赤 / メカクシ | 安眠妨害水族館

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赤/メカクシ

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1. パラノイア
2. 午前2時ノ病
3. ムラサキ憐歌

2014年にリリースされたメカクシのシングル。
もう1枚の「白」との同時リリースで、彼らの表裏を表現した意欲作です。

メロディアスな楽曲を中心に収録した「白」に対し、こちらは激しさを重視。
どちらが表でどちらが裏という意図なのかはわかりませんが、色から連想するイメージと音楽性がリンクしているので、ある程度内容は予想できますかね。

1stシングル「きさらぎ駅」では、和風ダークな路線に進んでいくような印象を受けたのですが、もっとコテコテに振り切れた感覚。
これは、Gt.カヱデさんが脱退した影響なのか、「赤」というコンセプトを追求した結果なのか。
どちらにせよ、本作に限定した感想としては、和風要素は薄まり、ヴィジュアル・ラウドなスタイルへと変貌したな、といったところです。

特に、「パラノイア」のゴリゴリなラウドサウンドに驚いた。
ギターが重いリフを奏でると、それに呼応してリズム体もズタズタと重低音を響かせ迫っていく。
デスヴォイスも多用し、メロディアスになるサビにおいても裏でシャウトを重ねるなど、とにかくハード。
シンセの使い方、メタリックなギターソロ、部分的には開けたキャッチーさも・・・
まさに現代コテコテシーンにおける王道的なアプローチであり、掴みとしては機能しそうです。

「午前2時ノ病」も、重苦しさ、ハードさは継続して。
煽り曲にも使えそうなBメロのノリなんかは、実に象徴的であろう。
一方で、癖のあるメロディにも注目したい。
か細いファルセットには賛否両論ありそうだが、ダークさとポップさが入り乱れた歌メロは耳にこびりついて離れません。
テンポを落ち着けてまで組み込んでいるくらいだし、相当なメロディへのこだわりがあるのかと。
ストロングポイントとして、もっと伸ばして欲しい。

「ムラサキ憐歌」は、ここまで来たら最後まで突っ走ろうという意図でもあるのか、疾走感のあるスピードチューン。
サビメロがやや強引で、もう少し丁寧さがあっても良かった気はしますが、見方を変えれば、衝動的とも言える。
アレンジを練り込むよりも、この勢いをパッケージしたほうが得策と踏んだのかもしれないな。
すっきり収まりすぎるよりも、かえってインパクトを残しています。

どれも、ガツガツと攻め込む姿勢を出しているのだが、3曲ともそれぞれの味があり、一辺倒になっていないのは評価できる。
荒削りではあるが、激しさの中にも耳を奪うフレーズもちらほら。
ポテンシャルの高さをうかがわせているのでは。

あとは、そこから何が上積みできるか、ですね。
アイディアをそのまま押し切ってしまう勢い、凄みは間違いなく武器なのであるが、その分、メカクシにしか出せないサウンドというレベルにまでは昇華しきれていないのも事実でしょう。
経験値を増やして、これらのチャレンジを1日でも早くモノにしてほしい。
曲が良いだけに、化ける可能性は十分にあるはずです。

<過去のメカクシに関するレビュー>
きさらぎ駅