数字通りにはとらえられない現場の実情 | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

 第一線で働く産婦人科専門医・周産期専門医(母体・胎児)からのメッセージというモチーフのもと、専門家の視点で、妊娠・出産・不妊症に関する話題や情報を提供しています。女性の健康管理・病気に関する話題も併せて提供していきます。

 こんなニュースが流れています。以下は転載です。

 医師数30万人突破、20代は女性35.5%

 厚生労働省が12月17日に公表した、「2012年医師・歯科医師・薬剤師調査」によると、2012年12月31日現在の医師数は30万人を超え、30万3268人に上ることが明らかになった(資料は、厚労省のホームページに掲載)。2010年調査と比べると、8219人、2.8%の増加。

 医師のうち、医療施設に従事しているのは28万8850人で、病院18万8306人、診療所10万544人という内訳。

 以下、医療施設の従事者を見ると、人口10万人当たりの医師数は226.5人で、2010年比で7.5人増。地域差が大きく、最も多い京都府は296.7人、次いで徳島県296.3人、東京295.7人。一方、最も少ないのは埼玉県148.2人、次いで茨城県167.0人、千葉県172.7人となっている。最多の京都府と最小の埼玉県では2倍の開きがある。

 小児科、産婦人科、外科は増加

 性別は、男性は23万2161人(80.4%)で2010年比2.1%増であるのに対し、女性は5万6689人(19.6%)で同比7.0%増と伸びが顕著。女性医師の割合は、年齢階級が低くなるほど多く、「29歳以下」では35.5%を占める。

 平均年齢は、全体では48.9歳。病院では全体では年々上昇傾向が続いており、43.7歳で、10年前の2002年の41.7歳より、2歳増。内訳は、「病院(医育機関附属の病院を除く)」45.6歳、「医育機関附属の病院」38.5歳。「診療所」は近年58歳代が続いており、58.7歳だった。

 主たる診療科別では、内科が最も多く6万1177人、整形外科2万480人が続く。昨今、不足が特に指摘されている、小児科、産婦人科、外科は、いずれも増加。小児科は1万6340人(2010年比470人増)、産婦人科1万868人(同216人増)、外科2万8055人(同235人増)。

 広告可能な医師の専門医資格を見ると、最も多いのは、外科専門医が1万9850人で最も多く、以下、消化器病専門医1万5134人、整形外科専門医1万4744人などとなっている。


 以下は私のコメントです。

 この厚生労働省のデータを文字通りとらえると、医師数は増加している。そして、産婦人科や小児科あるいは外科も医師が増えているということになります。

 しかし、現場での実情はこの数字では判断できないんですよね。

 小児科に関していえば、内科医や外科医が開業する際に、併せて小児科を標榜すれば小児科の医師数としてカウントされてしまいます。また夜間救急や入院管理を含めた一戦で活躍している小児科医の数が、そして本物の小児科医が本当に増えているとは思えません。

 産婦人科も同様のことが言えます。産婦人科を標榜していても、昼間の外来診療のみで分娩や手術あるいは救急を扱わない産婦人科医がどれほど多いことか。また産婦人科医として以前は活躍していても生命保険会社あるいは老健で内科医として働いている産婦人科医も少なくありません。産婦人科の大変さは24時間体制での勤務が必要となる周産期医療にあるといっても過言ではないでしょう。

 外科医も同じでしょう。一戦の外科医としてではなく開業して内科医としてメインで働き、小手術や処置のみをこなすだけの外科医も多いことでしょう。外科医も救急を含めた手術をこなすことができる外科医こそ大変であると思います。

 上記のような小児科医・産婦人科医・外科医が世の中では過重労働の対象となっているのです。

 またいずれの場合も標榜科は小児科医・産婦人科医・外科医であっても研究職で臨床にほとんど従事していない医師もいることでしょう。

 こうした点を考慮してデータを正確に出すことは困難かもしれないのですが、そうしたデータを出さないと本当に必要とされる産婦人科や小児科あるいは外科の医師が増えているとは言えないと思います。

 まあ希望は捨てたくないので、数字が現場での実情にも反映されてくることを願っています。

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