美意識過剰 / IZAM | 安眠妨害水族館

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美意識過剰(初回)/IZAM
¥3,980
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1. 博愛サプリメント(Appetizer Taste)

2. 極東極上☆Night

3. 失恋モノグラム

4. 蕾の告白

5. 予感

6. 永遠の純潔

7. 夏色吐息

8. 有罪プロムナード

9. アイリス

10. 君は罪

11. 秋桜

12. 恋してクラ☆クラ

13. 美意識過剰

14. 博愛サプリメント(Dessert Taste)

31.シークレットトラック


90年代後半に巻き起こったV系ブームの火付け役、SHAZNAのVo.IZAMさんによるソロアルバム。

初回限定盤は、六角形仕様と、他に見たことがない仕様です。


男心をコンセプトにしただけあって、メジャー進出後のSHAZNAのイメージである、メルティで甘々な歌い方だけではなく、男らしい硬派な歌い方も見せている。

序盤の「博愛サプリメント」、「極東極上☆Night」は、パンキッシュ。

荒々しいシャウトも意外性ありで面白いです。

「極東極上☆Night」では、「うる星やつら」のラムちゃんの声による導入があるなど、遊び心もあり。

こういうアイディアを実現できるあたりは、なんだかんだで、メジャークラスの人脈があるからこそですね。


しかし、彼のソロ活動におけるメインディッシュとなるのは、それ以降なのかな。

「失恋モノグラム」以降は、70年代ポップスをベースにしたような歌謡ポップテイスト。

アダルティ路線のアイドルポップを、ロック風にアレンジしたような構成で、レトロ感が漂います。

ほんのり、ケルトっぽい音使いを織り込んでみたり、エフェクトを掛けて音を歪ませてみたり、ミスマッチなアレンジを違和感なく組み入れているのもポイント。

もともと耳馴染みの良いメロディたちに、アクセントが加わっていました。


IZAMさんのポップソングとの相性や、一貫したコンセプトがあるため、流れが心地よく、なかなか聴きやすい。

ボーカリストのソロとなると、正統派なロックだったり、自然体なポップスになりがちなところ、バンド以上にコンセプチュアルな作品をぶつけてくるのも、彼らしいです。

他のバンドがやっていないことを邪道だろうがやってみる、というモチベーションこそが、ダーク系バンドが中心だったシーンでのポップバンド・SHAZNAのV系たる所以だったわけですが、その辺の心意気は変わっていないようですね。



作品の終盤、表題曲の「美意識過剰」と、アレンジ違いで再度収録されている「博愛サプリメント」では、再び硬派なパンクロックな方向性に帰ってきます。

ただし、これも、それまでの歌謡ポップス路線を無にするものではなく、培ってきたメロディラインなどは応用しつつ、現代のロックへ結びつけるという役割として受け入れてみると面白い。

ベースが同じ(1曲目の続きなのかも)「博愛サプリメント」が、ここまで印象が違って聴こえるのかと、驚かされる。


シークレットトラックは、曲と言うよりも、寸劇ですね。

次のアルバムの基盤となる曲の、メロディのさわりだけ紹介するという位置づけでしょうか。


バンド感のあるSHAZNAとは一味違いますが、IZAMさんの歌うポップロックに愛着がある人は、聴いても損はない作品かと。

ヴィジュアル系における昭和歌謡系とも、似ているようで、あまり重なっていない印象。

2003年の作品であることを考えれば、個性的な作品だったと思います。

高音域が弱いことと、歌い尻で跳ねるような癖は、聴く人を選んでしまうかもしれません。