子宮筋腫合併妊娠 | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

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 第一線で働く産婦人科専門医・周産期専門医(母体・胎児)からのメッセージというモチーフのもと、専門家の視点で、妊娠・出産・不妊症に関する話題や情報を提供しています。女性の健康管理・病気に関する話題も併せて提供していきます。

 晩婚化・高齢出産の増加という時代の流れにより子宮筋腫合併妊娠の頻度が増加しています。子宮筋腫合併妊娠はハイリスク妊娠です。

 まずは子宮筋腫とは何かというところから見ていきましょう。この辺りはすでにご存じの方も多いのではないかと思いますが、やはり省略せずに簡単に触れておきます。

 子宮筋腫とは子宮を構成する平滑筋細胞が増大してできます。女性ホルモン特にエストラジオール(エストロゲンのある型です)の影響により増大することが知られています。30歳以上の女性では約30%に子宮筋腫がみつかります。

産婦人科医師のひとりごと-子宮筋腫の分類
 子宮筋腫は出来る部位によって左の図のように3つに分類されます。①漿膜下筋腫:子宮の外側に“きのこ”のように発育する筋腫です。②筋層内筋腫:子宮の筋層内にある筋腫です。③粘膜下筋腫:子宮内腔に向かってポリープ状に発育する筋腫です。当然ですが、どのタイプの子宮筋腫があるかによって妊娠中・分娩時のリスクは違ってきます。

 いずれのタイプの筋腫であれ妊娠初期から中期にかけて大きくなることが多いです。しかし、妊娠中期以降は引き続き大きくなることもありますが、胎児や胎盤へも血流が増え筋腫に循環する血流が減少するため大きくならなかったり逆に小さくなることもあります。また、変性や感染をきたして痛みや流産・早産の原因となることもありえます。

 大きな筋腫でも何の症状もなく経過することもありますし、小さな筋腫であっても痛みの原因になることだってありえます。筋腫は部位・大きさ・数などによって様々な病態を呈してきます。

 一般的な話です。子宮筋腫合併妊娠では流産・早産、前期破水、骨盤位などの胎位異常、常位胎盤早期剥離などの産科合併症が増加すると言われています。分娩時には産道通過障害や微弱陣痛の原因となって帝王切開が必要となる確率が上昇します。もちろん子宮筋腫があるから帝王切開が必ず必要になるわけではありません。ただ経膣分娩時・帝王切開時の出血量増加につながることは確かです。産褥期には筋腫により子宮復古が妨げられ産後出血のリスクが増します。また、感染や変性で痛みや発熱の原因となることもあります。

 日本産婦人科医会が出している研修ノートNo.85から引用します。筋腫の大きさが3cm以上になると早産(10%)、子宮内胎児発育不全、前期破水、常位胎盤早期剥離(10%)、骨盤痛(5cm以上で25%)、胎位異常(骨盤位は4倍)が増加すると記載されています。また、周囲臓器への圧迫症状や尿閉、排尿障害が見られることがあるとも記載されています。

 怖いリスクの話ばかりですみません。子宮筋腫があっても正常な妊娠経過で経腟分娩される妊婦さんも多くいます。また、分娩は帝王切開となってもそれ以外の経過に異常を認めない場合も多いです。子宮筋腫合併妊娠の妊婦さんも悲観しないでください。ただ、ハイリスク妊娠で上記のようなリスクがあることは知っておいてもらいたいと思ってます。

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