◎奥山篤信の映画批評125 ポーランド映画<残像 Afterimage>2016 | 護国夢想日記

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 日々夢みたいな日記を書きます。残念なのは大日本帝国が滅亡した後、後裔である日本国が未だに2等国に甘んじていることでそれを恥じない面々がメデアを賑わしていることです。日本人のDNAがない人達によって権力が握られていることが悔しいことです。

◎奥山篤信の映画批評125 ポーランド映画<残像 Afterimage>2016
~All or Nothingではないワイダの老獪な生き方を学べ!~

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ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダの遺作と言えるこの作品は共産主義の犠牲になったポーランド暗黒時代に生きたワイダのまさに自叙伝とも言える作品だ。

 

 

ワイダは共産主義下においても抵抗三部作と言われる<世代><地下水道><灰とダイヤモンド>にて表面的にはドイツ・ナチスに抵抗するふりをしながら、実はナチスなき後のソ連支配に抵抗するポーランドを婉曲的に描き巧みに検閲を逃れてきた巨匠でもある。

 

 

ポーランドの自由化に伴い自らの父親がソ連軍に虐殺された<カチンの森>でその怨念を晴らす一方自ら支援した自由化の闘士ワレサを<ワレサ~連帯の男>にて描いて自らの人生を総決算したのである。

 

 

<カチンの森事件>とは、第二次世界大戦中にソビエト連邦(ロシア共和国)のグニェズドヴォ近郊の森で約22,000人のポーランド軍将校、国境警備隊員、警官、一般官吏、聖職者がソビエト内務人民委員部(NKVD)によって銃殺された事件である。

 

 

この作品は前衛画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキ(1893~1952)の晩年の4年間を描いている。

 

 

ストゥシェミンスキは画家・カジミール・マレビッチの弟子でカンディンスキーやシャガールとも交友があった。

 

 

師事したマレビッチはロシア帝国ウクライナ生まれ、両親はポーランド人で抽象性を徹底した「シュプレマティスム」を主張し、抽象絵画の一形態に達した画家であった。

 

 

主人公には理論的にも優れ<残像理論>の著作もある。

 

スターリン体制になったポーランド政府の芸術の政治利用(ワイダも社会的リアリズムに嫌気をさしたのは同じ)に一切の妥協を排除し徹底的に反抗し、教授の地位も追われ、作品を破壊され、食うこともできず絵具も買うこともできず失意のうちに結核で死んだ。

 

 

まさに徹底的反逆者でもあり、ワイダのような綱渡りができなかった、まさに信念の人なのだ。

 

 

ワイダは、体制の束縛の中、ある意味では<うまく泳いだ>映画監督であるが、僕の感じるところでは、その<世渡り>に自戒の意味も含めこの国民的英雄を讃えたかったのだろう。

 

 

映画はさすがワイダ、品格に満ちており、見るものの興味を外さない。彼は同じく芸術家であった夫人と別れその一人娘がいた。

 

 

そして映画では上品に紹介しているが彼の理論本の筆記をしていた愛人がいたが、家族状況とか愛人が逮捕されても迎合することがなかった<信念>の人だ!

 

 

そんなストーリーを見事に描いている。

 

 

ここで余談だが信念と信仰の違いが面白い。つまり僕の持論だが共産主義とキリスト教はうたい文句としては<プロレタリアート>救済と<元来被抑圧のユダヤ人>救済と言うまさに弱者救済で根っこは同じである。

 

 

ところがいくら理想は高邁であろうと共産主義はその組織としての国家の個人崇拝(レーニン・スターリン・毛沢東・金日成・ポルポトなどなど)から堕落し全体主義の残酷性だけがまかり通る。

 

 

一方キリスト教はイエスがいくら高邁であろうと後継者たる、特にバチカンなど教会の腐敗堕落そして2000年にわたる排他主義と残虐性は酷似している。

 

 

両者とも<偶像崇拝>(共産主義の個人崇拝という偶像と神という一神教の偶像)による一切の人間の自由な発想を排除とそれを偶像崇拝に統制したところに悪の根源がある。

 

 

まさに世界を最悪の状況(2000年の残虐行為のキリスト教と20世紀を恐怖に陥れた共産主義)にした二つの偶像崇拝を徹底的に批判してもしすぎることはない。

 

 

綺麗な美辞麗句と排他主義は、人間の限りない能力と可能性をシャットアウトする意味で2000年を停滞させ20世紀を沈滞させた、人類に対する犯罪ほど罪深いものはないのだ!

 

 

アンジェイ・ワイダが生涯を通して追求し続けたテーマを凝縮させたかのような、まさにライフワークの完成と呼ぶにふさわしい作品に仕上がっている。月刊日本8月号より
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