世界を撃った男 case5 ピースメーカー / ケミカルピクチャーズ | 安眠妨害水族館

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世界を撃った男 case5 ピースメーカー/ケミカルピクチャーズ
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1. Walking Ashland

2. 溺れる魚

3. 素晴ラシキ忌々シサ

4. 世界を撃った男のテーマ-I love suG my life-


ex-KuRtのVo.てんてんさんを中心に結成された、ケミカルピクチャーズ。

ex-パンプキンヘッドのGt.ruiさんが加入し、5人体制になったところでリリースされた、5か月連続リリースのラストを飾る一枚です。


最近の流行りとも、昔ながらのV系ミュージックとも異なる音楽のアプローチが新鮮でアツい彼らですが、勢いだけじゃない、歌モノだけでもないってところを、ここで、再び見せつけてくれたのが、本作。

アメリカ人であるBa.Jimiさんの従来の型にハマらないセンスが、新しい血としてバンドにエネルギーを注いでいることを、アメリカンロックをベースにしたようなアグレッシブなアレンジに、バシバシと感じられます。

比較的、ハズレの少ないバンドではありますけれど、連続リリースの第一弾、第二弾のインパクトが強すぎて、第三弾、第四弾は少し物足りなかったというのが正直な感想。

しかし、第五弾にして、これはなかなかパッション溢れる良い作品ですよ。


PVが作成された、リードトラック「Walking Ashland」は、メジャー進行のアップテンポな楽曲。

古臭いアメリカンロックのテイストを、あえてヴィジュアル系の音楽として昇華させることで、ネオ・ロカビリーとでも言いましょうか、ノリに特化した、高揚感のある展開に仕上げています。

てんてんさんは、感情に任せて歌い上げるタイプのボーカルさんではありますが、あえてラフにぶっきらぼうに歌うような試みが当たっていて、表現の幅が広がったような印象。


「溺れる魚」は、一転してマイナーコードでの展開になりますが、メロディアスさとは裏腹、小手先のものになっていない感情の爆発がサビで見られます。

ツタツタリズムで、一気に盛り上げる演奏と、張り裂けそうな叫びを響かせるてんてんさんの荒々しいボーカルが格好良い。

綺麗に声を出すだけしか能がないのがボーカリストじゃないだろ、と言わんばかりの気迫が感じられますね。

サビで開けるタイプの楽曲は、肩透かしになるものも少なくないのですが、このドラマ性には文句の言いようがないゾクゾク感があるのです。


「素晴ラシキ忌々シサ」は、ストレートなロックンロールで、本作の中では、もっとも王道感があるナンバー。

激しくハードに、メロディアスに進んでいく1番と、ロカビリー調になって、雰囲気をガラッと変える2番の構図の違いが面白い。

相変わらずのサビのメロディは耳馴染み良く、変にマニアックにして、本来の良さを台無しにしていないところも高ポイント。


第一弾以降、インスト曲は1曲目に収録されていたのですが、今回はラストに。

シンプルながらも、しっかりとスマートに仕上げています。


そして、ボーナストラックとして収録されているのが、「Stand by me」のアコースティックバージョン。

音源化が待望されている代表曲を、こういう形で織り込んできました。

これまでのボーナストラックはおふざけ路線ばかりだったこともあり、これはテンションが上がる構成ですね。

正式にバンドバージョンでの再録も待たれますが、じんわりノスタルジックな空気に浸る素朴なメロディは、十分伝わるところ。

てんてんさんのスキルアップもはっきり見てとれますし、オマケで入れてくれる分には、アコースティックバージョンというのもナイスアイディアです。


それにしても、メンバーが固定しないのがもったいないというか、何というか。

特に、仕方のないこととはいえ、外国人であるJimiさんが、ビザの関係から帰国のために脱退してしまうのは、痛手すぎますよ。

長く続けられるメンバーが見つかってくれることを、切に望むバンドです。