角田光代 『八日目の蝉』 | 思い入れ★ホームシアター★日記

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わ~い。ついに我が家にホームシアターが・・
6.1ch 80インチスクリーン。
その驚きの臨場感!!近所の皆さんごめんなさい。m(_ _)m

やっと図書館の順番が回ってきて、角田光代さんの

『八日目の蝉』を手にする事ができた。

この小説、NHKでドラマ化され、春には、映画も

公開されるようである。


【内容】


不倫相手の男の子供を誘拐して逃げる女。

あやしげな宗教施設に身を隠した後、小豆島で

しばし平穏な日を送るが、4年後、1枚の写真が

きっかけで逮捕される。

十数年後、誘拐された子供は、大学生に。

そして、彼女もまた、不倫相手の子供を産もうと

していた。



誘拐した親子の逃避行の息をもつかせぬ展開に、

時間を忘れて一気に読み終えた。

希和子は、決して、愛人一家を恨んで、誘拐をした

わけではない。一目その顔を見たくて忍び込んだ

その家で、赤ちゃんの笑顔に触れ、母性を感じ、

連れて出てしまうのである。


そこからの逃亡生活。希和子の子供への愛の

注ぎ方がとても良く描かれている。

瀬戸内の美しい情景と愛情あふれた二人の生活。

誘拐は悪いことだと判っていながら、思わず希和子

に加担して、逃げおおせて欲しいと思ってしまう。


その気持ちは、後半になって、実の両親の元に戻った

薫(恵理菜)を待っていたのが、決して幸福では

ない生活だったという事で余計加速する。


こんな扱いを受けるなら、いっそ、希和子と一緒に

いた方が・・という錯覚をも覚えるが、でも、実の親こそ

最大の被害者。誘拐されなければ、家庭が崩壊する

事もなかったのである。


そして、娘は、自分のまわりの不幸のすべてを

誘拐した”あの人”のせいにする事でしか、気持ちの

行き場がないのである。


この小説を読んで思い出したのは、日テレのドラマ

『Mother』


どちらもテーマは、”母性”そして、背景にあるのは、

”誘拐”


小学校教師鈴原奈緒が虐待されていたクラスの

児童を誘拐し、自分の子供として育てようと

するというストーリー。


このドラマ。芦田愛菜ちゃんの名演技(←彼女は

本当にすごい!)と幼児虐待という内容で、当時

結構話題になったが、虐待の部分は、はじめの

少しだけ。

実際、最後まで見ると、親子のあり方をいうものを

多方向から見つめた久々に見てよかったと思える

感動的なドラマであった。


もちろん、『八日目の蝉』とは、誘拐の事情が全く

違うのであるが、血のつながらない子への愛と

いう事でイメージがかぶってしまった。


ドラマの最後のシーン


10数年の後に再会した奈緒と手を重ねるつぐみ


私は、このシーンが大好きである。


”小さい頃に手をつないだ思い出があれば、

 いつかまた心が通じ合う”


小説の恵理菜も、ラスト近くなると少しずつ、周囲に

心を開いていくようになる。

そうでなければ、あの数年間の逃亡生活で彼女に

注がれた無償の愛が全く無に等しくなってしまう。


時間がかかるかもしれないが、彼女と恵理菜も

奈緒とつぐみのように再び手を重ねる事ができる

日が来てほしい。



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