燐寸都市[補完版] / ヴィデオグラマァ | 安眠妨害水族館

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燐寸都市[補完版]/ヴィデオグラマァ
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1. 虚構天國

2. 時代スパンコール錯誤

3. えくとぷらすま

4. プラハ

5. 見飽きた天井


たまには、新譜をご紹介します。

まぁ、新譜というか、過去に発売されたミニアルバムのリメイク盤なんですけれど。

その名も、「燐寸都市[補完版]」。

なんとなく、cali≠gariを想起させるネーミングセンスは、ある種、ヴィデオグラマァらしいと思います。


過去に発売されたバージョンとの違いは、「実験即興②」に代えて、「虚構天國」を収録。

その他の曲についても、リミックス&リマスタリングが施されています。

「PRAGUE」の表記も、「プラハ」に改められていますね。

また、ジャケットについても、大幅に差し替えあり。


このバンドの特徴としては、ひたすらcali≠gariの音楽性を追及しているところ。

アー写にも、カリガリ御用達の「寫眞館ゼラチン」が絡んでいたり、タイトルや歌詞の付け方、音づかい、メロディ、歌い方・・・

もはや、開き直りが清々しいくらいのcali≠gariっぷり。

ガリストからの支持を得るのか、嫌われるのか、博打のレベルのインスパイアぶりなんですが、ハマっているから許してしまいます。


言ってしまえば、桜井青さんが作るフォークソングベースのナンバーだけを抽出したバンド。

しかしながら、押さえるべきポイントをしっかりと押さえており、なんだかんだで名曲揃いなんですよね。


「虚構天國」は、かの有名なDEEP PURPLEの「Smoke On The Water」を彷彿とさせるイントロが印象的なミディアム・ロック。

導入としての雰囲気モノの曲なので、メロディのインパクトは弱めですが、差し替え前の「実験即興②」は、サンプリングを使ったインストなので、それと比べればお得感があります。


続く「 時代スパンコール錯誤」は、一転して爽快感が抜群の疾走ナンバー。

こういう、Aメロからメロディが主張している曲は大好物。

エフェクトがグワングワンかかったギターのフレーズが面白く、歯切れのいいサビも気持ちが良い。

ミドルキーのボーカルラインでのピッチの甘さが気になるものの、このアルバムの方向性を決めるキラーチューンです。


「えくとぷらずま」は、アダルトな雰囲気がある妖しい一曲。

今回の収録曲の中で、もっともアングラ感があり、ピアノの音と打ち込みのシンセの音がマニアックに絡まってきて、不思議な空気を醸し出しています。

ハネるようなイントロのリズムが独特な「プラハ」は、奇形メルヘン時代のカリガリを思い出させる。

全体的に声にエフェクトがかかっていて、聴きづらさもありますが、サビでクリアな音になり、開けた展開になるための布石。

薄めに重ねたサウンドに、打ち込み音と、印象的なギターフレーズをちょこちょこと入れてくるアレンジの仕方が、本当に青さんが好きなんだなぁ、といったところ。


ラスト「見飽きた天井」は、もっともキャッチーさがある切ないフォーク・ポップ。

オリジナルバージョンでは、そういうアレンジなんだとしても、ギターが少し軽すぎて、ベースの中高音のフレーズが悪目立ちしてしまう部分があったのですが、今回ミックスをやり直したことで、音質が改善されているのは嬉しい限り。


全体的に、やはりリミックス&リマスタリングされた効果は大きく、だいぶ音質にレベルアップが見られました。

音の薄さが、音質の悪さからくるものではなく、きちんとアレンジをしたうえでの、意図的なものなんだっていうのは、ある程度の音質が保証されていているのが前提ですからね。

ノスタルジックで淡く切ない曲が良く合う声質のボーカルさんなので、方向性としては間違えていないと感じます。


cali≠gariは、そのカリスマ性のわりにはフォロワーが生まれてこなかったバンドなので、こういうバンドがいてもおかしくはない。

むしろ、活動が止まった今だからこそ、世間でのニーズは高まっているはず。

「そのまんま」な音楽性であることに嫌悪感を持ってしまう方にはおススメできませんが、ああいう音楽性が恋しいなぁ、と感じている人は、試しに聴いてみれば、結構ハマるんじゃないかなと思います。