いくつもの視点 | 学生団体S.A.L. Official blog

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文化汚染という言葉を聞いたことがあるだろうか。


日本からそう遠くなく、手軽に旅行できるインドネシア・バリ島。
美しいビーチで思い思いの時を過ごしたり、高級ホテルでエステを満喫する女性も多いだろう。そういったリゾート地としてバリ島を選ぶ背景にあるのはバリ島の独特な文化だ。

バリ島にはタリ・ワリという伝統芸能がある。
女達がきらびやかな衣装に身を包み、独特のリズムに合わせて踊るものだ。


それは本来寺院の中庭で一晩かけて神々に奉納される神聖な舞踊であった。


しかし、私たちはバリに行けば、寺院の中庭に行き、一晩中儀式に参加しなくてもリゾートホテルでおいしいディナーをとりながらタリ・ワリを見ることが出来る。

観光のために上演時間が短縮され、深い意味を持っていた舞踊が単なるエンターテインメントと化してしまっているのだ。




観光などによって「聖」的な文化が「俗」的な文化に変容してしまうこと。それを文化汚染と呼ぶ。


それはバリ島に限った話ではなく、世界中の観光地で起きている。




この話を読んであなたはどう感じただろうか。
もしあなたが、伝統的な文化が観光によって消滅してしまう!これは問題だ!などと感じたならば、もう一つ、別の視点から考えてみてほしい。

それは、文化は消滅するものという視点ではなく、新しく発生するものという視点だ。観光によって新しい文化が誕生したと捉えることは一見間違って映るかもしれない。しかし、自分たちの文化がめまぐるしく変化していることを容認しながら、あの文化には変わってほしくないという身勝手な考えを他の文化に押し付けることができるだろうか。私たちは知らず知らず西欧的な立場から物事を見ていたり、自分たちのことは棚に上げて空虚な議論を繰り返したり、全くのフラットな視点に立つ努力を欠いているのではないか。

どちらの考え方が正しいのか、それに正解はない。でも、自分がどの様な視点を持つかによって一つの問題ががらっと180度回転することだってある。国際問題を考える時や異文化を理解しようとする時に少し思い出してみてほしい。


[広報局 花上愛祐美]