決算特別委員会での私の質問時間は答弁も含めて1日7分間なので、2テーマやろうとすると時間が十分にないのですが、保健福祉費では以前のブログ にご紹介した福祉避難所に時間を割いたため、もうひとつ質問したかった自殺予防対策は入口のみ質問しました。


一般会計歳入の質問ができる日に、続きを質問しました。

というのは、自殺予防対策に関連する事業は国から都道府県に交付金が出て、それをもとに東京都は都内の市区町村に補助をするというしくみなのですが、今年度から補助率が引き下げられた部分があります。

日本では自殺者が3万人を超える状態が長く続いており、それが自殺予防対策の事業が進められてきた背景ですが、2012年からはようやく3万人を切った―そのことが補助率の引き下げにもつながっているのかもしれません。しかし、減ったといってもいまだ2万5千人強の方が毎年自殺されている状況は、決して楽観できる状態ではないので、自殺予防対策に積極的なとりくみをしている自治体を参考に、練馬区でも手をゆるめず対策をしていくべきという趣旨で質問しました。

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【9月24日の保健福祉費の質問の日】


(かとうぎ桜子)

時間がありませんので、入り口だけお聞きしておきたいと思うのですけれども、自殺予防対策費について伺います。


練馬区内の自殺者数の推移と、区として取り組んできた自殺予防対策事業について、改めてご説明ください。



(保健予防課長)

練馬区内の自殺者の推移ですが、平成26年は139名、平成25年は129名、平成24年は119名、平成23年は151名、平成22年は148名という推移です。



自殺対策においては大きく二つの事業をしておりまして、一つはゲートキーパー養成研修、もう一つは普及啓発しているところです。



【9月30日の一般会計歳入の質問の日】


(かとうぎ桜子)

地域自殺対策強化基金事業費補助金に関連して、自殺予防対策について伺います。


先日、保健福祉費の質問の際に、練馬区の自殺者数の推移と事業について、ご説明いただきました。

自殺者数は、2010年から2014年までの5年の状況では、110人台から150人強の間で推移していて、2014年に139人ということでした。


全国的に見ると、自殺者数が全国で3万人を超える状況からは脱してきたと言われますが、しかしそうはいっても、2014年の自殺者数は、全国で2万5,000人を超えていますし、練馬区の推移を見ると、必ずしも減っているとは言えない状況があるかと思います。


今までの練馬区の取り組みは、東京都の地域自殺対策強化交付金を活用して実施してきたということですが、今年度からは補助率が変わる部分があると聞きました。その点をご説明ください。

(かとうぎによる注※正確には、国からの交付金を使って、東京都が市区町村に対して補助金を出すというしくみです)

(保健予防課長)

平成26年度までは、区が実施する自殺対策強化事業については、東京都を経由して国から100%補助金が交付される事業でした。


しかし、平成27年度より補助率が変わりまして、練馬区で実施している事業のうち、ゲートキーパー研修については、4分の3の補助。啓発活動については、2分の1の補助になり、補助率が減ってしまった状況です。



(かとうぎ桜子)

補助率が減ったということです。

全国的に見て、自殺者数が減少傾向にあるということも、もしかしたら補助率が変わってきている要因なのかと思うのです。

減少傾向にあっても、まだ厳しい状況がある中で、こうやって引き下げられてしまっているということ。こういうふうに対応が十分でなくなっていくというのが、私は残念だと感じております。引き続き区としての自殺予防対策を工夫していっていただきたいと思います。

区が行っている自殺予防対策は、ゲートキーパー研修と啓発が中心であると、先日ご説明いただきましたが、自殺予防対策という観点からの相談体制については、区としてはどのように取り組んでいるのでしょうか。お聞かせください。


(保健予防課長)

区では、保健相談所で心の健康相談として、保健師が随時相談を受け付けております。またさらに、うつ相談や思春期、ひきこもり相談については、予約制ですが精神科の医師が無料で、当事者や家族の相談を受けることができるような体制になっているところです。


(かとうぎ桜子)

保健相談所の相談の中で、自殺予防対策という観点での相談を受けていらっしゃるというのが、今の練馬区の状況かと思います。


荒川区が、自殺予防対策に力を入れていて、現在若い方への自殺予防対策として、NPOに委託して、電話やメール、面接の相談などを実施しています。


このように、具体的に対象年齢などを絞って、今まで区が実施していた相談体制だけでは漏れてしまいがちな層を検証して、相談の場を工夫してつくっていくという視点も必要ではないかと考えますが、区のお考えをお聞きします。


(保健予防課長)

