死ぬくらい大好き愛してるバカみたい / HERE | 安眠妨害水族館

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死ぬくらい大好き愛してるバカみたい/HERE
 

1.告白
2.死ぬくらい大好き愛してるバカみたい
3.解放エクスペリエンス
4.絡みつくような愛をくれてやる
5.私に溶けてしまえばいい
6.煩悩OH NO!!
7.ゾッコンROCK ON
8.眩しくて何も見えない
9.戯曲・カマキリの生態系から考察する愛の起源 ~居酒屋編~
10.みっともないぜ愛がこぼれてる
11.メカニックマミ
12.END ROLL

ex-インビシブルマンズデスベッドのメンバーを中心に結成されたHERE。
活動シーンとしてはV系よりも、残響レコード関係を中心に、ロキノン系のフィールドが多いようですね。

本作は、タワーレコードでの限定販売となった1stフルアルバム。
キーボーディストとして、ex-ミドリのハジメタル氏が参加している他、コメントを寄せている面々が豪華で驚かされます。
デモ音源は発表されていたものの、アルバムの完成まで、2008年の活動開始から、実に5年。
随分と練りに練ったのだな、という印象です。

気になる音楽性は、活動フィールドに順応するような、オルタナロック。
インビシブルマンズデスベッド時代は、もっとダウナーで暗い楽曲を中心に展開していましたが、より激情的な表現を追求すべく、キャッチーな路線も必要とあれば取り込んでいく姿勢。
特に、歌詞の面では、変化がはっきりと見てとれる。
ストレートすぎて、かえって狂気じみているくらいのラブソングがメインで構成されています。
表題曲が、「死ぬくらい大好き愛してるバカみたい」だからなぁ。

率直に言ってしまえば、ダサい。
だが、格好良い。

これで、軟弱なポップチューンだけで終わってしまうのであれば、"あの尖っていたバンドも、変わってしまったものだな"、の一言で済むのですけれど、サウンドにおける尖り具合は、相変わらずなのです。
ルール無視の難解さすらあるギターフレーズの絡まり合いの中、歌メロだけがポップさを保っており、ラブソングを歌っているはずなのに、異常性だけが際立う、不思議な耳触り。
9mm Parabellum Bulletあたりが好きな人には、たまらない音楽ではなかろうか。

「死ぬくらい大好き愛してるバカみたい」から、「私に溶けてしまえばいい」までの前半戦の流れは、楽曲単体での内容も、収録曲のバランスも、完璧と言っていいほどの高揚感。
ダサさも、ここまで振り切ってしまえば、十分に強みとなる。
気持ちの良いアウトロー感覚。

ちなみに、彼らの目指すところは、ロックに演劇の要素を足した、ロックオペラとのこと。
奇抜なメイクや衣装も、そういった舞台性を意識してでしょうか。
「戯曲・カマキリの生態系から考察する愛の起源 ~居酒屋編~」は、そのような方向性をパッケージしたラジオドラマになっており、役者としての一面もうかがうことができる。
次の曲へとつながる前フリに近い位置づけなのですが、どうせだったら、もっとストーリー性のある本格的な演技も聴いてみたかったですね。

V系しか聴かないという人は、守備範囲から漏れてしまっているかもしれません。
しかし、親和性は高いと思いますし、前身バンドが好きだった人や、残響系バンドもいけるよって人は、流通経路は限定的ではありますが、是非耳にしてほしい一枚です。