Metamorphose / 凛 | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

Metamorphose[TYPE B]/凛
¥1,890
Amazon.co.jp

1. Metamorphose

2. Walking in the rain

3. Sterilization(BONUS TRACK)



神、KISAKIが率いる、凛の2ndシングルが、このMetamorphose。

1stは、前バンドであるPhantasmagoriaの系譜を受け継いで、壮大でシンフォニックなシンセを多用した、コテコテ路線でしたが、新しいバンドとして新境地を見せ始めているのが、本作ではないかと感じます。


タイトル曲である「Metamorphose」は、らしさを失わないコテコテ感はそのままに、構成の面で、捻ってきたなと思わせる部分が多い。

ディスコ風のダンサブルなイントロから、何がはじまるのかと思わせつつの導入は斬新でしたし、そこから強引にはならずに王道の展開に持ち込めるっていうのは、さすがですね。

ダンサブルなだけでなく、シンフォニックな耽美メタルの要素も取り入れるなど、最近流行っている音使いはしっかりと自分のものにしながら、KISAKIさんのバンドらしい、昔から変わらないメロディアスさも健在。

うまく新旧融合させています。

キーを落として淡々と歌うメロディと、声を張り上げて歌うメロディが波のように押し寄せ、まるでサビが2種類あるかのような構成も面白い。

統一感があるのに、その中でのメロディは目まぐるしく変化していくので、長めの曲であるにも関わらず、長さを感じさせません。

なかなかのインパクトを残す楽曲です。


カップリングの「Walking in the rain」は、路地裏感のあるレトロダークなナンバー。

確かに、こういうミドルテンポのハネるリズムの曲って、Matina系のバンドにはありがちではあったのですけれど、KISAKIさんのバンドでとなると、今までなかったような。

懐かしいことは懐かしいけれど、新境地とも言える作風なのではないかと。

RIKUさんのボーカルも、案外似合っている。

こういう曲って、やさぐれた荒々しい歌い方で歌う人が多いけれど、ここまでコテコテの艶っぽい歌い方をしてみても、マッチするもんなんですね。


3曲目は、TYPE Bにのみ収録されている「Sterilization」。

まさに90年代のコテバンのボーナストラックといったところ。

メロディよりも勢い重視で、音はインダストリアルに加工され、あえてメリハリがなくリミックスしたようなアレンジ。

シングルや、アルバムには収録しにくいけれど、雰囲気的に作ってみました系の曲を、ボーナストラックにすることって、昔は結構あったのですよね。

初回を購入するコアなファンだけ。通常盤を買っても、損したと思うような曲でもないよ、という。

最近は、ボーナストラックはCDを売る戦略のひとつなので、クオリティが上がってきていますが、それはまた別の話。

この曲については、そんなわけで可もなく不可もなくっていう感想なのですが、基本的に英詩のところに、「夢は腐る」という日本語の語りがポツンと浮かんでいるのが、妙に気になってしまう。

余韻が残るというか、印象が強いというか、このフレーズにパワーがあるんですよ。

気になってしまっている時点で、作り手の勝ちですね。


トータルとして、バラバラの曲が収録されているようで、まとまりもあるような。

決して時代に置いていかれることなく、今までのファンを失望させることなく、筋は一本そのままで、進化している。

ひとつ、間違いなく言えるのは、KISAKIさん、まだまだシーンを動かす勢いは衰えていません。

そろそろアルバム作品にも期待したいところです。