福祉関係って制度がややこしいですよね…前回のブログ に書いた介護保険サービスは介護保険会計ですが、今回ご紹介する訪問型サービスA従事者研修については同じ高齢者介護の話なのに保健福祉費です。介護そのものじゃなくて研修の話だからですね。。




介護保険制度の改定で、要介護認定が要支援の人は「介護予防日常生活支援総合事業」というしくみにかわりました。

国の考え方は基本的には要介護認定の低い状態の人のサービスは切っていこうという方向です。


訪問型サービスAというのは、この「総合事業」を利用している人のところに訪問して家事の援助を中心に行なうことを想定していて、家事が中心だから練馬区では14時間で従事者になれるという簡易な研修にしてその分報酬を低くしようというものです。


かつて、訪問介護の仕事をする資格は介護福祉士という国家資格のほかに訪問介護員(ホームヘルパー)1級、2級、3級がありました。今は制度が変わって、1級→介護職員実務者研修、2級→介護職員初任者研修と名称も変わり、3級は廃止になりました。この制度改定の趣旨は、研修内容を充実して専門性を向上させることです。3級は50時間の研修を受け、家事のみを想定しているものだったので、専門性を上げる観点から廃止になったのです。


なのに!「総合事業」の訪問型サービスAは、14時間の研修で訪問サービスの家事援助ができるようになってしまうのです。

私はこの制度改定を知ったときに「つまり3級が復活するってことか」とビックリしたのですが、実際はそれよりひどくて、もっと簡単になってしまったってことが分かって、余計にビックリです。


介護の仕事は人と人が関わる仕事だし、特に訪問は人の家にあがる仕事です。

専門性と倫理観が求められる仕事です。


私はヘルパー2級の資格を大学4年の時にとったのですが、資格を取っているときに思ったのは、「人の命にもかかわるような仕事の資格がなんでこんなに簡単に取れるんだろうか。せめて運転免許をとるときのように、きちんと学んだことを安全に実施できるかの確認がとれるまで合格としないなどすべきなのではないか」ということでした。


しかし、むしろ誰でもできてしまう方向に逆行しているのは、今現在人手不足があるということは理由にあるでしょうが、しかしそもそも基本的に「家事なんて誰でもできるでしょ」という価値観で制度が成り立っているからではないかと思います。そういう前提で制度設計していたら、誇りを持って仕事をする人が集まらなくなるし、悪循環になる一方だと思います。

家事も、自分の好き勝手にやればいいわけじゃなくて、利用者さんがそれまで大事にしてきた生活を尊重してできるかどうかというのは、大事な専門性だと思います。



こうした「要支援切り」と専門性をないがしろにした介護保険制度のありようには疑問をもちます。


一方で、今回研修をするということであれば、その人がその研修をするのみで終わることがないようにきちんと継続した研修を実施し、できるだけ早い段階で少なくとも介護職員初任者研修を受けるようにしていくべきであるという観点で質問しました。


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(かとうぎ桜子)

訪問型サービスA従事者研修委託料について伺います。


介護予防日常生活支援総合事業の訪問型サービスで、区独自基準のサービスの担い手育成をしていく研修であるということで、14時間の研修を考えているということです。

研修内容としては、どのようなテーマを扱うか。また、修了後、その方たちはどのように働くことになるのかをお聞かせください。



(高齢社会対策課長)

研修内容については、国から示された介護現場への入門的研修のカリキュラムなどを参考にしながら、高齢者の特徴と家族の心理、尊厳の保持と自立支援、コミュニケーション技術、認知症の理解など、介護職に従事する際に必要となる基礎的知識を学ぶための研修としていきたいと考えています。


また、従事する際には、雇用される事業所において、一定程度の同行訪問なども実施していただくことになります。この研修を受講された方は、研修修了後にわれわれのほうでハローワークと連携しながら就職相談会を実施いたしまして、事業者とその方で雇用契約を結んで、その後就業していただくことを考えています。



(かとうぎ桜子)

かつて、家事のみをやることを想定したホームヘルパー3級がありました。それよりもさらに簡易で、短い時間で研修をやって従事者を育成するということになります。


訪問型サービスということで、個人のおうち に訪問することになるので、リスク管理などの課題があるかと思います。その点はどのように対応していくのか。また、利用者に対して、この従事者は専門職ではないということなど、仕組みの違いを説明する必要があると思いますけれども、その点のお考えをお聞きします。



(高齢社会対策課長)

個人の家にあがるなど、そういうご心配もあるかと思います。

現在もさまざまな有償ボランティアの団体などで、資格のない方がご自宅を訪問してサービスを提供しています。



雇用するに当たりましては、各事業所において、そういった個人情報の保護やいろいろな面の研修におきましても実施していただき、事故が起こらないように取り組んでいただけると考えています。


また、サービスの利用にあたりましては、高齢者相談センターにおいてケアマネジメントを実施していますので、その際に総合事業の案内パンフレットなどを活用しながら、利用者負担やサービス内容の違いについて、ケアマネジャー等から利用者に説明をしていきたいと考えています。


(かとうぎ桜子)

この研修で従事者になった方については、その後の継続的な研修の実施をすることや介護職員初任者研修の受講を促し、専門性を高めることが必要と考えます。


その点では、事業者によって大きな差が生じないよう、事業者との連携支援、そして時としてチェック体制も必要かと考えます。


区として、どのように対応していかれるかお聞かせください。


(高齢社会対策課長)

練馬介護研修センターにおいて、さまざまな研修を実施しています。

介護事業者に雇用された方はこういった研修を受講することによって、その後のスキルアップを図り、将来的には初任者研修などの資格を取っていただくなど、今後の介護人材の確保に寄与していただけると考えています。