ファール・プレイ [DVD]/ゴールディ・ホーン,チェヴィー・チェイス,バージェス・メレディス


一昨日はごめんなさい。
ブログを一生懸命書いてたら深夜0時になり翌日になってしまいペタ返しをし損ないました。
深くお詫びいたします。

実は民主党の代表選に関する記事を書いていたのですが、イマイチ面白くないので結局お蔵入りにすることにしました。

気を取り直して70年代のラブコメディサスペンス映画『ファール・プレイ(Foul Play)』 (1978米公開)の話に切り替えることにしました。

この映画、好きなんです。サンフランシスコを舞台にしているので90年代に少しの間近くのバークレーに住んでいたわたしとしては馴染みの場所がいっぱい出てきてそれだけでも嬉しいんです。また、映画から感じられる70年代特有の長閑な雰囲気も何か癒される気がします。

この映画はアルフレッド・ヒッチコックのオマージュと言われています。ヒッチコックも生前サンフランシスコ近辺に住んでいて彼の有名な『鳥』とか『めまい(Vertigo)』などの映画もその辺りで撮影されています。実際この『ファール・プレー』には『知りすぎていた男』とか『北北西に進路を取れ』とか『ダイヤルMを廻せ!』などいろんなヒッチコック映画のパロディーが出てきます。

しかし、そんな映画を撮った場所やヒッチコックのことを度外視してもこの映画は面白い。監督・脚本のコリン・ヒギンズって天才だと思いたくなる笑いのセンスが抜群です。しかも、映画としてはサスペンスとして進行し、さらには全盛時代(と言っても当時33歳)の本当にかわいい金髪のゴールディ・ホーンと売出し中のコメディアン、チェヴィー・チェイスとのロマンスも出てきます。

話はこんな感じである。

 図書館勤めの女性グロリア(ゴールディ・ホーン)がパーティーの帰りに知り合った男(ジーン・ワイルダー)からタバコのパッケージを渡された後に「ドーフ(小人)に気をつけろ」という謎の言葉を残して殺害される。それ以来、彼女の身辺に何者かがつきまとい始める。グロリアの警護に当たった刑事トニー(チェヴィー・チェイス)は偶然にも例のパーティで知り合っていた顔見知りだった。

では、この映画の見どころをひとつひとつあげていってみようと思います。

1.主題歌はバリー・マニロウの「Ready To Take A Chance Again」
やはり、音楽ファンとしてはこの映画を観るきっかけはやはり主題歌をバリー・マニロウが歌っているってことでしょうか。

You remind me I live in a shell,
Safe from the past,
And doing' okay,
But not very well.

No jolts, no surprises,
No crisis arises:
My life goes along as it should,
it's all very nice,
but not very good.

And I'm ready to take a chance again,
Ready to put my love on the line with you.

あなたはわたしが貝殻の中に閉じこもり、
過去から逃げ、
なんとか上手くやっているが
最高という訳でもない、そんなことを気づかせてくれる

激しい動揺も、驚きも、危機への遭遇もない
わたしの人生はなるがままに進んでいる
それらは全てとてもいいんだけど
最高って訳でもない

そしてわたしにはもう一度チャンスを得る準備が整った
君との愛に賭けてみる準備を整えたんだ
(バリー・マニロウ「Ready To Take A Chance Again」より)


Ready To Take A Chance Again - Barry Manilow(映画『ファール・プレー』のオープニングより)
邦題は「愛に生きる二人」。1978年11月に2週連続で全米チャートの11位を記録した。この年バリーはアルバム「Even Now(愛と微笑みの世界)」(全米3位)から「Can't Smile Without You(涙色の微笑)」(全米3位)、「Even Now(忘れえぬ面影)」(全米19位)、「Copacabana (At the Copa)(コパカバーナ)」(全米8位)とヒットを飛ばした後のヒットとなった。(その後も同アルバムから「Somewhere In The Night」が全米9位のヒットになっている。)


Ready To Take A Chance Again - Barry Manilow(バリー・マニロウのコンサートより)

エッセンシャル・バリー・マニロウ/バリー・マニロウ


2.監督、脚本は鬼才コリン・ヒギンズ
この映画『ファール・プレー』の脚本を書き、監督までやっているのが、『大陸横断超特急(SILVER STREAK)』(1976年米公開)、『9時から5時まで (Nine to Five)』(1980年米公開)、『テキサス1の赤いバラ(THE BEST LITTLE WHOREHOUSE IN TEXAS)』(1982年米公開)などのヒットコメディ映画で脚本や監督を手掛けている鬼才コリン・ヒギンズ。

