子宮頚管無力症は「外出血や子宮収縮(陣痛)などの切迫流早産兆候を自覚しないにもかかわらず、子宮口が開大してしまい、胎胞が形成されて妊娠が維持できなくなる状態」と定義されています。
確定した診断基準がないことから、現状では子宮頚管無力症を正確に診断することは困難です。ですから発生率も正確には分かっていません。0.05~1%と報告によって大きな幅があります。
では子宮頚管無力症の病態について詳しくみていきましょう。
図の左側に示したように正常の子宮頚管は胎児が発育しても開大することはなく妊娠末期に至ります。しかし、図の右側に示したように子宮頚管無力症では子宮頚管に十分な強度がないため、胎児の発育により子宮内圧が上昇する妊娠中期になると、自覚するような強い子宮収縮がないにもかかわらず、子宮口が開大・子宮頚管が短縮して胎胞形成・脱出がおこります。
胎胞形成・脱出がおこるほどに子宮頚管が開大すると、子宮頚管に対する圧迫や伸展刺激が更なる子宮収縮をおこします。子宮収縮がおこると更に胎胞形成・脱出が進行するという悪循環に至ります。この悪循環の中で感染や前期破水を引き起こします。そして最後には、流産・早産となります。
子宮頚管無力症による流産・早産はしばしば反復します。このため子宮頚管無力症は妊娠16週以降の習慣流産・習慣早産の原因となりえます。
子宮頚管無力症の要因・リスクファクターをあげてみます。
①原因不明の妊娠中期の流産・早産の既往
②子宮奇形・短い子宮頚管など先天的要因
③子宮頚部円錐切除術の既往
④人工妊娠中絶術・流産手術など子宮内容除去術時の無理な子宮頚管拡張
⑤前回分娩時の陳旧性頸管裂傷
妊娠中期以降に流産・早産を繰り返していても、既往の流産・早産が妊娠高血圧症候群・抗リン脂質抗体症候群・前置胎盤・胎児側因子(胎児異常・染色体異常・子宮内胎児発育不全・子宮内胎児死亡など)などによる原因のはっきりしたものである場合には、子宮頚管無力症のリスク因子にはなりません。
逆に胎児異常や感染が明らかでないのに頸管長短縮や内子宮口開大傾向がはっきりしている場合には、流産・早産の既往がなくてもあるいは初回妊娠であっても子宮頚管無力症を疑うことになります。
なお、本文はオリジナルのものですが、画像中に使用しているイラストの一部は“病気がみえるシリーズvol.10の産科”から引用しております。
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