ところで、変動一過性徐脈が出現した場合ですが、どこまでが安全でどこからが危険なのでしょうか。
変動一過性徐脈の安全限界を図にまとめてみました。
①10分間における各一過性徐脈の持続時間の合計が4分以内であること
②胎児心拍数基線細変動が6bpm以上であること
③胎児心拍数基線が110~160bpmの正常範囲内であること
④一過性徐脈の深さが60bpm未満であること
(ただし、最減少心拍数が70bpm以下になる場合を除く)
以上4つの条件をすべて満たす場合は軽度とみなし、一過性胎児機能不全に属しはしますが、たとえこの所見が何時間続いても新生児仮死となる頻度は極めて低いといえます。
ただし、胎児胎盤機能は正常で、子宮内感染のない成熟児に限ります。
変動一過性徐脈の分析法を模式図に示しました。
各一過性徐脈の持続時間を病単位で合計して、一過性徐脈の持続時間を計算することになります。
安全限界内にある変動一過性徐脈の例を示しました。
基線は140bpm前後にあり、基線細変動が10bpm以上です。心拍数低下の程度も深くなく、安全限界内にありそれほど危険な状態にはなっていないと推測されます。
今度は安全限界を越えた変動一過性徐脈の例を示しました。
基線は左の方では160bpmですが、右の方では180bpmに上昇しています。また、基線細変動も低下しています。
左端にはovershootが見られます。児の予備能力が低下した状態と考えられ、必ずしも胎児が急激に危険な状態に陥るわけではありませんがが注意が必要な状態です。
もう1例、安全限界を越えた変動一過性徐脈を示します。
基線は170bpmと頻脈になり、最少心拍数は50bpm未満まで低下しています。また、10分間における一過性徐脈の持続時間は4分以上になっています。
ただし、基線細変動6bpm以上保たれています。今すぐに、危険な状態とは言えませんが、この所見が30分以上続くと、新生児仮死に陥る確率は高くなりますので、注意が必要です。
にほんブログ村