Hydrag / GOTCHAROCKA | 安眠妨害水族館

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Hydrag 通常盤/GOTCHAROCKA
¥1,260
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1. Hydrag
2. Erica
3. Kiravistars

ex-ヴィドールの樹威、ex-PhantasmagoriaのJUN。ex-しゃるろっとの十夜、ex-Sugarの真悟という、豪華なメンバーで結成されたガチャロッカ。
サポートドラムも、ex-ヴィドールのテロさんが担当しており、本当に個性が強い顔ぶれが揃ったものです。

本作は、流通音源としては初のシングル。
全員が作曲に関われるうえ、前身バンドの毛色が、どれも重ならないという、どんな音が飛び出すか想像できない彼らですが、本作については、「Hydrag」をJUNさん、「Erica」を樹威さんがコンポーズを担当しています。
通常盤には、「Kiravistars」を追加収録されていますが、こちらも、2曲目同様に樹威さんが作曲したナンバー。
まずは、結成の中心となった二人が指針を定めたといったところでしょうか。

さて、気になる音楽性ですが、全体観として、彼らの前身バンドに例えるのであれば、ヴィドールに近いような。
メロディを活かした歌モノを軸にして、おふざけ的な遊び心を、煽りのパートで持ってくる手法。
リードトラックである「Hydrag」が象徴的で、バンド名での掛け声や、コーラスワークを多用して、王道のダーク路線で進む部分と、ポップに明るく楽しむ部分との急激なギャップを生み出しています。
この辺のコテオサ具合が、第二期のヴィドールを彷彿とさせるのだよなぁ。

また、樹威さん作曲の2曲は、ストレートなメロディアスナンバーに仕上げており、こちらは第三期のメジャーデビュー直後のヴィドールを思い出させる。
歌詞や歌メロのセンス、そして何より、あの滑らかで艶のある歌声を張り上げられたら、樹威さんっぽさを感じずにはいられない。
「Erica」は、ガチャロッカとしてはじめて作った楽曲で、シングル候補でもあったようなのですが、なるほど、それもうなずけます。
メジャー感があって、とてもシングル的。
自分の声のツボを、しっかりと把握しているといったところ。

サウンド面では、JUNさんの個性も相応に発揮されている。
どことなく、hideさんを連想させるデジタルでカラフルなギターフレーズは、マイナーコードの曲調であっても、爽快感とアッパーな空気を運びます。
コーラスも前に出ていて、ツインボーカルのようなアプローチも可能になったという意味では、更に幅は広がっていくのかも。
「Hydrag」で見せる、サビに童謡のメロディを持ってきてしまうチャレンジ精神も、バンドのカラーに溶け込んでいますね。

当たり前と言えば、当たり前なのですが、安定感は抜群。
ベタとハズシの、微妙な調整位置を熟知しているので、大コケするイメージはわきません。
後期ヴィドールや、樹威さんのソロが好きなら、無難に気に入るでしょう。

しかしながら、無味無臭と言えなくもない。
思ったよりも当たり障りないというか、すっぽりコンパクトに収束してしまったというか。
もっとアクが強すぎるくらいに個性的なものを期待していたのも確かなわけで。

特に、十夜さん、真悟さんの存在感が、現状薄いですな。
真悟さんは、Moranのサポートだった頃の方が、アグレッシブで癖のあるベースをガシガシ弾いていた気がするのだけれど、本作では、ちょっと控えめに聴こえてしまう。
自分のプレイスタイルにバンドの色を馴染ませるには、まだ、時間がかかるのだろうか。

12月には、ミニアルバムのリリースも決定。
ライブ活動や、曲作りの過程で、様々なタイプの楽曲が出そろって来れば、もっとワクワクした音楽への昇華を可能とするポテンシャルは十分にある。
まずは、コンビネーションを高めてほしい。
これだけで、バンドの全貌を見たとは言いにくいような気はします。