In Heaven / Chronosphere | 安眠妨害水族館

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In Heaven/Chronosphere
安眠妨害水族館-In Heaven/Chronosphere

1.To find a way
2.teenageescape
3.In Heaven

Chronosphereの1stシングル。
2001年にリリースされた作品です。

ex-Chateau La tourのShujiさんを中心に結成。
Chateau La tourの中でも切なくメロディアスな曲だけを切り取ったような音楽性が支持を得ました。
シャトゥーラは、Vo.優雅さんが完全に暴れ系向きのボーカリストでしたので、こういう曲がネックになっていた部分もあるんですが、こちらのボーカル、羽月さんはとても澄んだ透明感のある声が特徴で、むしろメロディアスな曲こそ活きていた。
上手い具合に化学反応を起こしたな、と思ったものです。
ちなみに、羽月さんは、現在は常栄と名前を変え、as.milkや閃-4-AIMでの活動をしておりますので、最近のファンでも知っている方はいるかもしれませんね。

さて、内容のほうに話を移してみます。
まず、バンドとして最初のCDの1曲目から、「To find a way」を持ってくるかと。
まさに「白」というイメージのミディアム・バラード。
後に発売されるアルバムのラストの曲としても使用されていることから、重要な位置づけであることがうかがい知れます。
メロディそのものが個性的というわけではないのですが、この透明感がとても美しくて、聴き惚れてしまう1曲。
途中で、ベタにわかりやすくギターがギュンギュン鳴りだして、後半の盛り上がりを演出するのも、また一興。
正々堂々と歌モノで勝負できるバンドなんだという自信が感じられますね。

続く、「teenageescape」は、この作品でしか聴くことができない貴重な曲。
もっとも、残り2曲が収録されているアルバムも、現在廃盤で入手困難ではあるのですが。
歪んだ2本のギターの絡み合いが印象的な、ややダーク色が強いナンバーです。
1曲目のクリアさとのギャップを狙ったのか、ボーカルも荒々しく歌うようにしているのかな。
この手のダーク・ヴィジュアルな雰囲気は、さすがに時代を表しているというか、古臭さは感じてしまいますが、間奏のギターソロやサビで開けた展開になるあたり、押さえるところは押さえている。
ラスト前に、半音上がって転調するところも、しっかり歌い上げていますね。
この時代のボーカリストの中ではかなり安定感があるのかと。
3曲の中では、もっとも地味な位置づけではある。
バンドの売りとは、やや方向性がズレていることもありますし。

表題曲「In Heaven」は、これぞシングル!というキラーチューン。
「To find a way」が、意表を突いた導入だったこともあり、ベタベタなシングル曲はラストに持ってきましたね。
切なく、メロディアスで、演奏面ではハードな一面もあり。
前半は、雰囲気重視のアルペジオを奏でるギターと、透明感のあるボーカルが雰囲気を作っていますが、徐々にディストーションの効いたギターフレーズが目立つようになり、高揚感のあるサビへと繋がる。
曲全体が、後半に行くにつれて盛り上がる構成なのが良いですね。
サビの終盤で、少し力を抜いた歌い方になるあたりが、余韻を残してツボだったりします。

いわゆる、白系な音楽が好きな人には、たまらないバンドかと。
メロディアスな曲、歌モノをやらせたら、大きく外すことはないバンドでした。
羽月さんの透明感のある伸びやかな歌声は、曲の良さを十二分に活かしていて、逆に羽月さんの声の良さを殺してしまう暴れ曲をむやみやたらに作らなかったのも好感度が高いです。
少し、ギターの音作りが甘い気がするのが、一部マイナスかな。
もっとクリアに泣いてほしいところで、微妙に歪んでいて中途半端になってしまっている部分があるでしょうか。

まぁ、音の悪さは、当時のレコーディング技術の問題もあると割り切ってしまえば、クロノスフィアのような曲が良いバンドは時代を経ても強いです。
古さを多少感じたとしても、最後まで心地よく聴ける作品。