平和の架け橋へ | 学生団体S.A.L. Official blog

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コソボのミトロヴィッツァ。
この町には多数派のアルバニア人地域に加えて、セルビア人地域が存在する。その二つを隔てるものは何か。1本の川だ。そしてこの二つの対立した民族の居住地域をつなぐ橋がある。ただ、この橋は歩行者は通行できるものの、真ん中の道は封鎖されており車が通行することはできない。


僕たちは町の南側、アルバニア人地域から橋を見ていた。でも渡れない。橋の向こうには何があるのだろう。向こう側から見た風景はどんなだろう。そんなもどかしさがずっと心の中を渦巻く。

そんな中、橋の近くを通りかかった、小学生ぐらいの女の子を連れた男性に話を聞くことができた。彼はその女の子に聞こえないようにこっそりとこう語ってくれた。
「実は私の弟はセルビア人に殺されたんだ。そして殺された彼の娘があの子なんだよ。」
突然の出来事に僕たちは言葉を失った。でも勇気を振り絞って聞いてみることにした。
「セルビア人のことをどう思う?」
彼はこう答えた。
「嫌いとかは言いたくないけど、、、家族を殺されているから、、、」

彼が堂々と嫌いだと言えない複雑な気持ちは、紛争を経験していない僕たちには到底理解し得ないのだろう。でも僕たちにも分かることがある。彼らは憎みたくてお互いを憎んでいる訳ではないのだ。彼らだってきっと平和な世の中を望んでいるはずだ。


最近はセルビア人とアルバニア人の交流なども進んできているそうだ。この町も二つの民族の融和に向けて一歩を踏み出そうとしている。

橋の向こう側に見えるPEACEの文字。この橋が二つの民族の平和の架け橋になる日はいつ訪れるのだろうか

                               文責:広報局 8期 笠 智貴