DROP / 石月努 | 安眠妨害水族館

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DROP/石月努
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1.OPENING
2.GAME
3.DROP
4.勇気
5.青ノ翼
6.DANCE DANCE DANCE
7.LOVELESS

ボーカリスト・石月努の、ソロとしては初となるアルバム作品。
FANATIC◇CRISISの解散から、ソロ活動の開始までに、実に7年間ものインターバルがあったわけですが、いざ動き出したらペースが速いものですね。
シングルを出したばかりだと思ったら、いつの間にか、ミニアルバムが発表されていました。

前作「I.S./銀ノ雨。」では、実験的な要素も取り入れた努さん。
しかしながら、本作では、ストレートにロックンロールなナンバーを、緩急つけてバランスよく揃えたといったところ。
もともと、ポップでキャッチーな楽曲を得意としていたこともあり、素直なアルバムを作らせたら、やはり強いですな。

デジタル感のあるインストから、手品のように鮮やかにバンドサウンドに移行すると、「GAME」のスタート。
これがまた、ロック色が強いアッパーチューンで、ほんのり漂うオルタナ感と、FtCでも見られたサイバーなサウンドとのマッチングが絶妙です。
ここまで様子見だった従来からのファンも、これでがっつりと引き込まれたのではないかと。

続く「DROP」も、少しダークなテイストもあるサイバーロック。
艶かしいギターのフレーズが、大人びた雰囲気を出している。
ミディアムテンポながら、しっかりと高揚感もありますね。
「勇気」は、シンプルなバラード。
こういうナンバーが違和感なく出来るあたりは、努さんの強みでしょう。
全国のユウキさんは、これをカラオケで歌えば良いと思う。
入るかは知らないけど。

個人的に、もっとも好きなのが「青ノ翼」。
メロディ部分は比較的ポップなのですが、サビになるとダークでメロディアスなナンバーに。
どことなく、FtCの「SLEEPER」を彷彿とさせるようなボーカルラインに、なんとも高まります。
王道V系ロック、ここにあり。
「DANCE DANCE DANCE」は、その名のとおり、サイバー感が更に強まって。
もっと振り切っても面白かったけれど、全体に馴染むように、トーンは落ち着かせたといったところでしょうか。

「LOVELESS」は、ラストっぽい、疾走感のあるポップチューン。
恥ずかしげもなく、「I love you」なんて歌ってしまえるヴィジュアル系アーティストというのも、今では貴重かもしれません。
この楽曲に限った話ではないのだけれど、全体的に、歌詞はダサい。
だけど、これも含めて、努さんっぽいのだよなぁ。

フレーズや音作りなど、だいぶシンプルに仕上がった。
とはいえ、本作では、近未来的な電子音が散りばめられ、骨太なバンドサウンドと上手い具合いに絡まり合っているので、往年のFANATIC◇CRISISらしさを見出せる気がします。
シングルでの実験作的な雰囲気に、いまいちのめり込めなかった人も、これだったらすんなり聴けるのではないでしょうか。
もちろん、バンド時代を知らなくても、とっつきやすいメロディは健在ですので、聴きやすさは文句なし。
低音に響く声質に抵抗感がなければ、大人のポップロックというのも、味があって面白いものですよ。

<過去の石月努に関するレビュー>
I.S./銀ノ雨。