Kamikaze et Luna / Ant1nett | 安眠妨害水族館

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Kamikaze et Luna/Ant1nett
¥1,000
Amazon.co.jp

1.Kamikaze et Luna
2.Lucifer
3.La Saison
4.From Youth to Death
5.From Youth to Death(Club Midnight)
6.La Saison(Club Bossa)
7.Lucifer(Club Knight)
8.Lucifer(Kawaii English)
9.Lucifer(REMIX Kawaii English)

ex-賛美歌のVo.yabukiさんが、現在在籍しているプロジェクト、Ant1nettの1stミニアルバム。
Ant1nettでは、Masa名義で活動しているようですね。

このAnt1nett、ヨーロッパを拠点に活動しているとのこと。
V系の海外進出が本格化する昨今ですが、完全に海外のみで活動しているアーティストは、珍しいのではないでしょうか。
その弊害として、情報が入ってこないってのは痛いですけどね。
オフィシャルサイトもフェイスブックで、いつライブをやっていて、いつ音源を出したのか、まったくもってわかりません。

しかしながら、本作を含めたCDの何枚かは、事務所がAmazonに出品しているため、日本にいながら購入可能。
1,000円で、9曲入りということで、試しに買ってみたのが、この「Kamikaze et Luna」。
まぁ、曲名を見てわかるとおり、実体的な楽曲は4曲のみです。
5曲目以降はミックス違いで、5~7は、歌も入っていませんので、ご留意くださいませ。

さて、前置きが長くなりましたが、本編の感想に。

yabukiさんの代表的なバンドである賛美歌と言えば、メジャー進出したにも関わらず、ぼんやりとしたサウンドで、本当にプロか?と疑いたくなるスキル、音質でしたが、そうは言っても、あれは90年代のこと。
既に干支もひと回りしたわけだし、その間、録音や打ち込みの技術も、格段に進化している。
当然ながら、このAnt1nettだって、現代風のサウンドアプローチに・・・

・・・なっていません。

相変わらず、布団をかぶって歌っているような微妙なボイスエフェクトに、パンを左右に振って音をゆらゆらさせる音響効果を重ね、メロディラインを行方不明にさせている。
音質についても、当時ほどではないにしても、まったくもって現代の技術とは思えないチープさ。
人を不安にさせる音楽を狙っているのか、これが彼の美学なのか。

楽曲としては、耽美でクラシカルなメロディに、大人びた浮遊感のある演奏を乗せてきていて、それなりに面白そうな展開。
ただし、音質や歌唱力さえ安定していれば。
その段階まで聴かせてくれないのが残念です。
「La Saison」のような、しっとりとした歌モノは、相当な我慢が必要。
これを歌いこなせる実力があれば、かなりお洒落なのだけれど、もったいない。

日本のV系シーンとの関係を遮断したことにより、日本の流行とは違った独自の音楽が育っていれば興味深かったのですが、結果としては、時間が止まったまま、生きた化石のようなバンドになってしまった。
90年代の音楽そのままってのは、それはそれで魅力なのかもしれないけれど、スキル面での成長くらいは見せてほしかったですよね。
実際のところ、ヨーロッパでは、どういう評価なのだろうか。

賛美歌のように、ネタになりそうな破壊力もなく、中途半端にこなれた分、インパクトも薄い。
値段がお手頃なのだけが救いですかね。
と、言いたい放題、好き勝手書いてからで恐縮ですけれど、ただ下手なだけのバンドだったら、わざわざ海外から取り寄せたりはしないですよ。
なんだかんだで、直近でリリースされたフルアルバムも気になってしまうあたり、yabukiさんのカリスマ性を感じずにはいられません。