純潔詮議支離滅裂 / KuRt | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

純潔詮議支離滅裂/Kurt
¥2,625
Amazon.co.jp

1.高所恐怖症
2.SPEED STAR
3.午前3時星降る夜
4.TAXI DRIVER
5.最後のゲーム
6.60億のナミダ
7.ピィタァパンが死んだ日

KuRtの1stミニアルバム。
2005年のリリース。
パンキッシュな楽曲に軸を据えるとともに、時代に合わせた様々な手法も取り入れ出した頃の作品です。

1曲目に放たれた「高所恐怖症」は、タイトルとは裏腹に前向きな曲。
コンパクトにまとめて、アルバムへの導入的な位置づけなのかな。
低音から高音への切り替えに、てんてんさんのボーカリストとしての成長が見られます。
後半で突如スピードアップするのが、2曲目以降の勢いづけになっているような。

続く、「SPEED STAR」は、ヘヴィーさがあるハードチューン。
ダークさがあるも、流れとして受け入れやすく、逆ダイパートへ突入するラストのノリには、テンションが上がる。
ただ、二番煎じへの批判が込められているような歌詞は、どうなのだろう。
いやいや、あなたたちだって・・・と思ってしまうのは、僕だけでしょうか。

「午前3時星降る夜」は、一転して、ポップナンバー。
明るいだけでなく切なさがある、ノスタルジックなAメロから、音が厚くなり、疾走するBメロ、サビへと繋がっていきます。
何より、てんてんさんの歌唱が圧巻。
音を外す場面もあるけれど、こういう感情剥き出しに歌うタイプの楽曲は、グッとくる。
ラストシーンの盛り上がりも良いですね。
KuRtの持つ、スキルだけでは語れない魅力を感じるには、この曲が一番だったりするのでは。

ジャジーでアダルティーな「TAXI DRIVER」は、ちょっと意外性のあるアプローチ。
この曲だけ、フィクションで歌詞を書いたとのことで、なんだか浮いているなぁ。
最後にも寸劇が入っているし、当時はこういう楽曲が流行ったとはいえ、なんとも世界観が狂ってしまう。
音楽性の幅を持たせる意味ではアリなのだけれど、歌詞は、いつも通り、等身大で書いてほしかったです。
「最後のゲーム」は、歌謡曲テイスト。
これも当時の流行を取り込んだといったところではあるのですが、サウンド的にはずっしり重く、なんとかオリジナリティも上乗せしようとしている様子。
ただ、素直にやらない分、強引さもありますか。
この2曲は、どうも蛇足感が強いですな。

世界観を重視した「60億のナミダ」を噛ませて、ラストは「ピィタァパンが死んだ日」。
締めは青春ヴィジュアルポップの名曲がくるっていうのは、お決まりなのでしょうかねぇ。
「60億のナミダ」までは、ヘヴィーなサウンドを押していたのだけれど、この曲の音の作りはサラっと軽め。
そのせいか、これまで抑圧されていた何かが解放されるように、爽快感があってスカっとします。
ノスタルジックな哀愁。
感情爆発系の楽曲を歌わせたら、やはり強いな、と再実感しますよ。

全体的には、アレンジに、もっと工夫が欲しい。
目指したいところは、V系外のロックシーンのスタンダードを、V系テイストに落とし込んだサウンド、というのが明確になってきているのは収穫だったのですが、まだオリジナルに昇華できていません。
音に厚みを持たせるまでは良いのだけれど、そこからのプラスアルファが、テンプレ通りで終わってしまっているのが残念。

とはいえ、好きな曲は、かなり聴き込んだ。
当たり曲は、大当たり中の大当たり。
結局、良くも悪くも、Vo.てんてんさんの存在感が大きいバンドなのですよね。
新境地的な楽曲は、どうもしっくりきませんでしたが、相性が良い曲は抜群にキレていました。
もう少し、音楽性を絞り込んで、打率を高めてくれれば、名盤になり得たポテンシャルを秘めていたのですが。

<過去のKuRtに関するレビュー>
赤い激情
折り畳み式おぢいちゃん