妊娠中・分娩時の子宮筋腫の手術 | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

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 第一線で働く産婦人科専門医・周産期専門医(母体・胎児)からのメッセージというモチーフのもと、専門家の視点で、妊娠・出産・不妊症に関する話題や情報を提供しています。女性の健康管理・病気に関する話題も併せて提供していきます。

 妊娠中してからみつかった子宮筋腫は妊娠中や帝王切開などの分娩時に摘出は可能なのでしょうか?

 答えは妊娠中・分娩時の子宮筋腫の手術は原則として禁忌です。産科学のバイブルといわれるWilliams Obstetricsにも日本産婦人科学会が出している産婦人科診療ガイドライン2008産科編にもそのように記載されています。これは妊娠中や分娩時の子宮はとても柔らかくて血流が豊富です。そのため子宮筋腫の核出(筋腫だけとること)を行うと摘出した部分からの出血が多くなったり、止まりにくくなったりするからです。また、術後の感染のリスクも上昇するからです。最悪、妊娠中であれば流産・早産となったり、分娩時であれば子宮摘出になることすらありえます。
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 妊娠中・分娩時の子宮筋腫の手術は原則として禁忌と書きました。もちろん例外はあります。①漿膜下筋腫の軸がねじれて急激な痛みが出てきた場合や子宮筋腫が急激に増大し妊娠継続の障害になると判断される場合、②子宮筋腫に感染や出血が起こった場合、③過去に子宮筋腫が原因と思われる流産既往がある場合などには妊娠中でも手術が必要ですし実施します。

 分娩時(ほとんどは帝王切開時ですが)でも、容易に摘出できるものを摘出することは問題ないと考えられます。一方、帝王切開に際して胎児娩出の障害になる筋腫・傷の縫合に障害となる筋腫は摘出が必要になります。

 妊娠中や分娩時に摘出しなかった筋腫は、産後6ヶ月程度で大きさを評価し、次の妊娠までの間に摘出すべきかどうかを判断するのが一般的です。産後には子宮筋腫はかなり小さくなりますので手術しなくても済むケースが多々あります

 ところで、妊娠を目指す女性が非妊娠時に子宮筋腫が見つかった場合に、その子宮筋腫を摘出すべきか否かは位置・大きさ・数などによって適応が違いますし、施設や医師によっても意見が異なります。担当医とよく相談されることをおすすめします。

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