前回紹介した骨盤位(俗に言う逆子)ですが、一言で骨盤位といっても頭位の場合とは違って様々はタイプがあります。その分類を紹介しておきましょう。
骨盤位はまず先進部の種類によって3つに分けられます。殿位・膝位そして足位です。
殿位は両足を伸ばした単殿位、両足を曲げた複殿位そして片足は曲げ片足は伸ばした不全複殿位があります。
膝位は両膝が先進する全膝位と片膝だけが先進する不全膝位があります。
足位は両足が先進する全膝位と片足だけが先進する不全膝位があります。
この中では殿位の頻度が75%程度と最も多く、残りの大部分は足位となります。膝位はかなり稀です。妊娠週数が早くなるほど骨盤位の中でも足位の割合が増えることが経験的に知られています。
殿位・膝位・足位の順に分娩時の危険が増していきます。これは最初に娩出される部位が大きければ大きいほど軟産道が十分に開大・伸展し、後続する児頭娩出への危険が減少するからです。
現在では骨盤位であれば帝王切開での分娩が標準となり、骨盤位の経膣分娩はオプションとなりつつあるのが産科医療の実情です。しかし、骨盤位の中でも殿位であれば経膣分娩も十分安全に行うことが可能です。ただし、足位や膝位の場合には原則的には経膣分娩は勧められません。また、双胎の第2子であれば足位や膝位であっても経膣分娩は十分安全に行うことが可能です。
ちなみに殿位の中ではどのタイプが一番安全かということですが、色々な意見があります。先進部の断面積が一番大きくなる複殿位がよいという意見もあります。また、一番臍帯脱出が起こりにくい単殿位がよいという意見もあります。この辺りはエビデンスのあるデータに乏しいようです。私の経験上は分娩時には緊急時に一番介入がしやすい複殿位が一番対応しやすいと思っていますが、分娩までの経過を見るという点では単殿位の方が安心して経過を見ていられるような気もします。いずれも甲乙つけがたいところだとも言えます。
なお、本文はオリジナルのものですが、画像中に使用しているイラストの一部は“病気がみえるシリーズvol.10の産科”から引用しております。
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