9月6日から練馬区議会の定例会が開かれており、9月16日からは2015年度決算の質疑がおこなわれています。今も続いていますが、順番に内容をご報告していきたいと思います。


まず、9月16日の総務費の質疑。指定管理者制度を導入している施設の労務環境調査についてです。


指定管理者制度は、公共施設の管理運営を民間に任せるしくみ。小泉政権の頃にできた制度です。


「業務委託」と何が違うのか。例えば体育館を例にしてみると、水泳教室だとかスポーツ教室のみをスポーツ専門の事業者に委託するのが業務委託。指定管理者の場合はこうした事業内容だけではなくて、参加者募集、利用料金の徴収、館内の清掃、備品の管理など施設運営全般についてやっていく形になるので、事業者の裁量が大きくなります。

そうすることで、民間のノウハウを生かし、サービス向上がはかられるのだ、と言われて始まった制度です。


事業者を選ぶ際には、金額だけではなく、事業内容も評価をして事業者を選定します。

練馬区は、1期5年の間、運営を任せる形にしています。

そして、その5年間で一定の評価を得ている事業者であれば1回(福祉施設は2回)、公募によらずに更新することができます。

なので、10年間(福祉施設は15年間)同じ事業者が運営できる。しかしそうはいっても、一定の区切りがあるということは長いスパンでの展望が描きづらいこと、だから働いている人が非正規雇用になる場合も多いこと、行政と事業者は「評価する側・される側」になるのでどうしても上下関係になることにより必ずしも「民間の良さ」を活かせないのではないか、などの課題があります。

そういう意味で私は、特に教育や福祉など、従事者の専門性が求められ、短期間での評価が必ずしも単純ではなく、区民とのかかわりも深くなる性質の施設に関しては、指定管理者制度の導入は慎重であるべきと考えています。


練馬区は2010年度から、指定管理者を導入した施設に対して、社会保険労務士会に委託をする形で「労務環境調査」をしています。専門的な視点から、区の施設管理を引き受けている事業者が適切な労務環境を確保しているかを調査していくというもの。


このことについて質問しました。以下が、質疑の内容です。


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(かとうぎ桜子)

指定管理者制度運用経費の労務環境調査委託料について伺います。


労務環境調査は、今までも何度か議会で質問してきましたが(※直近では今年度予算の質疑の際にしているので、こちら をご覧ください。)、まず改めて、労務環境調査の調査項目はどういうものがあるのか。

そして、それを区としてどう活用して各施設の業務の改善に生かしているのかをお聞かせください。


(経理用地課長)

指定管理者の労務環境調査でございます。

平成22年度(2010年度)から指定管理2年目の施設を対象に、社会保険労務士の練馬支部に委託して行っています。

平成27年度(2015年度)は、20施設で12事業所ということで行っております。

調査項目は、労働基準法協定書関係が一つ。

また、育児・介護・母性保護男女雇用機会均等法関係という四つの大項目を設けまして、詳細な調査を行なっております。

また、施設長や従事者へのヒアリング、従事者アンケートなども調査の一環として行っております。これの活用は、外部の視点で調査を行うことによりまして、改善点の指摘があるといったもの、あるいは専門的な部分での指摘があるといったものを事業者にフィードバックしまして、労働環境のいっそうの整備をはかっていただくことと目的としてここ数年続けております。

相当程度の効果があったと考えてございます。


(かとうぎ桜子)

指定管理者制度には、現場の労働環境などさまざまな課題があると私は考えているのですけれども、練馬区でも多くの施設に指定管理者制度を導入している中で、こういった課題に取り組んでいかなければならないと思っています。

この調査を通じ、現場の実態を把握し、事業者と行政と協力しながらいい方向に向かっていくこと、そして住民にとってその施設を安心して利用できるものにしていくための仕組みをつくることが大切だと思います。

先ほど「フィードバックして」というお話がありましたけれども、労務環境調査の結果、改善すべき点が見つかった際には、事業者に対してどのようなフォローを行なっているか、少し詳しくお聞かせください。


(経理用地課長)

調査によって改善点が指摘された場合には、もともとはその調査結果は事業者に行きますけれども、改善に向けた対応報告書を例年2月ごろをめどに提出してもらっています。

その内容を確認のうえ、モニタリングに反映させております。

今年度から、モニタリングは、どういった改善点があったかという大項目についてはチェックシートに記載しています。

改善だと言っても、すぐに改善できるものもあればそうでないものもあるということで、例えば、報告書にも言っている、「継続して改善を図る」とか「今後の対応」だといったものについては、それからさらに半年後、9月ぐらいですけれども、そこをめどに再度、取り組み内容を出してもらっているという中身です。


(かとうぎ桜子)

この調査は、モニタリングの一環としてモニタリングの公表の際に一部触れられていますけれども、調査そのものは公表されていません。

今後の練馬区の指定管理者制度の改善のためにも、公表すべきではないかと今までも指摘させていただいてきましたけれども、今回、情報公開請求をして、2014年度と2015年度の調査内容を拝見しました。

先ほどご説明のあった、労働関係の法令にのっとった対応がなされているかという状況は、もちろん詳細に調査していただいているのですけれども、私が興味深く感じたのは、それぞれの施設で働く現場の従業員のアンケートがあることです。

例えば、「何か困ったことがあった時に同僚同士で助け合っていると思うか」や、「職場の雰囲気はいい方だと思うか」、「人事評価は適切だと思うか」、「労働時間に納得しているか」、「この仕事は社会に役立つ有意義な仕事だと思うか」、「この会社でずっと働きたいか」。こういった内容をアンケートしていて、現場の雰囲気がある程度感じられる点は意義があると思います。

このアンケートは、区としてはどのように捉えて現場の改善に役立てているのかをお聞きします。


(経理用地課長)

まず調査結果の公表は、これまでも申し上げております、そのメリット、デメリット、事業者との関係というものがございます。そこで慎重にやらせていただいております。

アンケートの目的ですけれども、従事者の意識を把握することによって、従事者と事業者が協力して職場環境をよりよくしていくものにしていけるだろうというものです。

社会保険労務士という第三者を経由いたしますので、客観的な内容が従事者から指定管理者につながって職場環境全般を見直すいい機会になっていると考えています。


(かとうぎ桜子)

個々のケースは、また今度の質疑の中でお聞きしたいと思いますが、例えば、仕事は社会に役立つ有意義なものと思っている人がほとんどなのに、この職場では働き続けられないとお感じになっている方がいらっしゃるところがあったりだとか、高齢者や障害者の福祉施設なのに、この仕事は有意義な仕事だと思わない人がいる職場があったりだとかする点がすごく気になっております。

こういった調査結果も、ぜひ積極的に生かしながら、状況の改善に努めていただきたいと思います。