フランス領ニューカレドニア生まれの彼は1988年にエイズで47歳という短い生涯を閉じているので彼が世に送り出した作品は少ない。しかし、その少ない彼の作品は傑作が多い。

●『ハロルドとモード 少年は虹を渡る(HAROLD AND MAUDE)』(1971年米公開)[脚本]カルト的な支持者が多い芸術性の高いコアな作品。

●『大陸横断超特急(SILVER STREAK)』(1976年米公開)[脚本]ジーン・ワイルダーとリチャード・プライヤーのコンビが最高に面白い。アムトラックで事件が起こるのでとても興味深い。

●『ファール・プレイ(Foul Play)』(1978年米公開)[監督・脚本]

●『9時から5時まで (Nine to Five)』(1980年米公開)[監督・脚本]映画にも出演しているドリー・パートンが歌う主題歌が全米1位。

●『テキサス1の赤いバラ(THE BEST LITTLE WHOREHOUSE IN TEXAS)』(1982年米公開)[監督・脚本]

●『アウト・オン・ア・リム/自分探しの旅(OUT ON A LIMB)』(1987年米公開)[脚本]

アメリカにおける興行成績においてもコリン・ヒギンズの作品は好成績をあげていて『大陸横断超特急(SILVER STREAK)』が1976年の米興行成績で『ロッキー』、『スター誕生』、『キング・コング』に次ぐ4位、『9時から5時まで (Nine to Five)』も1980年の米興行成績において『スター・ウォーズ~帝国の逆襲(The Empire Strikes Back)』に次ぐ2位にランクされている。


映画『ファール・プレー』の劇場用予告編

2.おばあちゃんたちがスクラブルゲームで作った言葉は?
映画の中でゴールディ・ホーンが演じるグロリアは怪しい連中につけ狙われ、ついには連中のアジトで囚われの身になってしまう。しかし、隙を見て逃げ出したグロリアは雨が激しく降る中、とある部屋の外から窓越しに見ると家の中でゲームをしている老婆が二人いる。グロリアは必死に窓を叩いて助けを求めるがおばあちゃんたちはゲームに夢中で全く気づく気配がない。

そのおばあちゃんたちがやっていたのが文字をつなげて言葉を作るゲーム、スクラブル(scrabble)。おばあちゃんたちのやり取りはこんな感じである。

①老婆Aが「F」の後に「UCK」をつけて「FUCK」を完成させる。

②老婆Bが「FUCK」の後に「ER」をつけて「FUCKER」を完成させる。

③老婆Aが「FUCKER」の前に「MUTHER」をつけて「MUTHERFUCKER」にする。

④老婆Bが「MUTHERFUCKER」じゃあスペルが間違っていると文句を言う。そう。正解は「MOTHERFUCKER」である。

※9/1追記:老婆Bが「I think you're wrong. I think you spell that word with a hyphen.」って言っているので本当の正解は「MOTHER-FUCKER」。

緊迫したシーンに突如出て来るこういうセンスの良い?ジョークがさすがヒギンズである。


スクラブルに興じる老婆

3.ハリウッド初進出のダドリー・ムーアの怪演
この映画でコリン・ヒギンズが考え出したキャラクターで一番笑わしてくれるのがダドリー・ムーア演じるスタンレー・チベッツという男の役。

彼は映画の中で3回、偶然と言う形で登場する。

最初は追われているグロリアがかくまってもらうために酒場で見知らぬ男に声をかけて部屋に連れて行かせるのだが、その男がスタンレーで彼はグロリアといいことが出来ると期待して変態趣味的な彼の部屋を見せてグロリアに愛想を尽かされる。

次はグロリアが売春宿に潜入するとそこにまたもやスタンレーが客として来ている。

3回目は映画のクライマックスでオペラハウスで彼がオーケストラの指揮をしていると事件が起こる。彼は指揮者だった!

最初のスタンレーの部屋のシーンが特に腹を抱えて笑うシーンである。イギリス人の俳優&コメディアン、ダドリー・ムーアはこの映画がアメリカ映画初出演でこの映画以降、『10』(1979年)とか『ミスター・アーサー』(1981年、クリストファー・クロスの歌う主題歌が全米1位)とヒットを飛ばしていくことになる。


ダドリー・ムーアの怪演


コリン・ヒギンズの映画は時間があったら全部観ておきたいですね。