よくある質問④:下腹部が痛いのですが大丈夫ですか | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

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 第一線で働く産婦人科専門医・周産期専門医(母体・胎児)からのメッセージというモチーフのもと、専門家の視点で、妊娠・出産・不妊症に関する話題や情報を提供しています。女性の健康管理・病気に関する話題も併せて提供していきます。

 新しく「よくある質問」というテーマを設けて記事をアップしていくことにしました。産婦人科医として日常診療を行っていると、多くの女性が同じような疑問や心配を持っていることに気づきます。そこで、こうした疑問や心配に対する我々産婦人科医の一般的な対応・返答を示し、情報を必要とする皆さんに共有して役立ててもらえたらと思います。


 今回4回目は妊娠中期における下腹部痛についてです。

 「下腹部が痛いのですが大丈夫ですか?」「右の(あるいは左の)下腹部が痛いのですが大丈夫ですか?」「鼠径部あたりが痛いのですが大丈夫ですか?」妊娠中のともなると子宮が存在する下腹部や鼠径部の痛みには敏感になるものです。

 妊娠初期にはちょっとした出血や下腹部痛が心配の種となったことでしょう。妊娠13~14週を過ぎ妊娠中期に入って安定期に入ると、出血を起こすことは減ってきます。それにあわせるように、下腹部ないし鼠径部につっぱり感や痛みを感じることが増えてきます。

 こんな時、すぐに病院にかかるべきなのか?問題ない痛みなのか?そもそも何なのか?など色々と疑問に思うことでしょう。

 そんな時の疑問に応えるのが今回の記事になります。

 まず冷静にその痛みやつっぱり感を分析してみましょう。子宮全体あるいは左右同時に痛みやつっぱり感がありますか?多くの場合はそうではないと思います。右側だけであったり左側だけであったりすることでしょう。もし右も左も症状があったとしても同時に左右ともにということは少ないでしょう。

 こうした場合の痛みやつっぱり感の原因のほとんどは子宮を支える靱帯にあります。子宮本体と鼠径部をつないで子宮がねじれるのを防ぐ靱帯が左右に1本ずつあります。円靭帯です。妊娠により子宮が急速に大きくなるのに対して、硬い靱帯が柔らかくなり子宮の成長に合わせて伸びていくのにはタイムラグが生じてしまいます。そうなると、この円靭帯が突っ張られて、下腹部や鼠径部の痛みやつっぱり感の原因となるのです。子宮は右や左に傾いたりねじれたりしますので、ほとんどの場合左右のどちらかの円靭帯しか突っ張りません。

 この場合には痛い方(右ないし左)を下にして横になれば痛みやつっぱり感は軽減ないし消失するはずです。こうした原因でおこる痛みやつっぱり感は妊娠に伴う正常な変化であり、全く問題ありません。もちろん病院・クリニックを受診する必要もありません。妊娠週数が大きくなるにつれて、こうした症状は自然となくなります。

 逆にそうでない場合には心配な場合があり、病院・クリニックの受診が勧められます。下腹部痛が持続し出血を伴う場合、動けなくなるあるいは嘔吐するほどの強い痛みである場合、子宮全体が規則的あるいは周期的に痛い場合などです。

 下腹部や鼠径部に痛みやつっぱり感がある場合には、時間外や夜間にあわてて受診する前に、落ち着いて上記のことを確かめてみてはいかがでしょうか。経験上は問題ない場合がほとんどだと思います。
 

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