- アジアのシンボル/P∽L
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1. POOLISH
2. 信度 5
3. 白船
4. 色とりどりの答え
5. 揺り籠
6. symbol
Miss Jelly Fishのシャカ、KYOKUTOU GIRL FRIENDのケッチ(当時はタイト)、LAB.THE BASEMENTのティルなど、玄人好みな面々が在籍していたP∽L。
プール、と読みます。
本作は、彼らが残した唯一のミニアルバム。2002年の発売。
当時は、まだまだツタツタ発狂系が主流で、技術スキルの低下が叫ばれている頃。
まつりのあと、といったシーン全体の冷え込みも手伝って、ヴィジュアル系は冬の時代でした。
そんな中で出てきたのが、「男受け」に特化したような硬派なバンドたち、いわゆる名古屋系。
kein、Lamielといったドーレコ勢が人気を勝ち取るとともに、名古屋系という言葉は単に名古屋を拠点とするバンドという意味から、音楽のジャンルとして定着した感があるのですが、実際、そういうバンドは名古屋の土壌に育つバンドが多かった。
逆に言えば、名古屋のバンド以外では、あまりそういった手法を取り入れたバンドがいませんでした。
シャウトやツタツタなドラムを多用せず、ミディアムテンポで暗く、ドロドロとマニアックに進んでいる曲が特徴的なそれらのバンドは、キャッチーさを求めるミーハーファンや、顔や見た目、もしくはライブでのノリが重視という人たちには受け入れられにくい一方、本当にヴィジュアル系の音楽性が好きで、冬の時代にもV系シーンに青春を捧げたキッズたちには熱狂的に支持された。
名古屋系=男受けという図式は、現代でも継続している傾向ですね。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、その名古屋バンドのみに許された名古屋系という音楽ジャンルに、果敢にも殴りこんでいったのが、横浜バンドのP∽Lだったんですよ。
首都圏において、現代ほどこの手のバンドが活動するための土壌が育っていなかったこともあり、爆発的な人気を得ることはありませんでしたが、知る人ぞ知る的な扱いで、ひっそりと注目を集めていました。
結果、今年に入ってから、長い沈黙を破ってライブが決定していたりと、未だに根強いファンが残っているのだと再認識させられます。
Vo.シャカさんの声質、歌い癖は、眞呼さんに影響を受けているのでしょう。
ミドルキーで艶っぽく歌ったかと思えば、表情豊かなファルセットと地声が交互に使われる不思議な声の出し方など、ドロドロした曲調も相まって、トータル的な印象も、まさにdeadman。
重く淀んだ空気に、遊び心のある変態的なギターが重なるフレーズが、褒め言葉として気持ち悪い。
普通のバンドが真似しようとしたってできないdeadmanのクオリティに、この規模のバンドが、ここまで近づいていたのかと思うと、もっとバンドが続いていたら・・・と悔やまずにはいられません。
ラウドな演奏も、デスヴォイスも使わず、こんなに重苦しい肌触りになるなんて・・・
雰囲気モノの装いをした曲が多いですが、比較的バラエティには富んでいて、歌モノ寄りの曲や、ハードで激しい曲など、1曲単位でもインパクトがあるナンバーも揃っていますね。
それを、宗教的な導入ナンバー、「POOLISH」にてマニアックさな印象を植え付けることによって、全体的なドロドロした雰囲気に巻き込んでいる。
ザラザラした音、荒々しい演奏、それなのに、雰囲気モノに聴こえてしまうのが、P∽Lの持ち味だったと言っていいでしょう。
時期的には、名古屋系が全国区に定着するまでの過渡期だったこともあり、まだまだ洗練されていない部分はあります。
十分にオリジナルに昇華しきれていない面も残っている。
だけど、ラストの「symbol」を聴いた後に感じる熱い余韻は、スキルやノウハウといった要素だけでは作りだすことはできない。
本当にやりたいことをやりきっているんだなぁ、と思えるからこその後味なんでしょう。
メンバーが現在在籍しているバンドが好きなら、遡って聴いても良いかと。
相変わらずの硬派さ、格好良さを感じられます。
もちろん、その反対も然り。
P∽Lが好きだったって人は、その延長線上で、今のバンドが聴けると思いますよ。