卵巣出血は産婦人科領域の救急疾患の中では比較的頻度が高く、急性腹症をきたす代表的な疾患です。
広義の卵巣出血は様々な要因により、卵巣から腹腔内に出血を起こした状態を総称しています。女性が腹腔内出血をきたす原因としては、広義の卵巣出血は異所性妊娠(いわゆる子宮外妊娠のことです)に次いで、2番目に頻度が高いことが知られています。
卵巣出血の成因(原因)は以下の3つに分けられます。
1、外因性:
①外傷:腹部への外傷、性交、内診、卵巣の手術後や採卵手術後など
②非外傷性:子宮内膜症や悪性腫瘍などの卵巣への波及によるもの(癒着・炎症など)
2、内因性:
①出血傾向:凝固因子異常、血小板減少性疾患、血小板機能異常、白血病、抗凝固剤の内服など
②血管病変
3、特発性:
月経周期に伴う卵巣の周期性変化によるもの
狭義の卵巣出血は特発性の卵巣出血のみを指しています。狭義の卵巣出血には、卵胞出血・黄体出血・妊娠黄体出血があります。今回はこの狭義の卵巣出血に対して色々と紹介してみます。
卵巣出血には卵胞出血(排卵期)・黄体出血(黄体期)・妊娠黄体出血(妊娠初期)がありますが、黄体出血が最も多いです。
卵胞出血は、排卵に伴った卵巣の断裂血管からの出血です。これに対して黄体出血や妊娠黄体出血は、卵胞出血による血液が黄体内に貯留して血腫を形成して嚢胞状(出血性黄体嚢胞といいます)になった後、これが何らかの要因で破綻して腹腔内に出血したものです。
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