Sadisgate / MEJIBRAY | 安眠妨害水族館

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Sadisgate(通常盤)/MEJIBRAY
¥1,575
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1. Sadisgate
2. Black baccarat
3. 剥落

2か月連続リリースの第一弾となる「Sadisgate」。
通常盤は、既に完売してしまったシングル「KILLING ME」から、「剥落」が収録されています。

結成から1年ちょっとで、すっかり人気バンドの仲間入りを果たしたMEJIBRAY。
懐かしさを感じる発狂シャウト&キャッチーなメロディという組み合わせが、うまくハマったことに加え、どこか戦略的に話題を掻っ攫うあざとさにより、驚くような速さでステップアップしていますね。
本作は、アルバムリリース後、初の流通作品となるため、今後の方向性を占ううえでも、重要な位置付けなのかもしれません。

「Sadisgate」は、彼らのシングルとしては、少し意外な印象を受けた。
ミディアムテンポで、ずっしりとした重さを際立たせたナンバー。
単純に、従来のシングルとはタイプが違う楽曲であるというのも、もちろんあるのですが、これまでに見られた、一度聴いたら忘れない、フレーズのインパクトが薄れたというのが一番でしょうか。

その分、サビでは、オクターブ違いで同じ歌メロを重ねる工夫があって、これはこれで癖にはなります。
きちんとサビでメロディアスになり、キャッチーさがなくなったわけではないのだけれど、より雰囲気重視になったというか。

それにしても、Vo.綴さんのシャウトのパターンが増えましたね。
耳をつんざくハイシャウトから、地を這うようなデスヴォイスまで、シャウトだけである程度の表現ができるようになっている。
メロディを歌う際の不安定さを打ち消すために、シャウトを増やすというのは、昔ながらのコテコテバンド流の誤魔化しテクニックであるものの、そこで明らかに成長を見せつけてくれると、見方も変わってきます。

カップリングの「Black baccarat」が、実はキラーチューン。
ハードさに振れている本作において、ポップさすら感じる瑞々しいメロディが新鮮に聴こえる。
一瞬、CDを間違えたかと思ってしまう導入部分も面白いです。

歌メロや、構成だけを切り取れば、最近よくあるキラキラ系の構図なのですが、そこをMEJIBRAY風に昇華しているといったところですかね。
流れるメロディの中、気持ち良くファルセットに抜けたくなるところで、シャウトに行く捻くれ方が、彼ららしいと思う一方、これで歌い上げるくらいのスキルを持てれば、更に上に行けそうなのになとも考えたり。

地味に、間奏が格好良いです。
途中までは、クラシックギターのクリーンな音色でお洒落に進む。
ベースも、合わせて歌っているようで、ここの絡みが聴きどころかな。
シャウトを交えたハードなパートを挟むと、ディストーションを噛ませたメロディアスなギターソロに移行し、こちらも王道好きにはたまらない展開。
個人的には、表題曲よりも好みです。

「剥落」は、元のバージョンを聴いていないので、変化についてはノーコメント。
ぐちゃぐちゃ、ドロドロなおぞましさと、ミスマッチに響く、クラシカルな鍵盤の音。
沈み込んでいくような世界観に、絶叫だけが反響していきます。

描き下ろしの2曲に対して、既存曲の安定感を、という配置になりそうなところで、ぶっ飛んだ楽曲を持ってきたあたりは、チャレンジ精神旺盛。
ただ、ハードなミディアムナンバーという意味では、「Sadisgate」も同系色なので、通して聴いたときに、聴き疲れしてしまう。
結果、なんとなくダレてしまうのは否めず、この手の楽曲を再録するには、まだ気が早かったかもしれません。

総合的に聴いて、前述のとおりインパクトは弱め。
ハードでコアな部分を、軸として打ち出したような全体観でした。
キャッチーさを押し出すなら、「Black baccarat」がリードチューンでも良かったとも思うのだけれど、まぁ、バランス的には、この配置しかないかな。
持っている勢いを、内向的なアプローチで、圧し込めてしまったような空気感があって、後からじわじわ良くなってきそうな気配はある。

第二弾の「EMILY」では、どういうものが飛び出すか。
仕掛けも意識した曲作りができるバンドだけに、発売が待ち遠しいです。

<過去のMEJIBRAYに関するレビュー>
Emotional 【KARMA】
サバト