ラサへの歩き方~祈りの2400km~
五体投地。
耳慣れない単語ですが、文字通り五体を地面に投げ出して祈りをささげる仏教において最高の敬意を表す礼拝の方法です。
日本ではあまりなじみはありませんが、チベットではよく見かける祈り方です。
五体投地による祈りは一回だけでもなかなか骨が折れますが、
2400kmもの道のりを五体投地で歩みながら巡礼をしろと言われたらどうでしょう?
私なら絶対に断ります。
しかし、それを自ら望んで嬉々として歩む人々もいます。
映画『ラサへの歩き方~祈りの2400km~』は、
チベットの小さな村から聖地ラサを経て聖なる山カイラス山への2400kmの道のりを約1年かけて五体投地で巡礼する11人の村人の姿を追ったロードムービーです。
五体投地をしながら聖地巡礼を行う習慣がチベットにあるとは聞いたことがありますが、
その様を実際に映像で目にすると言葉を失ってしまいます。
なんと過酷な祈りなんだ!!
普通に徒歩で行くにしても2400kmという距離はあまりに遠い。
なのに、それを五体投地で行くなんて!!
もちろん、速度は普通の徒歩巡礼より遅いので一日に進む距離は10km程度。
サポートのトラクターと共に歩む11人。
その中には年寄りも子供も、そして妊婦もいます。
寒くても暑くても、雨が降っても雪が降っても彼らは五体投地で祈りをささげながら進み続けます。
しかも、その祈りは自分の願いをかなえるためのものではなく、他者の幸福、平安のための祈りです。
まず人のために祈り、世の平安を祈り、そして最後についでに自分のことも祈りに加える。
それとても我々が神社仏閣でお願いするような「何かがほしい」「何かがしたい」「何かが成就しますように」などといった欲望に基づいたものではなく、漠然とした幸せ程度のものでしょう。
他者のために祈るというのはチベット仏教の基本的な考え方だそうですが、
劇中でも人によって表現は違いますが、同じようなことが多くの人から繰り返し述べられていました。
考えてみると、五体投地というのは全身を地面に着け、誰よりも低い場所に自分を置くという行為です。
高みからではなく、最も低いところから他者の幸福を祈る。
とても謙虚な祈りです。
誰よりも低いところに身を置いたイエスのように、というキリスト教本来の祈りのあり方とも通じるものがあります。
自己愛が肥大化してしまっている現代社会。
常に自分のために行動し、自分のことしか考えられなくなってしまいがちな私たちも立ち止まって考えるべきなのかもしれません。
チベットの小さな村に住む彼らの暮らしはとてもシンプルです。
余計なものを持たず、貧しいながらもきちんと地に足のついた生活をしています。
だからこそ、自然とあの祈りができるのでしょう。
あまりに多くのモノに囲まれ、あまりに多くのことを知り過ぎてしまっている私たちが全く同じことをするのは難しいでしょう。
それでも、私たちが彼らから学ぶことのできることは数多くあると思います。
道中、トラクターが無謀な運転をする車にぶつけられた時も彼らはすぐにそのドライバーを許し、行かせてしまいます。
事故で動かなくなったトラクターの荷台だけを男たちは押して進み、女たちは五体投地で進みます。
不慮の事故だけに、その場合は五体投地も免除されるのかと思いきや、
一定距離を進んだ後、男たちは元の場所に戻り同じ道を五体投地で進みだすではありませんか。
驚きです。
思わず口をぽかんと開けてしまいました。
不測の事態だし、きっとそこは誰もとがめないでしょう。
しかし、彼らはきちんとすべての道のりを五体投地で進みます。
それはおそらく彼らにとっては、聖地へ行くという目的もさることながら、
その過程で祈りをささげながら巡礼の道を行くということの方が大切だからなのでしょう。
目的を果たすことさえできれば手段は選ばない。
そんな価値観が是とされ、承認を得ている今の日本。
そのことが一体何をもたらし、どんな世の中になってきているか・・・。
我々はシンプルに祈りをささげる彼らからもっと学ぶべきなのかもしれません。
日本酒業界でも同じことが言えます。
過度の成果主義は一時的な繁栄をもたらすかもしれませんが、将来は分かりません。
今は一種の日本酒ブームのようになっています。
酒を造る者も売る者も今こそ気を引き締める時です。
売れる酒にばかり目がいき、本質から外れてしまえば日本酒に明るい未来はないでしょう。
何が大切なのか、今一度立ち止まって考えてみる時期なのかもしれません。
京都新聞文化センター日本酒教室
11月12日(土) 酒場の作法~スマートな呑み手になるために~
12月1日(土) 「萩乃露」醸造元、福井弥平商店蔵見学
お申し込みは京都新聞文化センターまで
第34回酔読会
『肉』
日時:2016年11月29日(火)20:00~23:00頃
場所:日本酒BARあさくら
会費:2500円(テーマに沿ったお酒を7、8種類)
※テーマに関する本を読んでご持参ください
11月の休業日
11月1日(火)
11月8日(火)
11月10日(木)
11月15日(火)
11月23日(水)
11月29日(火) ※「肉」酔読会
営業時間19:30~25:00
11月の昼酒営業日
11月5日(土)
11月19日(土)
11月26日(土)
11月27日(日)
※11月20日(日)は出張日本酒BAR@壬生京極まつり
※昼酒営業時間は15時過ぎ~18時くらい
夜の営業は19:30~25:00