4種類のキーパーソンを把握しよう | 営業は科学だ!  Welcome to the Science of Sales

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さて、ロールプレイについて書こうかと思ったのですが、その前にやはりキーパーソンの話をしておかないといけません。

色んな営業の本でもよく「キーマン(キーパーソン)を抑えろ!」などと書いてありますよね。
ただ、大体の本はキーパーソンは1人あるいは1種類のように書いてあります。
しかし、私の考えではキーパーソンは4人あるいは4種類あります。

4種類を列挙してみますと、
① レコメンダー (Recommender  上申者)
② デシジョンメーカー (Decision Maker  決定者)
③ ユーザー (User  使用者)
④ インフルエンサー (Influencer  影響者)
となります。

先に書いたように多くの本は1種類だけ、デシジョンメーカーだけをキーパーソンとしてみなしています。
そんな単純なものではないと思います。
企業を考えてみてください。
また、企業でなく個人のお客様にもこの考え方は有効だと思います。

もう少しそれぞれについて説明します。

① レコメンダー (Recommender  上申者)
購入の意思があり、それを進めようとする人です。企業で言えば稟議書を書く人です。
この人が買おうと思わない限り話は何も進みません。
しかし、この人には決定権限はありません。

② デシジョンメーカー (Decision Maker  決定者)
予算の承認権限を持つ人です。
この人がOKを出さない限り購入はありません。
予算規模によって、課長の場合もあれば、部長、役員、社長など色々なケースがあります。

③ ユーザー (User  使用者)
文字通り実際に使う人です。
この人は稟議書を書かないし決定権もありませんが、実際に使用に耐えうるか否かなどの意見を述べることになります。
したがって、この人にソッポを向かれると足元をすくわれます。

④ インフルエンサー (Influencer  影響者)
稟議書も書かないし予算決定権もないし使用者でもないのですが、知識が豊富でブレーンとしてみなされており、その発言はデシジョンメーカーに影響を及ぼします。
企業の場合は「企画」などの名称がつく部門がこれに当たることが多いです。またコンサルタントなどもこれに当たります。

もちろん優先順位はありますが、この4種類のキーパーソンの全てに目を配っていないと足元をすくわれることがあります。

多くの本に書かれているようにデシジョンメーカー(決定者)を抑えることは非常に重要です。しかし、普段最も多くコンタクトするのはレコメンダー(上申者)です。レコメンダーを粗末にしてトップダウンで物事を進めていては臍をまげられてしまいます。デシジョンメーカーが良いと言っても内容に最も詳しいのはレコメンダーです。反論はいくらでも可能です。仮に一度はトップダウンで決まってもこの次に稟議を上げて頂けない、あるいは協力頂けないことが多々あります。

次に30年ほど前の私の経験です。
今では当たり前の宅配便の運転手が持っているハンディターミナルですが、当時は最新システムでした。それをある大手宅配便会社に提案してシステム部長や担当役員の承認もいただきました。最後にユーザーである運転手の意見を聞くことになり、労働組合の方々に対して説明を行いました。そこで出た現場の意見として、「手袋をはめた手では操作しづらい」とか「華奢で壊れやすそう」などの声があがり、結局検討のやり直しということになりました。なんとか半年遅れで受注できましたが、最初からユーザーにアプローチをしていればもっと違った展開になっていたでしょう。

また、「私の成功事例」の回で書いたように、コンサルティング会社を味方にすることによって大口の契約を頂くことができました。これはインフルエンサー(影響者)の力が如何に大きいかを示したケースだと思います。

多くの営業はレコメンダー(上申者)をカバーしているだけというのが実情です。ひどい営業ではキーパーソンでもない人としかコンタクトしていない場合もあります。
もし競合相手が全てのキーパーソンを抑えているのなら勝敗は明白ですよね。しかも本人は何故負けたかすら分からないままです。
私の経験でも、競合相手がキーパーソンに対してのアプローチがしっかりしている場合は非常にタフな戦いになりました。

さらに付け加えると、企業でなく個人のお客様に対しても同様の考え方を応用できます。
同じ人が複数の役割を果たしていることも多々ありますが。

たとえば、住宅販売ならばデシジョンメーカー(決定者)は夫かもしれませんが、妻はユーザー(使用者)になります。もし援助をしてくれる親がいればそれはインフルエンサー(影響者)になります。なかなかインフルエンサーにお会いすることはできませんが、その方の意向を把握できれば説明の中に加えておけば有効です。

自動車であれば、父親はデシジョンメーカー(決定者)ですが、息子さんがユーザー(使用者)として意見を述べることもあります。息子さんを説得して味方につけるというのも一つの戦略としてあり得ます。

紹介による営業が効果があるのは紹介者がインフルエンサー(影響者)になるわけで、インフルエンサーをすでに味方につけているからという見方もできます。

このようにデシジョンメーカーはもちろん重要ですが、4種類のキーパーソン全てに目を配るようにしてください。