私の英語勉強法:三浦瑠麗さん | 最適性理論(音のストリーム)で英語を覚える

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三浦瑠麗さんの勉強方法が紹介されています。


娘には、特別な英語教育をしていないと語る三浦瑠麗さん。「まずは日本語で深く理解させ、感情のひだを育てないと、深みのある人間にはなれないで終わる気がします」


好きなことを通して学ぼう


東大で農学部に進んだ後、イラク戦争などをきっかけに文系に転向し、国際政治学を志すようになった三浦瑠麗さんは、論壇誌や新聞・テレビのほか、自身のブログでも積極的に発言している若手研究者だ。国際会議で英語で発言する機会を重ねる三浦さんに、英語力を伸ばした方法と心構えを聞いた。


結婚が大きな転機に


 ニュース専門チャンネルへの出演などの傍ら、保育園に通う娘の子育ての合間を縫って、自著の「シビリアンの戦争」を英訳している。英語は読み書きに比べると、話す方が苦手と自覚しているが、海外での国際会議や学会では、積極的に英語で発表や質問をするように心がけている。


 国際会議の初日は、発言するにも英単語がなかなか口をついて出ず、中学で習ったレベルの英語でなんとかこなす。だが、2日目になると「英語のスイッチが入る」。専門用語もスムーズに出てきて、他の出席者を驚かせることも。会議に出席する誰もが英語のネイティブとは限らないが、発表するテーマに関心があれば耳を傾けてくれる。英語が流暢に話せるにこしたことはないが、話の中身がより重要になってくる。


 場数を踏んで、ここ数年間で英語に対するコンプレックスはなくなったが、高校や大学時代には苦手意識はあった。ただ、周囲が語学留学したり、英会話教室に通ったりする中、「英語は特別な職業の人だけに必要なもの」と思い、取り立てて何もしなかった。英語の読み書きはできたし、話せないために苦労した経験がまだなかったからだ。


 英語に触れる機会が格段に増えたのは、日本人の父と米国人の母を持つ1歳年上の夫と、東大在学中に結婚してからだった。英語のみならず米国の文化も身近なものになり、とりわけ義母との会話では今までの自分の常識が覆され、学ぶところが大きかった。


 米国への家族旅行を計画したときのこと。義母が「この時期は autumn leaves がすごくきれいなのよ」と日本語に英語を交えて勧めてくれた。当時は、四季の移ろいを楽しむのは日本人独自の感覚だと思い込んでいた。「アメリカ人も紅葉を見に行くんですね」と率直な感想をぶつけると、むっとした表情の義母から、「当たり前じゃない。何言ってるのよ」と日本語で切り返された。


 そのときは、日本のように紅葉をめでる文化は米国にはないのではないか、との反発心が芽生えたが、後になり何度も義母の言葉を思い出す中で、思いは変わっていった。「当時の自分は、世界を知ることなく日本は特別だと思っていたんですね。義母は日本に30年以上住んでいて、日本をよく理解していた。彼女からは多くを学んできました」


 結婚は、人生の大きな転機になった。東大では将来の進路がはっきりしないまま農学部に進学した。だが、イラク戦争が泥沼化する様子をリアルタイムに報道で見聞きしたことと、当時外務省に勤務していた夫の影響から、社会や政治への関心が高まった。国際関係論の授業を受けるようになり社会科学への興味を深め、東大公共政策大学院に進学。国際政治学への道を歩み始めた。


海外ドラマを繰り返し鑑賞


 大学院のゼミでは、毎週100㌻近い英語論文を読み込むことが求められた。「(英語が)母語の人が読んでも理解するのが難しい学術論文を2年間読み続けたのは、自分の英語力向上に大きく役立った」。当時はやっていた海外ドラマ「ザ・ホワイトハウス (The West Wing)」は、有益な教材になった。米大統領とそれを支えるスタッフが、現実に起こりそうな米国内外の諸問題に対処する政治ドラマで、銃規制問題なども描かれている。自他ともに認める “政治オタク” にはたまらなかった。「1話につき大体10回以上は見ています。好きなエピソードはそれ以上見ました」というほど、のめり込んだ。何度も見るうちに字幕を追うことも減り、俳優の表情を見て楽しみながら、耳が英語に慣れていった。


 聞き取れない表現があるときは、隣で見ている夫に聞いた。「今の英語は native speaker でも分からないと思うよ」と言われることもあった。夫とは普段、日本語で会話するが、一緒に英語のドラマを見ながら、同じ場面で笑えないのは面白くない。その悔しさとドラマの楽しさが学びの原動力となった。


 シーズン4からは日本での DVD 発売が待ちきれず、輸入盤を買った。当時はドラマを視聴して理解できるのは4割程度だったが、シーズン7が出る頃には、ほぼ全て分かるようになった。


 これが一般的な英語教材だったら、英語の勉強に身が入らなかったと思う。続けられたのは、何より興味がある政治の現場を描いたドラマだったからだ。やる気を出すには「まず興味のあるものから」と言い切る。「例えばお料理にすごく関心があるなら、お料理からやればいいわけですよね」。そんな人には、海外の料理番組を見続ける学習法を勧める。「得意分野なのだから、コンプレックスはないでしょう」。自分は何が好きなのか。飽きずにやり続けられるのは何か。それを見つけることが、英語を上達させる秘けつだと実感している。


伝えようという意思が大事


 英語を使ってコミュニケーションをする際に大切なのは、滑らかに話すことよりも、「言いたいことを相手に伝えること」。国際会議の場で英語で話すときに「助詞の使い方を間違ったとしても、私の投げかけた質問が、会議の出席者たちの心を動かしたり、意見を変えさせたりすることができたとしたら、それは成功と言えます」と話す。


 そう考えられるようになったのは、博士論文を提出し、研究者としての経験を積む中で、自分が学者として一人前になったと思えるようになったことと無関係ではない。


 自身が考える一人前と言える学者に欠かせない条件とは、博士論文を基にした単著を出し、その内容が英語で言えることだ。国際会議で発言する際には、「母語(の日本語)で言いたいことをきちんと理解していることと、それを英語で言うという強い意思を持つこと」を常に意識している。「あとは最低限の語(ご)彙(い)があれば、なんとかなります」と笑った。