先進的な荒川区の取り組みについては、練馬区としても注目しているところです。


しかし、自殺者数が平均よりも高い荒川区と異なりまして、練馬区では自殺者数が全国平均や都の平均と比べて少ないこともあり、また40歳未満の自殺者数が特に増加傾向なわけでもないという状況も分析しておりまして、現時点では荒川区のような若者向けに特化した相談事業を新たにすることは考えているところではございません。


しかしながら、他の自治体の事例も参考にできるところは取り入れて、保健相談所での精神保健相談体制も含めまして、総合的な観点で、自殺対策を今後も進めていきたいと考えるところです。


(かとうぎ桜子)

ぜひ、先進的な取り組みをしている自治体のその後の実施状況なども注目していただいて、区として取り入れられる部分は検証していっていただきたいと思います。

それから、自殺対策に関する補助金が出る対象になるものの中には、相談を受ける人の育成というものがあります。相談員を育成するということ以外にも、学校の教員やスクールカウンセラーといった方が、若い方の自殺予防についての専門性を身につけるための取り組みも対象になるようです。


若い人への支援という点で言いますと、学校関係者向けの研修の実施のほか、学校との連携といった点も必要と考えます。


区としてはどのように取り組んでいかれるか、お聞かせください。


(保健予防課長)

現在実施している区職員向けのゲートキーパー研修は、教職員も対象ではありますが、研修内容がいわゆる高齢者のうつとか、そういう内容でございまして、特別な周知を、また教職員を対象にしている状況ではございません。


そこで区といたしましては、教職員の受講者数が増えるように、若年者向けの内容にしたり、また開催時間や周知方法に工夫を加えるなどして、より一層、若者への自殺対策が進むように対策を講じていきたいと考えているところでございます。


(かとうぎ桜子)

ぜひ、既にある資源も活用しながら、対応を進めていっていただきたいと思います。



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荒川区のほうが自殺が多いという答弁がありました。


もともと、足立区が自殺率が高いということで先駆的な取り組みを進めていました。足立区のページはこちら 。荒川区は近隣の自治体であるため、同様に対策が進んだ面があるのかもしれません。

荒川区の自殺予防対策のページはこちら です。

荒川区の自殺の現状については、こちら に載っており、この中に荒川区の自殺者数と人口10万人あたりの自殺率が載っています。ここに書き出しますと、


【荒川区】

2009年(平成21年)自殺者44人 自殺率23.8

2010年(平成22年)自殺者46人 自殺率24.5

2011年(平成23年)自殺者53人 自殺率28.0

2012年(平成24年)自殺者43人 自殺率22.6

2013年(平成25年)自殺者39人 自殺率18.9



10万人当たりの自殺率を出すには、

〔自殺者数×10万〕÷人口 

という計算をすれば良いので、練馬区についても出してみます。(人口は区のホームページから、各年の1月1日現在の数値を使用)

【練馬区】


2010年(平成22年)自殺者148人 人口70万6449人 自殺率20.9

2011年(平成23年)自殺者151人 人口70万7280人 自殺率21.3

2012年(平成24年)自殺者119人 人口70万7903人 自殺率16.8

2013年(平成25年)自殺者129人 人口70万9262人 自殺率18.2

2014年(平成26年)自殺者139人 人口71万1212人 自殺率19.5


参考に、足立区のものも載せます。

【足立区】

2010年(平成22年)自殺者179人 人口66万6450人) 自殺率26.9(この年のみ、人口は4月1日現在)

2011年(平成23年)自殺者151人 人口66万7891人 自殺率22.6

2012年(平成24年)自殺者161人 人口66万8730人 自殺率24.1

2013年(平成25年)自殺者148人 人口66万9143人 自殺率22.1

2014年(平成26年)自殺者142人 人口67万 385人 自殺率21.2


確かに比較すれば若干練馬区が下回っているということはありますが、「だから練馬区は取り組まない」と言えるほどの違いがあるとは思えません。



そもそも、自殺の状況を、自殺率という数字で測って良いのか、という問題もあります。ひとりひとりが「生きていた命」だからです。


また、「自殺者数」の背後には、自殺未遂やリストカットなどの自傷行為といった、「生きていることが苦しい」と感じる方の、数としては見えてこないたくさんの声があると考えて良いと思います。


自殺予防対策は、「死んでしまう」ことを止めるだけではなく、「生きていく」ことへの支援でなければなりません。


そういう意味ではやはり練馬区ももっと積極的に取り組むべきと考えます。


それに、荒川区や足立区も、練馬区と同じ都からの補助金を活用して事業を行っているわけですから、自治体がどれだけ創意工夫できるかというところにかかっているのではないかと思います。