枢密院でじっくり議論して、内閣総理大臣の監視の中で、明治天皇の稟議を仰ぎながら審議が進められて、そして平穏裏に立ち上がった憲法。こんな平和裏に立ち上がった、あの非の打ち所のない手続を経てできた憲法なんてないです。


ーーーーーーー 引用ここまで ーーーーーーー

さて、竹田恒泰氏は、このように、憲法無効論を簡単に粉砕する理屈があり、これを聞いてまだ無効論を唱える者は、よほどアホだと言う。

そこで私は、これほどまでに占領憲法無効論を罵倒する竹田氏の憲法論を、精査してみた。その結果、氏の憲法論は、無知と虚言のオンパレードともいうべき、眼を覆わんばかりに惨憺たる代物であることが判明した。

以下は、竹田恒泰氏の占領憲法無効論批判が、如何に無知と虚言によって成り立つ、噴飯ものの代物であるかを白日の下に明らかにすべく、著すものである。

竹田氏曰く、世界の憲法学において、憲法典を制定する過程に問題があるからといって、憲法典を無効にする学説は存在しないのだ、なぜなら、憲法典というものは、所詮は戦争のなかで作られる、書き上げられるものだからだ、というのである。戦争の中で書き上げられたものを一々無効であるとしていては、世界中の憲法典は悉く無効ではないか、というのである。

つまり、竹田恒泰氏の、「憲法無効論を簡単に粉砕する理屈」の論拠とは、「世界中のあらゆる憲法典とは、戦争の中でできたものだ」というところにある。

従って、これに矛盾する事例が一点でもあれば、竹田氏の「憲法無効論を簡単に粉砕する理屈」なるものは、簡単に粉砕されてしまうことになる。

では、ここに、竹田恒泰氏の「憲法無効論を簡単に粉砕する理屈」を簡単に粉砕してみせよう。

確かに、世界の様々な國の中には、戦争の中で憲法典を制定した國もある。しかし、アメリカ合衆国は、「戦争の中で憲法典を制定した國」ではないのだ。

これは世界史における厳然たる事実なので、調べてみてほしい。

まず、アメリカ独立戦争が始まったのが1775年、レキシントン・コンコードの戦いである。そして、1781年、ヨークタウンの戦いで英國軍が降伏し、事実上の戦争は終結。1783年のパリ條約の締結を以て、正式にアメリカ独立戦争は終結したのである。

そして、それまでの連合規約を改定し、更に強力な中央集権國家を目指すべく、1786年、その作業が始まる。そして1787年に完成し、翌年1788年に発効したのがアメリカ合衆国憲法である。

すなわち、竹田恒泰氏の「アメリカの憲法だって戦争の中で書かれたんです」なる発言は、全くの歴史的事実に反する、虚言なのである。竹田氏は、慶應義塾大学で教鞭を取っている憲法学者である。そのような人物が、世界史を勉強した高校生でも分かるような事実を知らないとは、どういうことであろうか。

さて、このように、竹田氏の「アメリカの憲法だって戦争の中で書かれたんです」が虚言であると客観的に判明した以上、「憲法っていうものは所詮戦争の中で作られるものなんです」という発言も、同じく虚言であると判明する。

すなわち、竹田恒泰氏が満を持して振り上げた、「憲法無効論を簡単に粉砕する理屈」なる代物は、竹田氏が高校生でも知っているような歴史的事実の基本すら知らなかった為、ここに瞬時にして粉砕されたのである。

また、可笑しいのは、竹田氏自身が、自分の発言の中で、「憲法無効論を簡単に粉砕する理屈」を簡単に粉砕する理屈を自白してしまっていることである。お気づきになったであろうか。

この箇所である。

ーーーーーーー 以下引用 ーーーーーーー

平穏の中で合法的に書かれた憲法は一つだけ紹介しましょう。何を隠そう、別に隠す必要ないんですけど、大日本帝国憲法じゃないですか。

ーーーーーーー 引用ここまで ーーーーーーー

大日本帝國憲法が平穏の中で合法的に書かれた、という発言は、先の竹田氏の「憲法っていうものは所詮戦争の中で作られるものなんです」という発言と、全く相反する、矛盾するものである。

つまり、竹田氏は、「憲法っていうものは所詮戦争の中で作られるものなんです」という自身の発言が虚言である、と、堂々と自白してしまったのである。

ここに、我が國の大日本帝國憲法が平穏の中で書かれたという事実は、「世界中の憲法学」なるものがどうであれ、我が國の憲法学においては、それらを省みることなどなく、平穏の中で書かれなかったのであれば、果たしてそれが憲法典として有効であるのか、という疑義が生じることを示唆するのである。

憲法とは、その國それぞれの國體を表現するものである。従って、我が國の憲法典の有効性を論じるに当って、他國の憲法学を斟酌する必要はないどころか、有害ですらある。

戦争の中で憲法典を制定するような革命國家と異なり、我が國は万世一系の皇室を國體の中心に頂く伝統國家である。そんな我が國においては、平穏の中で書かれなかった憲法典が、その有効性を疑われても理由のあることなのである。

さて、占領憲法は我が國がGHQによる占領下に、わずか8日間で英文で書かれたものを押しつけられたのである。占領下にある状態、すなわち國家主権を喪失している状態とは、國家の常態からすれば、平穏とはいえない。そうであれば、我が國において、かかる状態で押しつけられた憲法典は、無効であるといえるのである。これが、占領憲法が、大日本帝國憲法75條による手続違背であって無効ということなのである。

竹田恒泰氏による「憲法無効論を簡単に粉砕する理屈」なる代物は、かくして、氏が高校生レヴェルの世界史も知らなかったことにより、簡単に粉砕されたのである。


<(2)へ続く>